せっかくの三連休ですが東京は雨。
予定を変更された方も多いのではないでしょうか。

さて、私は・・・と申しますと、昨日は本郷で仕事でした。

本郷と言えば、東京大学

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昨日は、東京大学で、中国からお越しいただいたMBAの学生の皆様向けに、日本の経営について講演して参りました。
何を話そうか、最初に打診をいただいたときにいろいろ迷ったのですが、ご相談申し上げた結果、モチベーション(動機づけ)の話がいいだろうということになりました。
モチーフとして選んだのは、現在、こちらのブログでも連載中の「動機づけ地形図モデル」です。

このモデルは、日本の勝ち組企業が、いかにして従業員の動機づけについて工夫をしているか、その実践的な方法を、論理的に結合し、体系化したものです。
大手銀行やメーカー・サービス業で、実際に導入していただいている手法ですが、中国の方々にお話しするのは始めて。

はたして、マッチしているだろうか・・・多少の不安がよぎります。

この一週間、通訳の方にパワーポイント原稿と講演原稿をお渡しし、いろいろ調整して参りました。

自分の原稿を翻訳・通訳していただくというのは、はじめての経験でした。

当初、

「講演時間は2時間」

と伺っていたのですが、お打ち合わせをしてみて意外な事実が判明。

① 私が1パラグラフ話した後、通訳の方がそれを翻訳するので、実際の講義時間は半分になる。
② 中国の方は、積極的に質問をする方が多いので、質疑応答で30分は確保したい

なるほど。国内で自己完結的に行う講演とは違います。正味の講演時間は45分、通訳で45分、質疑応答で30分。合計120分という構成です。

動機づけ地形図モデルは、実際に理解していただくと、すんなりと受け入れていただくことができる理論ですが、最初は抽象的に感じる方が多いと思います。
まして、それを翻訳・通訳して、理解いただくというのは、難しいのではないか・・・という懸念も残ります。

当日の朝、通訳の皆さんと軽く打ち合わせ。

翻訳が完了したパワーポイント資料も拝見しました。見事に翻訳していただいています。中国語のわからない私でも、漢字でだいたいの内容はわかります。感動です。

101007 日本の経営(日本型部下の動機づけ理論) 講師用スライド 短縮版 (中文)

受講される学生の皆さんの年齢はさまざま。20代の方から私よりも年上の方まで幅広いようです。日本の大手メーカーに20年以上勤務された経験のある方や、中国国内で大きなビジネス・スクールを経営されている方、またはその講師の方(ほとんど、ご同業です)、会社の社長さんもいらっしゃいます。また、各企業の人事担当者の方も8名いらっしゃると伺いました。

朝10:00。講演がスタート。

私が話し、その後、通訳の方が翻訳してくださる。打ち合わせどおりのスタイルです。

しばらくして驚いたのは、ご担当いただいた通訳の方が、ほぼ完全に、動機づけ地形図理論の内容を自分のものとしてお話になっている点です。もちろん、中国語はわからないのですが、パワーポイント画面の指示のしかたと、身振り・手振りで、この理論をほぼ完璧に理解されていることが、はっきりと伝わってまいります。日本語の原稿をお渡ししてからわずか5日間。驚くべき速さと正確さです。
これなら、安心して、私は日本語の講義に集中することができます。ありがたいことです。

私自身、通常よりも大きな身振りと手振りを使って講義を継続。

正味90分間の講義は無事終了いたしました。

いよいよ質疑応答の時間です。
伺っていたとおり、活発な質問が飛び出します。

「この理論はどういう過程で生まれてきたのですか」

「この理論の検証データを提示していただきたい」

「7つの湖のうち、全部をマネジメントできなけえれば、どの湖を中心に深堀すればいいですか」

「深堀すべき湖の具体的水位向上策をもっと伺いたい」

「モチベーションがあがったかどうかを確認する手段を教えていただきたい」

矢継ぎ早に質問が飛び出します。
一つ一つについて、実例やデータをお見せしながら、お答えしましたが、あっというまに30分が経過しました。

最後には拍手まで頂戴いたしました。熱心な聴講に、私のほうこそ、感謝の気持ちでいっぱいです。

ここで、私は退散・・・の予定だったのですが、

食事をいっしょにいかがでしょうか。まだ、質問したい方がいらっしゃるので」

とお誘いいただきました。

「ただし、学食(学生食堂)なのですが、よろしいですか」

「よろこんでごいっしょさせていただきます。」

快諾し、皆さんと学食に移動。東大の学食でランチをとれば、頭がよくなるかもしれません。

日本の製造業、ホンダとトヨタの戦略の違い、日本の不動産の長期的展望、中国のこれからのマネジメント手法など、いろいろなテーマで意見を交換。
申し訳なかったのは、私の隣に掛けてくださった通訳お二人です。ほとんどゆっくり食事できなかったと思います。ありがとうございました。

「海外で講演はなさらないのですか」

「社内で中国語で交渉できる方はいないですか」

「動機づけ地形図モデルについて、うちの会社でも講演を依頼してよいですか」

ビジネスに関するオファーもいただきました。ありがとうございます。
実現すれば、私にとっても貴重な中国進出になります。

最後は、安田講堂赤門で、皆さんと記念撮影。

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本日がツアー最終日と伺っていたので、

「今日はこの後、皆さん、成田ですか?」

と伺うと、

「最後に、早稲田大学を見学してから、成田です」

とのこと。

「おお、それはいいですね。早稲田も東大に負けないくらいいい大学ですよ」

と母校をPRして、笑いをとりながら、バスに乗る皆さんをお見送り。

わずか半日の交流でしたが、結果として、日本型の動機づけ理論について、たいへん興味を持っていただけたようで、ほっといたしました。
しかし、中国と日本は、文化も違えば、価値観も違います。全面的に現代の日本的経営、日本型マネジメントの導入をすることがベスト・ウェイであるとも思えません。中国流の新しいマネジメント・スタイルの確立こそが必要なのでしょう。

受講者のうちのお一人と安田講堂前で雑談する中で伺った、

「中国のマネジメントも指示・命令だけではなく、やわらかいマネジメントに変わらなければならない。動機づけ地形図はそれを具体的に示唆していた」

という一言に、今後の中国の経営・HRMの方向性示唆されているように感じました。

国内での仕事がメインの私ですが、「隣国の友人」との交流は、とてもよい刺激になりました。お声をおかけいただいた企画担当の皆様、翻訳・通訳でお世話になった皆様にも、改めて御礼申し上げます。
機会があれば、是非、再び、参加したいと思います。海外進出も視野に入れて参ります!(笑)