安倍首相銃撃・暗殺という衝撃的なニュースから10日あまりが経過した。

犯人は現行犯逮捕されたものの、その後、世論・マスコミ・警察では、各々

「真の犯人探し」

にやっきになっている感がある。

「SPは責務を果たしたのか?」
「そもそも、警備体制に問題はないのか?」
「政治家側が警備の難しい場所で演説を行ったことが問題なのではないか?」
「亡くなった安倍元総理と宗教団体の関係が不適切だったのではないか?」

検証は専門家にお願いしたいが、素人なりにいろいろ考えさせられる事件である。

そんな折、本日の「名著を読む会」の課題図書である『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』(エイミー・C・エドモンドソン (著), 村瀬俊朗 (その他), 野津智子 (翻訳) 英治出版 (2021/2/3))において、「失敗の3形態」が提唱されているのを目にした。

本書によれば、失敗は、

① 回避可能な失敗
② 複雑な失敗
③ 賢い失敗

の3つに大別できるという。

 



今回の安倍元総理襲撃・暗殺事件は、上記①②③のうち、どれに該当するのであろうか?

研究開発の過程で生まれてくる、喜ぶべき失敗ともいえる③でないことは疑いない。
個人や組織の過失による①(「回避可能な失敗」)なのか、これまでの警備状態ではありえなかったような複雑な状況の中で起こった不幸な事件②(「複雑な失敗」)なのか。判断は難しいのだろう。

著者エドモンドソン教授が提唱する「生産的な対応」(表の最下段)は、一般論ではあるが、再発防止のための方針としてはよく整理されている。

野中郁次郎教授らは、名著『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』において、失敗研究の重要性を世に示してくださった。
故野村克也監督は、「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」という名言を残された。
数年前には、『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』というサイド氏の著書がベストセラーになった。

失敗の分析はいつの時代においても必要不可欠であると思う。
不幸な事件ではあったが、せめて失敗をとことん分析していただき、再発防止のために最善が尽くされることを願いたい。