2025年春、政府とAppleが進めるiPhoneへのマイナンバーカード搭載計画はどうなったのか。発表から1年が経つが、未だに具体的なリリース情報は乏しい。市民にとって重要な制度のはずだが、その利便性向上はなぜ進まないのか。
現行カードの問題点
マイナンバーカードは紛失・盗難のリスクが高く、ICチップは衝撃や圧力に弱い。特に財布に入れて持ち運ぶと損傷しやすく、認識不能となる事例も報告されている。この問題はICカード全般に見られるが、マイナンバーカードは再発行手続きが煩雑で時間がかかるため、さらなる負担となっている。
健康保険証との統合によって持ち歩きが必須となったが、現状の仕様では利便性を損なうだけだ。従来の健康保険証であれば、破損や紛失時の再発行も容易だった。だが、マイナンバーカードは紛失時に警察への届け出が必要であり、自治体窓口での手続きにも時間を要する。これは利便性向上とは程遠い状況だ。
スマホ化の遅れと政府の対応
Androidでは2023年にマイナンバーカードの電子証明機能が搭載されたが、iPhone対応は大幅に遅れている。iOS 18.4で対応予定とされるものの、現時点で具体的な日程は発表されていない。
政府はこれまで「デジタル化推進」を掲げてきたが、実態としては発表が先行し、実装が遅れる例が目立つ。市民にとって重要な機能であるにもかかわらず、情報公開が不十分である点も問題だ。政府は速やかに具体的なスケジュールを示し、進捗状況を明確にすべきである。
求められるのは「使える」仕組み
デジタル化の目的は、利便性向上にある。しかし、現行のマイナンバーカードは、その目的とは逆に市民の負担を増やしている。スマホ対応の遅れ、再発行の煩雑さ、ICチップの脆弱性といった課題を放置したままでは、制度の信頼性は低下するばかりだ。
政府はiPhone対応を迅速に進めるだけでなく、電子証明書のオンライン更新や再発行手続きの簡素化、さらにはシステムトラブル発生時のバックアップ手段を確立すべきだ。
2025年春が終わる前に、政府とAppleは具体的な対応策を示す責任がある。市民が求めているのは、発表ではなく「実際に使える仕組み」だ。