今月の「名著を読む会」の課題図書は『論語と算盤』。

渋沢栄一といえば、埼玉が産んだビジネス界のスーパースター。
ドラッカーが1959年(だったかな)に初来日したのは、渋沢研究だった(日本画の収集という趣味目的もあっただろうが)といわれているほどです。
勤皇の志士から一転幕臣となり、パリの万国博に随行し、明治後は一転、実業家に。

武士出身の実業家らしく、彼の精神の源流は、武士道と儒教(主に陽明学)にあります。
「論語」とは「理想」あるいは「経営理念」の比喩であり、「算盤」とは「現実」あるいは「現状把握」の比喩です。
つまり、「理想と現実」「経営理念と現状把握」といった2つの概念のアウフヘーベン(今年の流行語ね)として、「実業」があるというのが、彼の理論の中核なわけです。

NHKの大河ドラマにもガンガンとりあげられていいはずの人物なのですが、なんと! 私の知る限り、大河ドラマへの出演は一作限り…『獅子の時代』くらいのものです。

企業倫理崩壊のニュースが世間を騒がせた今こそ、日本人は渋沢に戻るべき、『論語と算盤』に回帰すべきではないかと、切に感じながら、読み進めました。

富国強兵の駆動輪的存在であっただけでなく、企業の社会的責任の先駆者、「グッド・コンペティション」の推奨者、護送船団行政への懸念の提唱者、ダイバーシティ社会の到来の予言者としても、彼の存在は稀有なものだと思います。

資本家からも労働者も愛された渋沢氏。
彼を主役に据えた大河ドラマ…企画されないものですかねえ。