先日の大統領選。
楠木建先生の『ストーリーとしての競争戦略』に登場する差別化の2つの方向
「戦略的立ち位置」
と
「組織能力」
の戦いだったと見ることもできます。
軍経験も政治家経験も官僚経験もないトランプは、これまでのどの大統領とも異なる
「戦略的立ち位置」
に立ちます。
彼のライバル候補立ち(党内選挙含む)は、本当は彼と同じ立ち位置に立ってみたいと思っていたのかもしれませんが、それをすると、現在の支持者を失いかねない…
つまり、トランプは、模倣困難な
「外見的非合理性」
を持っていたことになります。
一方のクリントン。
経歴・名声・人間関係・ネットワークといったクリントン陣営全体としての組織能力を武器に戦ってまいりました。
組織能力がある以上、使わざるを得ない。
これを捨てて戦うのは自己否定につながってしまいますし、現在の支持者を失うことにもなりかねない。
いわば、
「わかっちゃいるけどやめらない」
状態。
戦略的立ち位置を買えて戦うことは、彼女には許されなかったわけです。
1970年代に、サウスウエスト航空が創業した際、業界の異端児として、既存の大手航空業界に鼻で笑われていた時期があります。
しかし、同社は、それが幸いして、「小規模空港間での往復便」というこれまでの航空会社が描くことのなかった戦略的立ち位置に立つことができました。
一方の大手航空業界は、ハブ空港を前提とした戦略しか建てることができない。彼らが過去に培ってきた組織能力(システム、人事、物的資産等)で、戦い続けなければなりませんでした。
その後の同社のサクセス・ストーリーは、マーケティングの教科書に書いてあるとおりです。
はてさて。
ドナルド・トランプは、「大統領版サウスウエスト航空」になりえるか。
これからが見ものですね。