アニメ『機動戦士ガンダム』に登場するモビルアーマー「エルメス」は、かつてその名でプラモデル化されたものの、いつしか商品展開ではその名称が使われなくなった。現在では「ララァ・スン専用モビルアーマー」などと呼び換えられている。現在放送中の最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(ジークアクス)でも、「エルメス」という呼称は避けられており、「シャロンの薔薇」と呼ばれている。

この名称変更の背景には、フランスの高級ブランド「HERMÈS(エルメス)」との法的リスクがある。

① 商標権侵害の可能性

HERMÈSは日本国内においても、「おもちゃ」や「人形」などを含む商品区分で商標登録している。

このため、バンダイが玩具として「エルメス」という名前を使用すれば、同一または類似の商品における商標権の侵害とみなされる可能性がある。

商標権は「同じ業種で混同を生じさせるか」が判断基準であり、アニメ由来のキャラクター名であっても、商品ジャンルが一致すれば抵触しうる。

② 不正競争防止法違反(著名表示冒用行為)の可能性

仮にHERMÈSが「おもちゃ」類で商標登録をしていなかったとしても、問題は残る。

不正競争防止法第2条第1項第2号は、著名な商品表示を他人が無断で使い、出所の混同を生じさせる行為を禁じている。

HERMÈSのように世界的に認知されたブランド名は、たとえ異業種であっても、その名前を流用すること自体が**ブランドイメージの希釈化(dilution)**とみなされ、法的リスクが発生する。

バンダイの判断と、その意義

結果として、バンダイは「エルメス」という呼称の使用を避け、「ララァ・スン専用モビルアーマー」として販売する道を選んだ。

これは、商標登録の有無にかかわらず、著名なブランド名の使用には慎重を要することを示す好例である。

ファンとしては寂しい名称変更かもしれないが、グローバルな知財リスクに配慮する企業判断としては極めて理にかなっている。