昨日の企業研修で、受講者の皆さんが気づいてくださったことをまとめておきたい。

ハラスメント対策は、今起きている問題に対処するだけでは不十分だ。むしろ重要なのは、「5年後、10年後にどのような価値観の変化が起こるか?」を見据え、先んじて組織のあり方を整えていくことではないだろうか。

現在は問題視されていない行為が、数年後にはグレーゾーンとなり、さらには完全に不適切とされるケースは多い。例えば、かつては当たり前だった飲み会の参加強要や、性別による役割の押し付けが、今ではハラスメントと認識されるようになった。こうした変化を考えれば、「今の基準で問題がないか?」ではなく、「この対応は将来にわたって適切と言えるか?」という視点を持つことが求められる。

企業がハラスメントリスクを適切に管理するためには、以下のような点に注目する必要がある。

1. 価値観の変化を前提にする

社会の価値観は絶えず変化しており、現在の常識が未来においても通用するとは限らない。例えば、かつては「部下を厳しく指導するのは上司の役割」とされていたが、現在では心理的安全性の確保が重視され、パワハラと見なされるケースが増えている。こうした変化を見据え、企業は柔軟に対応していく必要がある。

2. グレーゾーンを放置しない

「これは問題なのか?」と判断に迷う場面は多い。しかし、そのような曖昧な状態を放置すると、将来的に企業の信頼を損ねるリスクがある。法改正を待たずとも、社会の変化を先取りし、自社の基準を整備しておくことが重要だ。迷ったときは「やめておく」「別の選択肢を探る」といった判断をすることで、リスクを未然に防ぐことができる。

3. 心理的安全性を高める

ハラスメントを防ぐためには、問題が発生した際に社員が安心して声を上げられる環境が不可欠だ。「これってハラスメントでは?」と気軽に相談できる仕組みが整っているかどうかが、組織の健全性を左右する。トップダウンのルール策定だけでなく、現場の声を反映しながら、実態に即したマネジメントを行うべきだ。

4. レピュテーションリスクを考える

企業の対応が世間に与える影響は、かつてないほど大きくなっている。SNSの発展により、社内の問題が瞬時に社外へ広がることも珍しくない。過去の発言や対応が掘り起こされ、企業イメージを損なう事例も増えている。企業は、こうしたリスクを見越して、対策を講じる必要がある。

未来の常識を先取りする

結局のところ、ハラスメント・マネジメントの本質は「未来を見据えた組織づくり」にある。今の基準に合わせるだけではなく、「5年後、10年後に振り返ったとき、自社の対応を誇れるか?」という視点を持ち続けることが重要だ。未来の常識を先取りすることが、組織の持続的な成長と信頼の確保につながるのではないだろうか。