続いて、「全体論」。
前述したとおり、アドラー心理学では、個人は、精神と身体のような諸要素の集合としてではなく、それ以上分割できない最小単位であると考えます。

ですから、精神と身体、意識と無意識、感情と思考などの間に矛盾・葛藤・対立を認めていません。
たとえば、アドラーは、「無意識のうちに万引きしてしまった」という言い訳を認めていないわけです。

この点が、分離論に基づくフロイトの精神分析との大きな違いになっています。

アドラーは、個人という全体が、心と身体、意識と無意識、感情と思考などを使って、目的に向かっていると考えました。

先程の万引きの事例について申し上げれば、その商品をほしいと思ったゆえ、悪いこととは知りつつも、ほしいという感情を優先させて、万引きに至ったと考えるわけです。

人は、感情という独立した存在に支配されているわけではなく、統一された全体なのです。