明日は人生初の「行動経済学」をネタにした雑談サロンを開催します。

行動科学はある程度詳しいと思うのですが、行動経済学はあまり詳しくない。
要するに、経済学が苦手なんですよねえ… 覚えてもすぐ忘れちゃう。
診断士の受験課目にもあるんですが(「経済学・経済政策」:マクロもミクロもあるよ)、担当していないからすぐ忘れてしまう…

もっとも、入門書を乱読してみると、狭義の行動経済学は、ノーベル経済学賞受賞者であるダニエル・カーネママン(2002年)とリチャード・セイラー(2017年)の学説を紹介(追試結果含む)するものがほとんどだと判明。15年ごとにブームがやってきているわけです。

ただ、広義ではかなりの範囲が行動経済学の中に入ってくるみたいで、前述した行動科学や、あるいは心理学の領域ではないかな?と思うような、あまり数式で説明できないような事象についての仮説まで含まれているようです。単行本の後半で、ページが余ってしまっている場合には、こういった周辺領域についての学説が紹介されています。

今後、行動経済学を学んでみたいと思う方にオススメなのは、次の3冊です。この他、イマイチな本についても挙げておきます。

1.オススメの3冊
===========

(1) 『週刊東洋経済 2017年11/25号』(【第1特集】行動経済学で賢くなる 人生に差がつく経済学)(東洋経済編集部 東洋経済新報社)

雑誌。コンパクトに2017年のセイラーのノーベル賞受賞に合わせて、彼の学説を中心に解説。短時間で行動経済学のアウトラインに触れることができる。

(2) 『行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書) 』(友野典男著 光文社)

網羅的で丁寧。数式も少なく、理解しやすい。実験がクイズになっている形式の行動経済学入門書の元祖。わかっていてもひっかかってしまうクイズのオンパレードで前半は特におもしろい。後半は政策絡みの話なので、個人のコンサルタントである私にはやや退屈でした。

(3) 『行動経済学 (図解雑学) 』(筒井義郎・山根承子著 ナツメ社)

図解本は内容が薄い…という印象を払拭。コンパクトによくまとめている。友野さんの本と合わせて読むと、概ね行動経済学(狭義)の全領域のイメージをつかめると思う。筒井さんは阪大経済学大学院の教授なので、アメリカの学者による実験結果に対する阪大による追試の結果がいろいろ出てくる。「日本人にも当てはまるんだ」と思える一冊。

2.欠点はあるがおもしろい5冊
==================

(1) 『マンガでわかる行動経済学 いつも同じ店で食事をしてしまうのは?なぜギャンブラーは自信満々なのか? (サイエンス・アイ新書) 』(ポーポー・ポロダクション著 SBクリエイティブ)

前半は純粋な行動科学についての話。実務に結びつけるアイディアが多数出ていて、面白く読める。ディアゴスティーニの事例等圧巻。ただし、後半が実証のない仮説のオンパレード。ネタ切れ感がある。読むなら前半2/3くらいまで。

(2) 『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版』(ダン・アリエリー著、熊谷淳子訳 早川書房)

この本だけ数年以上前に読んだ。あまり詳細は覚えていないが面白かった。TEDで著者の講演が聞けたはず。仮説が多いのだが、興味はわいてくる。

(3) 『ヤバい経済学〔増補改訂版〕―悪ガキ教授が世の裏側を探検する』(スティーヴン・J・ダブナー、スティーヴン・D・レヴィット著 望月衛訳 東洋経済新報社)

経済学における統計の重要性を面白おかしく描いた一冊。千種さんの「名著を読む会」を通じて皆で読みました。相撲の八百長が統計学的には実証されている…という話を含め、逸話は秀逸。行動経済学の全体像はわからないが、間違いなく名著。

(4) 『やさしい行動経済学 (日経ビジネス人文庫)』(日本経済新聞社編 日本経済新聞社)

読み物としてはおもしろいと思う。行動経済学の全体像はわからない。私は、今回のサロンのための予習という目的に合わな方Tので斜め読みで終わり。

(5) 『「学力」の経済学』(中室牧子著 ディスカヴァー・トゥエンティワン)

欠点というのは行動経済学の全体像がわからないこと。教育経済学・教育統計学の本としては、おそらく日本で唯一の一冊。名著だと思う。ビジネス雑談サロンで一度ネタにしたことがあります。
中室さんの2冊目を読んでみたいのだが、たぶんこれだけ密度の濃いものにはならないだろうなあ。尾崎豊のファーストアルバムみたいなものだろう。

3.読まなくてもよかった2冊
=================

(1) 『行動経済学―感情に揺れる経済心理 (中公新書) 』(依田高典著 中央公論新社)

自然科学史と絡めた説明はおもしろい。経済学の歴史もわかる。途中から数式が難しくなり、一部飛ばし読み。この辺は数学の素養のある方なら楽しめるのかもしれない。著者自身、前述した友野さんの本と後述する多田さんの本を絶賛しており、これらとは差別化を測った新書にしたかった模様。進化論との関係は、欧米の行動経済学者も指摘する点だが、その点についても触れられている。友野さんの本を読めば、あえて読まなくてもよいだろう。

(2) 『行動経済学入門 (日経文庫) 』(多田洋介著 日本経済新聞社)

今回の行動経済学再勉強に際して最初に読んだ本。網羅的だが、難しい汗! 数式がかなりたくさん出てくるので、流し読みするときつい。友野さんの本を先に読めばよかったと後悔。最新の経済学の潮流について触れられている点はよかったと思う。

4.これから読もうと思っている2冊
==================

(1) 『行動経済学の逆襲』(リチャード・セイラー著 早川書房)

入門書を乱読して、概ねセイラーの行動経済学の全体像を理解できたら、読んでみようと思っています。今回のサロンには間に合わなかった。翻訳が上手だといいなあ。

(2) 『ダニエル・カーネマン心理と経済を語る』(ダニエル カーネマン著、友野典男訳、山内 あゆ子訳 楽工社)

2011年に日本版が出版されていたが全然知らなかった。行動経済学ブームが去り、私が最も興味のなかった頃の一冊だろう。友野さんが訳者ということで俄然興味出てきて、昨日注文。今回のサロンには間に合わず〜