『中先代の乱 北条時行、鎌倉幕府再興の夢 (中公新書) 』(鈴木由美 (著) 中央公論新社 (2021/7/25))
中先代(なかせんだい)とは、北条高時の遺児・北条時行の別名である。滅んだはずの北条氏の生き残りであり、高時と尊氏という2人の新旧武家の棟梁の間の存在という意味でこの別名が付いたようである。
主題・主人公は謎に包まれた存在だったので、大変興味深く、大いに期待して読んだのだが、内容的にはちょっと不満が多い。
まるで、大学のレポートのような細かい研究データが随所に出てきて(それゆえ、記述内容は信頼できるのだが)、「で、結論は?」というもどかしさがついて回ってしまう1冊であった。
著者の鈴木先生は、いわゆる歴史オタクであり、北条時行に惚れ込んで研究されたようで、その「愛情」は伝わってくるのだが、如何せん、読者が置いてきぼりされる内容である。
結局のところ、時行の人物像や魅力ははっきりと描かれることなく、終わってしまう。
鎌倉末期〜南北朝時代について学ぶなら、前掲『観応の擾乱』のほうがオススメである。
おすすめ度(★☆☆)
(この項終わり)
鎌倉時代を知るためのオススメ新書のついての書評⑦
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