6.AIとIоTがもたらす住宅トレンドの変化
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さあ、それでは、今後の住宅業界のトレンドについて予想してみましょう。
当たるも八卦、当たらぬも八卦
プロ野球の優勝チーム予想くらいに考えて、楽しんでみたいと思います。
 
まず、最初の予想は、
 
「AIとIоTによる防犯の強化」

です。

(1) AIとIоTによる防犯の強化

① スマートロックの普及

具体的には、スマートロックの普及です。
すでにさまざまなタイプが商品として登場しています。
 
ここで紹介するのは、専用のアプリを入れたスマートホンで錠前の開け閉めができるシステムです。
 
このタイプのスマートロックには、次のようなメリットがあります。
 
a.鍵のシェアリング…鍵を家族や友人とシェアすることができる
b.鍵の遠隔操作…鍵をかけ忘れた際には遠隔操作で施錠できる
c.タイマー機能…タイマーにより一定時間後に施錠されるオートロック機能を搭載できる
d.利用履歴管理…利用履歴を閲覧できる機能もある(鍵を持つ人の出入りをチェックすることが可能となる)

スマートホンを使っていたのが、IT好きの父親だけ…という状態では普及しにくいですが、妻が持ち、子どもたちが持ち、同居している母親も持った…という状態になれば、購入を考えてもいいわけです。
共稼ぎとか、家族が家にいる時間がバラバラの家庭ほど、重宝されます。
一番年配の祖母がスマホを持った、あるいは、一番下の子供が高校生になりスマホを持った瞬間などに求められる可能性の高い商品だと思います。

② 顔認証システム付きホームカメラ

顔認識システム付きホームカメラも普及途上にあります。
Amazonで比較的評価が高い(それでも満点ではありません)のが、ネタトモ・ウェルカムが提供するカメラです。
このカメラは、顔認識システムによりカメラに映った人物の名前をスマートホンに通知するタイプです。
自宅に設置しておけば、家族の帰宅や、在宅の確認のほか、未登録の人物の侵入などの通知をスマートホンに受けることができます。
 
巷で売られている商品は、まさに玉石混交状態なので、顧客は、商品を選ぶ際にある程度の冒険を強いられています。
それゆえ、適切な商品を示してもらえれば、少々高くても購入する顧客は十分にいるはずです。こういう商品のコンサルティング営業は、今後、歓迎される可能性があります。

③ 防犯カメラのIоT化

パナソニックは、IBMと提携し、AIを活用した住宅向けサービスをヨーロッパを皮切りに世界で展開しています。
 
具体的には、IBMのAIと住宅の監視カメラやセンサーを接続し、防犯や居住性を高めるというものです。
カメラで撮影した映像をIBMのコンピュータにクラウド経由で送信し、同社のAIシステム「ワトソン」が処理します。
ワトソンというのは、クイズ番組で人間に勝って以来、さまざまな世界(医療や料理の分野での活躍が有名)で活躍しているAIです。
 
住民や知人の顔を「学習」し、それ以外に近寄る者を不審者と認識し、不審者が敷地に近づくと警察に通報したり、近隣住民に知らせたりすることもできます。

こういった商品とサービスの低価格化が進み、住宅に標準装されるようになるかもしれせんし、また、セコムのようなセキュリティ会社に採用されるようになることで、どんどん普及が進んでいきます。

(2) AIとIоTによる「見守り」の充実

さて、「防犯」の次は、「見守り」の充実です。

① 電池不要開閉センサー

ロームが手がける電池不要開閉センサーはその一例です。
 
このセンサーは、人の動作や太陽光を利用して発電し(電池は不要です)、無線通信を行う機能を備えています。
家の窓の開閉状態をセンサーで認識することで、鍵の閉め忘れがないかを外出先から確認できるサービスです。
防犯にも役立ちますが、離床センサーや着座センサーなどを組み合わせれば、高齢者向けの見守りサービスなどに活用することもできます。

② スマートエアコン見守りサービス

こちらはパナソニックが試験導入されているサービスです。
温湿度センサーを搭載したエアコンと電波センサーを各居室に設置することで、各センサーから得られた各居室の情報を把握するしくみです。

このセンサーがあれば、居住者の在・不在や、睡眠・覚醒の状態を把握することが可能になります。
また、夜間に外出した時や、高頻度の目覚めなどを検知し、ナースコールや職員のPHSに自動通知するシステムも導入できます。

実験的に「ココファン藤沢SST」に導入されています。

(3) AIとIоTによる健康管理の強化

① 三菱電機の方針

「防犯」「見守り」の次は、「健康管理」の強化です。

たとえば、三菱電機のホームページには、キッチンにおける健康管理機能の強化という項目が盛り込まれています(【例】「機器を通じて集められた家族の体調などの生体情報と冷蔵庫の中の食材を基に、推奨する献立メニューを冷蔵庫の扉に表示」出典:三菱電機のHP)。

ただし、まだまだこれについては、研究途上にある…とあります(【例】「本コンセプトの実現例の具体的な製品化計画は未定です。引き続き当社スマートハウス事業および家電製品群への展開を目指し、研究開発を推進します」出典:三菱電機のHP) 。

少子高齢化時代において「健康」は重要なキーワードですが、まだまだ、住宅にその要素を取り込むのは時期尚早なのでしょうか。

② 大和ハウスの健康生活提案型住宅

しかし、大和ハウスでは、すでに健康生活提案型住宅の実現に向けて具体的な商品(マンション)の提供を開始しています。
 
大和ハウスが展開する「プレミスト湘南辻堂」です。
リストバンド型のウェアラブルセンサーにより、入居者に運動メニューを提供を予定しているようです。
 
このマンションは、ウェアラブルデバイス(リストバンド型のセンサー)などを用い、大和ハウスグループのスポーツクラブが監修する運動メニュー提案などのソフトサービスを融合した、ヘルスプロモーションサービスを採用した新しいスタイルのマンションです。

高齢化が進む現在、こういう試みは、今後どんどん増えていくと思います。
三菱電機が提案していたような食生活と運動・スポーツを結びつけるような提案も出てくるはずです。

(4) 各社スマート家電との連携

さて、それでは、次の予想を見ていきましょう。
今度は、スマート家電との連携の強化です。
ここは誰もが予想するところですよね。

実際に、毎年10月に行われるシーテックジャパンには、さまざまなスマート家電が出典されています。
シーテックジャパンとは、毎年10月に幕張メッセで開催されるアジア最大級の規模を誇るIT技術とエレクトロニクスの国際展示会のことです。

ここでは、シーテックなどで注目を集めた最近のスマート家電の中からいくつか、特におもしろそうなものをご紹介したいと思います。

① ハイテクオーブンJUNE

こチラの商品は昨年出品された、スマホと連動するハイテクオーブンです。

庫内に食品を入れると、自動的にどんな種類かを判別し、最適な焼き加減になるように時間や温度を設定してくれるという優れものです。
スマホのアプリと連携させると、庫内の温度の状況をスマホの画面で確認することができます。

庫内の上面にはカメラが設置されていて、内部の様子をいつでもスマホで確認することができます。
焼きあがりが不安な時や、焦げが心配な時でも、扉を開けることなく中を確認することができます。

付属の温度計を使うと、ある特定の部位の温度を確認することができます。
たとえば、鳥の丸焼きを作ろうとした場合、鶏肉のモモの部分に温度計を刺しておけば、生焼けのまま盛りつけてしまう…というミスをしないですむわけです。

② 全自動衣類折たたみ機

昨年、会場での注目を集めた商品はこちらです。
セブンドリーマーズ、パナソニック、大和ハウス工業が共同で開発を進めてきた全自動洗濯物折り畳み機「ランドロイド」です。
 
乾いた洗濯物をランドロイドに投入すると、データがクラウドに上げられ、クラウド上でAIが洗濯物の種類・大きさなどを認識するというものです。

初代製品は185万円で予約開始されています。衣類の画像認識でコーデ提案サービスもしてくれます。 
 
実はこの商品。
2年前くらいのプロト商品はまだまだという感じでした。
よくぞここまで来たなあと思います。

一般家庭がおいそれと買える金額ではまだありませんし、何といってもサイズが大きすぎますので、普及には時間がかかるのでしょうが、とにかくすごい進歩だと思います。

「たたむ」というおよそロボットにとって苦手な作業ができるようになったことも朗報。
今後、さまざまな分野に派生していく技術が実用化されたのではないでしょうか。

③ LGの SmartThinQ Sensor

お次はLG Electronicsのセンサーです。
自宅にある既存の家電製品に装着するだけで、擬似的にその家電製品がスマート家電に変身するというすぐれものです。
商品名は、「SmartThinQ Sensor」。
食器洗浄機や冷蔵庫などの家電に装着する通信機能付きセンサーです。
 
家電製品の振動や温度を検知し、スマートホンの専用アプリに通知するというしくみです。
冷蔵庫用、洗濯機用等数種が用意されています。

たとえば洗濯機用。
洗濯機に装着して振動を検知させることで、洗濯が終了した際に通知を受け取ることが可能です。

冷蔵庫用タイプであれば、冷蔵庫の扉に取り付けておけば、ある食品の賞味期限が切れそうになると教えてくれたり、ペットボトルが無くなったときにセンサーをタッチするだけでその商品を取り寄せられるといった使い方ができるそうです。

ハイブリッド車もそうでしたが、過渡期の商品というのは大切ですよね。
スマートハブ(スマートスピーカー)が普及するためには、家にある家電の大半がスマート家電に入れ替わる必要がありますが、それには相当の時間とコストがかかります。
手軽に、自宅の既存の家電をスマート家電に変身させてくれるこういったアイディア商品は市場でも灌漑されるのではないでしょうか。

(5) スマートハブ競争のはじまり

さてさて。
こういったスマート家電が登場しますと、今度はそれをコントロールしなければならないハブが必要になります。

これが、最近話題になっているスマートハブ。
日本では、スマートスピーカーと言う名前のほうが一般的になりそうですね。

① スマートハブ競争

ご存知の通り、日本では、太陽光発電、蓄電池、燃料電池、スマート家電、電気自動車(EV)などが普及途上にあります。

これらの機器群を結び付けるのが家庭向けのスマートハブ商品です。

スマートハブは、「つながる住宅」において、根幹をなすホームゲートウェイであり、不可欠な司令塔となる商品です。

スマホで管理すればいいじゃないか…とはいかないですね。 スマホは外出中持ち出しちゃいますので。
また、スマホは家族各々が持つものですよね。
スマートスピーカーは一家に一台、家中の家電や家具を制御してくれる「執事」のような役割を果たしてくれる製品と目されています。
家庭内のあらゆる情報をつなげるAI搭載プラットホームという位置づけですね。

スマートハブは、必ずしもスピーカー機能やオーディオ機能が充実している必要はないのですが、現在は、スマートスピーカーの携帯で売られているものがほとんどです。
欧米で、スマートハブ候補として注目を集めているのが、「Googleホーム」「Amazonエコ」の両巨頭です。

これら、既に商品化されたスマートハブ(スマートスピーカー)では、液晶ディスプレイやスピーカーを装備し、家電の状態やスケジュール、天気などの情報を表示するといった機能を備えています。

たとえば、洗濯が終わればアラートを鳴らすといった使い方ができるようになるそうです。

ようやく、日本でも、2017年10月6日、グーグルによるスマートスピーカー「Googleホーム」が国内で発売され、認知度があがってきました。

「Googleホーム」「Amazonエコ」の両巨頭以外にも、さまざまな商品の発売が発表されています。
・ オンキヨー「P3」(搭載AI:Alexa)
・ ソニー「 LF-S50G」(搭載AI:Google アシスタント)
・ 東芝「TH-GW10」(搭載AI:Alexa)
・ パナソニック「SC-GA1」(搭載AI:Google アシスタント)
・ マイクロソフト「Invoke」(搭載AI:Cortana)

② スマートハブによる不測事態発生時の自己診断

これらスマートハブが、もし不測事態が発生した時に自宅についての自己診断をしてれるようになるとおもしろいと思います。
正直、音楽を流してくれなくてもいいですし、明日の天気を教えてくれなくても特に問題はありません。
しかし、先ほどお話したとおり、センサーの普及が進み、その結果として、住宅内に多数のセンサーが配置された状態が実現し、スマートハブで家の状態をリアルタイムで監視できるようになれば、故障時・災害時等に、住宅自身が、自己診断できることになります。
 
「内部の壁に損傷がある」「柱に深刻なダメージがある」「天井裏に水漏れがある」等の自己診断が可能になるということです。
 
さらには、診断内容に応じて、連絡すべき関連会社・業者に自動的に連絡を取ってくれるのであれば、「どこに相談していいかわからない」「業者間をたらい回しにされた」という状態が起こらなくなります。
Amazonで食材を自動注文してくれなくてもいいから、こういった機能こそ備え付けてほしいものです。

この発想は、先程もご紹介した既存の見守りサービスとは異なるサービスです。
高齢者にはうれしいサービスになると思います。
スマートハブが本領を発揮するのは、故障時や災害時であるはずです。
こういう機能を兼ね備えたスマートハブこそ、本来、競争を勝ち抜いてほしいものです。

(6) IоTを前提とした保証と予防修理の普及

この考え方を推し進めていくと
 
「IоTを前提とした保証と予防修理の普及」
 
という未来も見えてきます。

① イエコンサポート型ビジネスの台頭

昨今、私が最も注目しているサービスの1つにイエコンサポートがあります。
 
イエコンとは、リビングポイントという会社が展開するサービスです。
同社は、日本リビング保証(あいおいニッセイ同和損害保険を主要株主とした住宅専門の保証サービス会社)の100%子会社です。
イエコンとは、IоT技術などを利用して住まいの状況を可視化し、住まいを一元管理するオープンプラットフォームのことです。
イエコンのネーミングは、「家(いえ)のコンディションをコントロールする」という意味に由来しています。
 
彼らは、電子マネーによる積立制度「おうちポイント」をもとに、この積立制度と住宅設備の「フリーメンテナンス」を組み合わせたシステム「イエコンサポート」を開始しています。
 
同社の一番のウリは、なんといっても、

「住宅設備のフリーメンテナンス」

だと思います。
要するに、クルマ業界における「JAF」に近いサービスです。

イエコンのデータによれば、住宅の故障相談の91%はメーカー保証外期間に発生するそうです。
日本のメーカーの保証期間は1〜2年。実際にはそれを超えてからの修理が9割を超える…つまり、ほとんどの場合、自費修理ということになります。
ところが、イエコンに加入していれば、一定の対象機器(給湯器・システムキッチン・システムバス・洗面化粧台・トイレ)については、原則無償修理(一部自己負担金が発生する場合があります)。
ありがたいことに、出張料と作業料は無料です。
加入者は、24時間365日対応可能な緊急コールセンターを利用することができます(それゆえ、「JAFに近いサービス」と申し上げたわけです)。
 
上記の対象機器以外の修理等であっても、会費を積み立てておくことで、ポイント化することができます。このポイントは、発行から15年間有効であり、ハウスクリーニングや、インテリア・家具の購入、リフォームや設備交換(絨毯やクロスの張り替え等)、点検・補修・リペア、消耗品交換に充当することができます。
15年という有効期限は、一般的にはかなり長いですよね。住宅の世界においては、これくらい長い期間が設定されていないと、たしかに意味はないと思いますが、その意味でも、たいへん良心的な規定です。

メリットは消費者側だけにとどまりません。
マンションのオーナーなどは、事業者登録をしておくことができます。
会費を払えば、入居者へのアフターサポートとして、イエコンを提供することができるようになります。
つまり、マンション・オーナーの方々は、労せずして、顧客満足度の向上、アフターケアのコスト削減等を実現することができるわけです。
 
「このシステムを使えば、顧客満足度の高い差別化された住宅が提供できる」と、主に販促ツールとして住宅販売業者にも利用されています。
住宅販売業者としては、将来的な修繕積立金(ポイント)が既に用意され、更に、住宅設備(給湯器、システムキッチン・バスなど)のメーカー保証終了後も継続したメンテナンスを約束している「フリーメンテナンス」付きの住宅を提供できるというわけです。
既に150以上の住宅事業者が加入しています。

イエコンサポートが展開するサービス(あるいはその類似サービス)は、IоTとの相性がよいと考えることができます。
センサーが多数設置されている家ほど、サポートし易いわけですし、「故障する前に対応する」といった予防修理型アドバイスが今後付加される可能性があります。
また、センサー設置型住宅については、保険料が安く済む場合が出てくるはずです。

「センサー付き住宅&イエコン型サービス」

が普及する可能性は高いと思います。

② GEの予防修理構想

他業界の事例ですが、GE(ゼネラル・エレクトリック)は、IоTを活用した予防修理構想を実現しつつあります。

設備機器は故障してから修理するより、計画的にメンテナンスして予期せぬ故障が起こらないようにする方が遥かに少ないコスト損失ですみます。

GEでは、航空エンジンから医用電子機器までのあらゆる産業機械にセンサーを付け、データをネットワークによりクラウドサーバーに送っています。

発想としては、さきほどご紹介した浄水器の交換サービスと同じです。

GEのAIは、日々のデータを過去の故障事例のビッグデータとつき合わせることで故障が発現する前の兆候を発見します。
 
たとえば、GEが管理する全世界の12,000基の風力発電用タービンにこのコンセプトを適用することで、予防修理により3,000万ドルの節約を可能にし、効率上昇で1基あたり年1万ドルの増収を実現しています。
 
「IoTと保証サービスの組み合わせ」

は、今後、さまざまな業界で相乗効果が見込まれる「定番」となると予想できます。

(7) トレーサビリティ文化の浸透

トレーサビリティとは、物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態(追跡可能性)のことです。
最近では、ブロックチェーンが新しい技術として注目されている分野です。

① ICタグの普及

トレーサビリティ実現の手段として、最も一般的なのはICタグです。

私は、しばしばマラソン大会に出場していますが、ランナーの記録を録ってくれるのも、ICタグです。
当日履いているマラソン・シューズの紐に結びつけることにより、ランナーの動きは逐一記録されていくわけですね。

ICタグを利用したトレーサビリティは、社会的に浸透すればするほど、規模の利益(スケールメリット)が実現し、タグの価格は、1個数円台にまで低下することが見込まれています。

② ワクチンのトレーサビリティ

これまた、他業界の事例ですが、トレーサビリティが命に関わる現場もあります。

たとえば、ワクチンのトレーサビリティです(出典:『IoTとは何か 技術革新から社会革新へ(角川新書)』(坂村健著 角川学芸出版)

医療用のワクチンは、保管時の温度にたいへん敏感で、保管庫から出されて不適切な温度で放置されるとすぐに効能を失ってしまうそうです。

出しっぱなしにしていたワクチンと保管庫にきちんと保存されていたワクチンに医薬品種別やロット単位のIDしか付いていなければ、たいへんなことになります。
不適切な1本が混じっているがためにに、適切なほとんどのワクチンを含め、そこにあるすべてのワクチンを廃棄しなければならなくなってしまうからです。

これはあまりにも不経済です。

しかし、保管庫内部のワクチンに電子夕グを付けておき、IDによって個体を認識することができれば、不適切なワクチンが利用されようとした場合に、警告を発することができます。

今後は、ワクチンのような医薬品のみならず、食品その他の消費財についても、原料は何か、関わった製造者は誰 か、どこに流通して、誰に消費されたかといったトレーサビリティがIоTの一環として行われるようになっていきます。

③ 建材のトレーサビリティ

食品や医療の分野だけではなく、建材・資材についても同じように考えることができます。
IоTによるトレーサビリティの高度化は、建材・資材についても大きなメリットが考えられるからです。
施工管理やメンテナンス管理、不良品発生時の迅速かつ確実な回収、偽装対策については、医薬品・食品・その他消費財と同様、重要な課題です。
 
たとえば、砂粒大のセンサーチップをコンクリートに混ぜて施工することができれば、チップが発信する電波に基づき、内部の変化を調べたりすることができるようになる可能性があるということです。
かつて、高速道路のトンネルが崩落し、多くの方が亡くなるという悲惨な事故がありました。
トンネル全体をくまなく調査し続けることは困難を伴いますし、コストも大きくなります。
しかし、トレーサビリティが普及すれば、「交換すべき時期の建材・資材」「不良が発覚した建材・資材」をピンポイントで的確に見つけることができるようになります。
 
ベターリビングでは、すでに設置が完了した火災報知器の部品に不具合が判明した場合、トレーサビリティを徹底していたがために、ローコストで修理交換対応ができたという事例もあります。

さて。
以上、「AIとIоTがもたらす住宅トレンドの変化」として、7つの視点から予想してみました。

① AIとIоTによる防犯の強化
② AIとIоTによる「見守り」の充実
③ AIとIоTによる健康管理の強化
④ 各社スマート家電との連携
⑤ スマートハブ競争のはじまり
⑥ IоTを前提とした保証と予防修理の普及
⑦ トレーサビリティ文化の浸透

つながる住宅というと、

① 照明の色を自由に変えてくれる
② 今日の予定をスマートスピーカーが教えてくれる
③ 今日の天気を鏡が教えてくれる
④ 冷蔵庫の中身を確認し、自動発注しておいてくれる

といった「便利」「楽ちん」といったイメージが先行しがちですが、本当に重要なのは、

① 防犯レベルを高めてくれる
② 容易に高齢者家族を見守ることができる
③ 自然と健康的な生活をおくることができる
④ 災害や故障といった不測事態が発生しても困らない

といった機能だと思います。

今後、AI・IоTがどのような方向に向かうのか、まだまだわからない部分がありますが、

「大山鳴動して鼠一匹」

とはならないところまでは来ていると思います。
ご自分の生活、ご自分のビジネスに、今後、AIやIоTがどのような影響をおよぼすのか、見かけのイメージにだまされることなく、見極めていきたいものです。

<この稿終わり>