4.進化するIоTとセンサー社会の到来
==================

(1) IоTによる省電力化の事例

IоTとAIを組み合わせた企業の取組として典型的なのは、Googleによる省電力化の事例でしょう。
 
Googleは2016年7月に、同社のAI研究部門であるディープマインド(Googleのグループ会社の名称であり、固有名詞です)の機械学習技術を採用することで、データセンターにおけるサーバーなどの冷却に使用する電力を40%削減できたと発表しました。

同社は、データセンター設備の稼働状態や気候などに応じて冷却設備の設定を最適化することで、冷却設備の消費電力を最小化するAIを開発しました。
データセンター内に数千個のセンサーを設置し、データセンターの各設備の温度や消費電力、ポンプの速度、各種設定といったデータを蓄積しました。
 
この考え方の対極にあるのが、2011年の震災の際に発生した計画停電です。
きめ細かく対応するという発想を捨て、一斉に電気の供給を止めざるを得なかったわけです。
 
IоTを用いた商品やシステムにはセンサーが不可欠です。
そのセンサーがもたらしてくれる細かいデータの集積から、無駄が極限まで小さくなるよう、きめ細かい微調整をしていこうというのが、世の中全体の流れです。
カーシェアリングなどのシェアリング・エコノミー(シェアエコ)の考え方も根本は同じであり、シェアエコを下支えしている技術は、AIとIоT、あるいは、ビッグデータなのです。

同社は、データセンター設備の稼働状態や気候などに応じて冷却設備の設定を最適化することで、冷却設備の消費電力を最小化するAIを開発しました。
データセンター内に数千個のセンサーを設置し、データセンターの各設備の温度や消費電力、ポンプの速度、各種設定といったデータを蓄積しました。
 
この考え方の対極にあるのが、2011年の震災の際に発生した「計画停電」です。
きめ細かく対応するという発想を捨て、一斉に電気の供給を止めざるを得なかったわけです。
 
IоTを用いた商品やシステムにはセンサーが不可欠です。
そのセンサーがもたらしてくれる細かいデータの集積から、無駄が極限まで小さくなるよう、きめ細かい微調整をしていこうというのが、世の中全体の流れです。
カーシェアリングなどのシェアリング・エコノミーの考え方も根本は同じであり、シェアエコを下支えしている技術は、AIとIоT、あるいは、ビッグデータなのです。

Googleは、ニューラルネットワークに、これらの稼働データと冷却設備の消費電力との間にある「パターン」を学習させたわけです。
機械学習の典型例です。

(2) アクアのITランドリー

アクアが提供するコインランドリー「ITランドリー」も典型的な事例です。
すでにアクアのコインランドリーは、全てITランドリーシステムとなっています。
遠隔操作で機械の設定ができるので、店舗までいかなくとも、価格やポイントの設定、トラブル時の対応などを行うことができます。
売上情報の収集・分析、顧客・機器管理、エラー発生時の連絡、清掃・コイン回収のスタッフ管理までを一括で行うことまでできてしまいます。
 
コインランドリーで稼動している洗濯機や乾燥機には、通信機器が搭載されていますから、売上状況や稼働状況をデータ化し、複数の店舗からのデータを本部で一元管理できるようになっています。
本部からコインランドリーオーナーには運営・管理に必要な情報が提供されます。
これにより、たとえば、2つのコインランドリーを提供している事業者があれば、いつも混雑しているコインランドリーに対しては値上げをし、いつもコインランドリーに対しては値下げをする…といった施策をきめ細かく打つことができるようになります。
割引キャンペーンをするにしても、今までだったら「勘と度胸で」一律割引だったはず(計画停電型のキャペーン)ですが、今後は地域や時間帯に合わせて、売上や利益が最大になるような割引が可能になります。

(3) おかわりコースター

IоTについてはいろいろな企業がさまざまな分野で応用し、商品やサービスとして提案しています。
いくつか、中小企業による事例をご紹介しましょう。

まずは、おかわりコースター。

エスキュービズム・テクノロジーが開発した、同じドリンクをおかわりしたい時に、おかわりコースターにグラスをのせるだけで、キッチンにおかわりがオーダーされるというシステムです。

「注文したいのに、店員が忙しくてつかまらない」という顧客のイライラ感を低減し、繁忙時の店舗運営の効率化を目指して開発されたシステムです。
店の人件費を4.3%削減するほどの効果が期待されています。

(4) つながる乾電池Mabeee

これは、TIPSワイガヤサロンの参加者の方に教えていただいたおもちゃへの応用の事例。
IоTの本質をついた商品です。

Mabeeeは、ミニ四駆やプラレールに搭載する乾電池。
要するに、単3の乾電池の中に、単4の乾電池と制御装置・通信機器を組み込み、単3乾電池自体を制御可能な端末に変えてしまうという発想です。
スマホから指令を発信、Mabeee内の通信装置がこれを受信、供給する電圧をコントロールするというしくみです。
実に斬新な発想の商品です。

(5) IоTの基本的なスタンス

IоTを活用しようとした場合、ついつい、新たな専用端末を…という発想にいきがちですが、その必要はありません。
IоT戦略の基本的なスタンスは、新たな専用端末を作るという発想ではなく、「今普及しているもの」を最大限に活用して、ものをつなげていく」という発想にあります。
Suicaなどの非接触型カードシステムをどう活用するか、iPhoneなどのスマートホンをどう利用するか…という発想ですね。
前述したMabeeeが好例ですね。

ここでは、自動販売機の場合で考えてみましょう。
ここでは、電子看板(デジタルサイネージ)を備えた今時の自販機を想像してみましょう。
この手の自販機であれば、まず、気温や湿度、時間帯や季節に応じて、表示すべき商品は自由に変更できます。
 
これに、カメラを取り付ければ、購入者の顔(あるいは服装等)を認識することで、購入者の年齢や性別を判断することもできます。
年齢の場合は、正確に言い当てることは難しいでしょうが、20代か、40代か…くらいは判断できるでしょう。
 
さらに、事前に、購入者が自身の国籍や宗教等の個人情報を、ICカードやスマートフォンに入れておいてくれれば、それを自販機のセンサーにかざすことで、自販機はそれを読む撮ることができます。
購入者の国籍や宗教(つまりは、購入者の文化)に基づき、最適な商品を、彼らの母国語で表示することができるわけです。
 
これに近い商品はすでに実用化されています(富士電機の事例)。
 
東京オリンピックを直前に控え、ハラルの問題などが取り沙汰されるこの時期、こういった技術の存在はとても心強いものですね。
 
もちろん、自分の顔がカメラに映し出されることに違和感を感じる方もいるでしょう。
そういったモラルに関する問題は解決が必要ですが、少なくとも、技術的には、こういったきめ細かい対応が可能な時代になったということですね。

(6) IоT時代のリフォーム事業

昨今、私が首を突っ込ませていただいているリフォーム業界ではどのような応用が可能になるでしょうか。
 
ポイントは、「センサーの設置」になると予想されます。
エアコンのフィルター、水道管の流水量等を常時チェックするセンサーが設置できれば、事業者は、顧客に対し、適切な時期に適切な提案をすることができるようになります。
 
大量のOB顧客を大勢の営業マンで定期的に訪問する必要もなくなるわけです。
 
もちろん、ここでも、

「定期訪問することで顧客との人間関係が構築される。回数を減らしたら、その効果が減少する」

という声もあると思います。
 
しかし、一方で、

「もう訪問する口実はないが、上司が行けというからとりあえず訪問するか」

という営業マンもいるでしょうし、「毎度毎度、訪問されても迷惑なのよ」という顧客もいるはずです。
そういった方々にとっては、歓迎される方法でしょう。

リフォーム事業ではどのような応用が可能になるでしょうか。
 
ポイントは「センサーの設置」になります。
エアコンのフィルター、水道管の流水量等を常時チェックするセンサーが設置できれば、事業者は、顧客に対し、適切な時期に適切な提案をすることができるようになります。
 
大量のOB顧客を大勢の営業マンで定期的に訪問する必要もなくなるわけです。
 
もちろん、ここでも、「定期訪問することで顧客との人間関係が構築される。回数を減らしたら、その効果が減少する」という声もあると思います。
 
しかし、一方で、「もう訪問する口実はないが、上司が行けというからとりあえず訪問するか」という営業マンもいるでしょうし、「毎度毎度、訪問されても迷惑なのよ」という顧客もいるはずです。
そういった方々にとっては、歓迎される方法でしょう。

気になるのはセンサーの価格。
センサーが高価なモノ…のうちは、絵に描いた餅です。
しかし、予想では、IoTの発達とともに、センサーの価格は反比例して、下がっていくと考えられています(出典:Business Intelligence「THE INTERNET OF EVERYTHING: 2015」(2014年12月))。

(7) ビーコン内蔵流量センサー付ジョイントによるIoT化

ここで、浄水器メーカーの事例をご紹介させていただきます。
 
東京のIT機器メーカーのアプリックスが開発したビーコン内蔵流量センサーは、既に浄水器を利用している顧客が「簡単に浄水器をIоT化」できるようにした商品です。
浄水器のIоT化により、クラウド経由でユーザーごとの情報を管理することが可能になりました。
 
このジョイントを取り付けておけば、累計流量がフィルターの総浄水量の上限に近づくと、顧客のスマホに通知が表示されます。
ユーザーは、メーカーのオンラインショッピングサイトに接続し、その場でフィルターを購入できます。

従来であれば、ユーザー自身が定期的に行う必要があったフィルター交換・修理等のメンテナンス依頼よりも先に、メーカー側のサービス部門が状況を把握し、よりきめ細やかなサービスの提供が可能となったわけです。
 
先程もお話しましたが、「富山の薬売り」のような、定期訪問型のビジネスはスタイルが大きく変わろうとしています。なんとなく訪問する必要性がなくなってきたわけですね。
前述したとおり、顧客との人間的な絆が弱まるのではないかという意見もあると思います。
しかし、これはむしろ併用するべきでしょう。
定期訪問により、必要もないのに営業の話をして人間関係を悪くするよりも、時折、センサーの情報に基づき、的確に「交換の時期です」「修理しましょう」とアドバイスしてくれるサービスのほうが信頼感は高くなるはずです。

(8) LIXILが研究中のIoT住宅

このように、「客先へのセンサーの設置」に注目している企業はどんどん増えています。
IоT型住宅の研究では遅れを取っていた…と自己分析されているリクシルは、一気にその巻き返しをはかっています。
 
都内(東京東部)に設けた研究用家屋にセンサーを250個取り付け、子供だけで浴室に入ると自動で水位を下げたり、家の外観を360度映し出したりする実験を開始しました。

こういう住宅がいずれ当たり前になるのかもしれませんね。
そしてまた、そうなると、昨今注目を集めているスマートハブ…日本ではスマートスピーカーという名前のほうが普及しそうですが…の役割が俄然大きくなってくるわけです。

<次回に続く>