円安は輸出企業の利益を押し上げ、一見すると景気が好転しているように見える。しかし、その裏では輸入コストの上昇が国民生活を圧迫し、実質賃金の低下を招いている。企業が潤っても、国民が貧しくなるという矛盾が生じているのが現状だ。
一方、円高は輸出企業にとっては逆風となるが、輸入品の価格が下がり、国民の購買力が向上するメリットがある。長期的に見れば、円の価値が高いことは日本全体の資産価値の向上にもつながる。
重要なのは、為替に頼るのではなく、経済構造をどう進化させるかだ。ドイツのように「強い通貨でも競争力を維持できる産業」を育成し、価格競争から脱却した付加価値の高い経済を目指すことが求められる。
過度な円安は、一時的な景気刺激策にすぎない。本質的な豊かさを求めるなら、円高でも成長できる仕組みを構築することこそが、日本経済の未来を左右する鍵となる。