今年の4月。フレッシュマン向けの研修で、Cookpadのベンチマークを行いました。
マザーズに上場したばかりの新進気鋭のIT企業。
CGM、集合知といったキーワードも学ぶことができる、まさに教材としてはうってつけの企業です。
候補としてあげてくださった新人さんの目のつけどころは誠にシャープ。そして、他の候補企業を採用せず、Cookpadを最終的に選択したグループ・メンバーの判断もまた正しかったと思います。
Cookpadのビジネスは、一般には、会員事業・広告事業が中心だと思われています。
しかし、同社のビジネスの最大の特徴は3本目の事業の柱、すなわち、「マーケティング支援事業」と呼ばれるビジネスにあります。
たとえば、調味料メーカーA社が、自社で新たな調味料(【例】ラー油)を開発したとしましょう。
このラー油が実際にどのような料理で使用され、どのような評価をされるのか…
当然開発したA社にとって、大きな関心となります。
ところが、A社単独で当該ラー油のテスト・マーケティングをしようと思っても、テストしたい標的となる消費者になかなか「到達」できません。
仮に到達できたとしても、膨大な手間とコスト、それに時間がかかります。
そこで、A社は、Cookpadにテスト・マーケティングの代行を依頼します。A社の依頼を受け、Cookpadのサービス画面には、A社が開発したラー油についての特設ページがもうけられ、全国の主婦から、同製品を使った料理のレシピ、感想が、膨大なデータとして寄せられます。
Cookpadはこの情報をA社に渡し、所定の報酬を受け取ります。
これが、Cookpadを急成長させた原動力であり、差別化要因にもなっている同社の「マーケティング支援事業」のしくみです。
A社にとっても、低価格で手間をかけずに、しかも、短時間で、膨大な「消費者の声」(Voice of Consumer)を入手することができます。
A社は、受け取った情報を元に、当該ラー油の製品改良を加えたり、あるいは、新たな使い方を示したり…といったマーケティング戦略全体の見直しに着手できます。
「CGMの活用がうまく、集合知を上手にビジネスとして使っている企業だな。うちの業界(コンサルティング業界・人材育成業界)にもCookpad的な存在の企業がいてくれればいいなあ」
漠然としたニーズを私自身がいだいていました。
「研修・講演の新たなテーマ」「経営分析や戦略立案のフレームワーク」「マーケティング調査の新たな方法」「人材育成につながるワークショップ」といったものの開発は、「アイディア」が勝負。
「アイディアの段階でいろいろな方の意見を伺いたい」
「いろいろな方と意見を戦わせたい」
商品開発初期における「ディスカッション」がたいへん重要な役割を持っています。
ところが、これがなかなかこれが難しいものなのです。
弊社の場合、社内にもコンサルタントは何人もいますし、登録してくださっている社外コンサルタントは100人を超えます。でも、皆さん、とにかく、おいそがしい。
「ちょっとアイディアがほしいので、集まってください」
といった思いつきで集めてしまっては申し訳ないのです。
逆に、彼らに、
「竹永さん。ちょっとブレストに参加してください」
と頻繁に誘われては、私も困ります。
仕事を中断するにも、再開するにも、ストレスが発生するからです。
「意見がほしい! と思っているときにタイムリーに意見を交換してくれる、そんな夢のようなビジネス・パートナーがほしいなあ」
白馬に乗った王子様を夢見る可憐な少女、もとい、理想のビジネス・パートナーを夢見るおよそ可憐ではない中年コンサルタント…それが私だったのです。
ところで、研修や講演を想定しますと、テスト・マーケティングという考え方はあまりなじみません。
「すみません。今回の研修、実はテスト・マーケティングだったのです。今日のところは失敗しちゃいましたが、次回は修正版をお持ちしますので・乞うご期待!」
などと、クライアントに申し上げたら、即刻出入禁止になります。
早い段階で、アイディアの是非についての意思決定支援をしてくれるシステム、あるいは、忌憚のない意見を言ってくれる仲間がほしい…
これは切なる願いでした。
それでも、
「あまりにも都合が良すぎる。現実的には、無理だろうなあ」
とあきらめていたのですが、最近になって、
「灯台下暗し」
であったことにようやく気づきました。
Facebookです。
私にとって、今や、Facebookは食品メーカーにとってのCookpadのような存在になりつつあります。
Twitterではじめた140字ジャストのつぶやき、あるいは、街を歩いているときに偶然思いついたちょっとしたアイディア。
これらをFacebookに投稿してみると(Twitterのほうは自動的にFacebookに反映されるよう設定してありますし)、短時間でいろいろな方からご意見やご感想をいただけます。
何よりも「いいね!」ボタンの存在は大きい。
同業の方々、人事部に所属したり人材育成に携わっている方々、大学の教授、中小企業診断士・弁護士などの有資格者、中小企業診断士の受験生の方々など、さまざまな状況にある方々からの「いいね!」サインやご発言は本当にありがたいものです。
しかも、もっとも短時間の場合には、投稿してから、数秒で「いいね!」がつきます。
上司や部下、同僚にアイディアを見せたって、数秒では意見は帰ってきません。
「即時反射性」は、Facebookの最大の特徴の1つです。
もちろん、企業秘密に関わることを社外のメンバーに話すことはできません。
あくまでも話すのは、「◯◯ってどう思いますか?」「☓☓っておかしいよね」といった類の話の延長…つまり、飲んだときに話せる内容がほとんどなのです。
ただ、飲んでいるときのディスヵッションこそ、「イノベーションの母」です。
そこから生まれたアイディアから私はいろいろなフレームワークを創り上げることができました。
私のFacebook上の「友達」は、仮にいっしょに飲みに行ったら(まだお会いしたことのない方もいるので)、ビジネスにおけるさまざまなアイディアを情報交換できる方が大半です。。
以前であれば、100人のビジネス上の友人がいたら、100人の意見を伺うには、極端に申し上げれば、100回飲みに行かなければならなかったことになります(100人に共通の友人がいないと仮定)。これでは肝臓を壊してしまいます。尿酸値も上がっちゃいます。
しかし、今は、一瞬にして、100人の友人と「飲みに行けてしまう」。
しかも、「時間を選ばず」「早朝でも深夜でもいつでもOK」。
すごい時代になったものです。
他のあらゆるアイディア創造システムのどれと比較しても、最高の「即時反射性」を誇るのが、Facebookなのです。
Facebookにはもう1つの大きな特徴があります。
それは、アイディア創出における「自己動機づけ性」です。
通常、企業の中で、上司に
「おい。なんかいいアイディアないのか?」
「明日までにいいアイディアを3つ出せ」
などといわれれば、それはプレッシャーになり、ストレスを生みます。
「アイディアを出す仕事からは逃げたい」
と考えるビジネス・パーソンが多いのはそのためです。
ところが、Facebookの場合、プレッシャーもストレスも感じずに、アイディアを作り出すことができます。
何よりも「いいね!」は励みになります。
まとまった意見や感想をいただけなくても、「いいね!」は、
① 精神的な支援になりますし、
② 数がたまるとその「いいね!」の数と、投票してくれた方の属性(診断士、弁護士、人事部門の方、中小企業診断士受験生の方 等)は立派なデータになります。
「友達」がいろいろ反応してくださいますから、とにかく動機づけられます。無理やりアイディアを出さなければ…などというプレッシャーもストレスも生じません。実に楽しく、また、気持よく、「議論」できます。
Facebookで知り合ったある友人コンサルタントから、「常に考える」ことが大切だ、と教わりました。
その「常に考える」を実現するためのしくみ・システムとして、Facebookの果たす役割はたいへん大きいのです。
先日、ある企業で講演をしていたら、
「竹永さん。はじめまして。いつもTwitterで拝見しています。昨日のブログの話なんですが…」
といって、私のブログの間違えを教えてくださいました。
幸い、講演中ゆえ、目の前にMacがあったので、声をかけていただいた休み時間中に、その方と確認しながら、ブログの当該箇所を直してしまいました。
また、Facebookの友達からもそういったご指摘をいただくことは時々あり、本当に助かっています。
毎回、Twitterやブログ、Facebookを更新する際に、校正を外部に頼んでいたらどうなるのでしょうか。
とんでもないコストが発生してしまいます。
しかし、これらの媒体を通じて知り合えた方々は、まさに無償で、助けて下さいます。
大いなるご協力に感謝するためにも、読み手の皆さんにとって少しでも有益な情報を出し続けなければならないなあ…とミッション(使命感)を再確認いたします。
ダニエル・ピンクが。モチベーションについて語るとき、「Microsoftのエンカルタは失敗した。しかし、ウィキペディアは成功した。この違いは、既存の動機づけ理論では説明できない。内発的動機づけによるものだ」といった事例を引き合いに出します。
Facebookの基本原理もいっしょ。すばらしいシステムです。
「即時反射性と自己動機づけ性とを兼ね備えた究極のアイディア創造法。」
これがアイディア創造システムとしてのFacebookの正体です。
20世紀に証明されなかったさまざまな数学上の仮説は、Facebookをはじめとする今後のSNSの発展により、つまり、集合知が形成される過程の中で、証明に成功するのではないか…とさえ思うようになりました。
クレイ数学研究所が100万ドルの懸賞金をかけている7つの仮説。
ポアンカレ予想はすでに証明されましたが、あと6つ残っています。
① P≠NP予想
② ホッジ予想
③ リーマン予想
④ ヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題
⑤ ナビエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさ
⑥ バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想
SNS全盛の現在。
これらがいつまでも仮説や予想でいられるか、わからなくなりました。
さて、こうなるとアイディア創出術の世界にも「イノベーションの波」が押し寄せます。
ブレインストーミング法、ブレインライティング法、KJ法、ゴードン法、MBS、ワークデザイン法、バズ・セッション、ナイン・チェックリスト法、フィッシュボーン、ロジックツリー、メモリーツリー、マインドマップ…
これらは技法として生き残れるでしょうか。
もちろん、完全になくなるということは考えられません。
ただし、完全にはなくならないまでも、大勢の人間が会議室に集まって行うスタイルのアイディア創出術は、次第に姿を見せなくなるのではないかという予測に至ります。
「Facebookでアイディア創出!」
これが今後のトレンドになるのではないでしょうか。