手帳を単なるスケジュール帳としてではなく、「人生の設計図」として有効なものにしていきたいと考える方も多いようです。夢やビジョン、目標や長期計画のようなものを策定し、それを手帳に書き込んでいこうという考え方は、さまざまな指南書で提案されています。
私自身、経営コンサルタントを生業としており、自社はもとより、クライアント企業の経営者やマネジャーの皆様と、夢を語り、ビジョンを定め、目標や長期計画を策定することの重要性を説く役割を果たしています。
経営者やマネジャーが自らのリーダーシップに自身を持ち、自分ならびに組織や部下のモチベーションを高めるためには、「旗印」となる夢・ビジョン・目標・長期計画は不可欠です。
個人の手帳の場合は、会社や組織の「旗印」ではなく、その手帳のユーザー各々の個人としての「人生の設計図」を書き込む欄が設けられています。
成功したり、目標達成しようとしたりすれば、個人の場合であっても、会社や組織の場合と同様に、「旗印」となる夢・ビジョン・目標・長期計画は不可欠です。それを作り、掲げることは大切です。
しかし、常に手帳に折り込み、持ち歩くべきかといわれると、「果たしてそうか?」と疑問が生じます。
旗印を手帳に挟み込むことを肯定している指南書の多くは、その理由として、「常に持ち歩き、常に見る手帳だからこそ、自らが掲げた旗印を日々目にすることにより、刷り込まれていく」という点をあげています。自己暗示効果を狙っているわけです。
自己暗示に一定の効果があるのはわかりますが、そのための方法が「手帳でなければならない」理由がよくわからないのです。
単純に、自ら掲げた旗印に接し、自己暗示をかけていく方法としては、次のようなものが考えられます。
① 朝起きたら、唱和してみる
② 自宅やオフィス(の所定の場所)に書き出し、毎日目に入る状態を作り出す
③ パソコンのデスクトップ画面に表示する
①は能動的に動かないとだんだんやらなくなってしまうでしょうが、②または③ならば、常に自分の掲げた旗印を強制的に目にしなければならない状態を作り出すことになります。
手帳の場合、常に持ってはいるでしょうが、多忙の方ほど、開くのはスケジュール欄・メモ欄・TODOリスト欄等になってしまい、旗印を記載したページは次第に素通りするようになってしまいます。
旗印を掲げること、旗印を常に目にする状態を作り出すことには賛成なのですが、その方法が手帳でなければならない理由はありません。
穿った見方かもしれませんが、手帳を開発する側にとっては、格好の「付加価値」なのではないかという気がします。
「この手帳はあなたの旗印を書き込む欄があり、それを毎日目にできる環境を提供するものである。既存の手帳とは違うので是非使ってほしい」
手帳を売るためのキャッチフレーズになっていないか、十分に注意してください。手帳本来の役割、手帳本来の機能の面で劣っていたり、あなた自身の行動スタイル・業務スタイルに合致していなかったりするものであれば、「付加価値」に惑わされることなく、別な手帳を選ぶべきです。