大震災から2年が経過してもなお、被災地の経済や社会は回復には全く至っていない状況が続いています。
しかし、
「絆」
という言葉にあれほど熱狂した全国の人々は、露骨には言葉や態度には出さないものの、明らかに、熱から冷めた状態…
「まあ、震災の話は今はいいよ」
という場面も増えて来ました。
しかし、私の友人たちの中には、今持って、黙々と被災地支援のために、活動を続けている方々たたくさんいらっしゃいます。
皆さん、お忙しい方ばかり。
頭が下がります。
そんな中、縁あって、浪江町の今後について考える小さなディスカッションに参加して来ました。
このディスカッション中に、
「はっ」
と思った内容をチャート化したものがこれです。
どうということではないのですが、私達が
「原発からの復興」
について考えるとき、
「他の被災地で何か好事例はないだろうか」
と頭を巡らせがちです。
しかし、
「復興」
というのは、
「震災や原発事故の結果からの復興」
に限定されるものではありません。
「過疎化その他の理由により陥ってしまった現状からの脱却としての復興」
の過去の事例の中にも、学ぶべき好事例はたくさんあります。
「ベンチマークすべきは、他の被災地や他の原発事故地域に限定するなかれ」
「もっと、広く、地域が回帰・復興した事例を探してみよう」
「その中から学び取れる教訓やノウハウ、発想やデータがたくさんあるのではないか」
…こういう視点をもってみてもよいと思います。
先ほどの図(チャート)に戻りましょう。
横軸は、
「現在の状況に至るまでの時間」
を示しています。
たとえば、数十年かけて過疎化が進んだ村の事例であれば、左側にプロットされます。
地震や津波、原発事故により、一瞬で土地家屋・生活や社会が奪われてしまった地域の事例であれは、その逆、すなわち、右側にプロットされます。
縦軸は、
「現状からの復興の方向性」
を示しています。
たとえば、原状回復=元の状態をめざすために、もともとあった産業をもう一度呼び覚ます活動をしている町の事例であれば、上側にプロットされます。
逆に、変革や革新=今までとは全く違う街づくり・地域おこしをしていこうという都市計画に関する事例であれば、下側にプロットされます。
このように、世の中の復興の事例は、
「4つの象限」
を使って整理することができます。
便宜上、左上から時計回りに
「第一象限」
「第二象限」
「第三象限」
「第四象限」
と呼ぶならば、各象限のイメージはこんな感じになります。
第一象限
地震・津波・原発自己により一瞬にして社会と経済が一変してしまった地域が元に戻ろうとするベクトルである。
今回の震災後、多くの地域がまずはこの第一象限を念頭に必死の努力を続けていらっしゃる。
第二象限
数十年かけて少子高齢化が進み、人口の過疎化が進み、経済的に破綻の恐れが出てきた地域が再生を目指そうとするベクトルである。
第一象限の事例に比べれば、はるかにたくさんの成功事例がある。
第三象限
数十年かけて少子高齢化が進み、人口の過疎化が進み、経済的に破綻の恐れが出てきた地域が再生ではなく、新たな地域資源を活用して地域おこしをめざすベクトルである。
第二象限ほど事例は多くないだろうが(変革を伴うため、抵抗もある)、ワクワクする事例は少なからず存在する。
第四象限
地震・津波・原発自己により一瞬にして社会と経済が一変してしまった地域が再生ではなく、新たな地域資源を活用して地域おこしをめざすベクトルである。
口で言うのは簡単だが、実際には事例がまだまだ少ないのがこの象限である。右隣の第三象限の好事例からヒントを学ぶことができれば、チャンスは広がる。
第一象限をめざす市区町村は、第二象限や第四象限…つまり、自らの置かれている状況と
「90°」
ずれている、いわば、
「お隣の象限」
の事例をあたってみてはどうだろうか…という仮説が考えられます。
同じ象限の中で好事例がポンポンと出てくれば、もちろん、それに越したことはないのでしょうが、実際には、なかなかそうはいかないと思います。
特に私のお薦めは、
「右隣、左隣の事例への注目」
です。
一見、天災からの復興と過疎等による状態からの脱却は別物と思われがちですが、けっこう似通っている部分も多いと思います。
たとえば、徳島県にこんな事例があります。
http://www.irodori.co.jp
有名な事例なので、ご存知のかたも多いと思います。
成功事例として紹介されることが多い事例ですが、実際には、成長の限界を指摘する方も多く、別な角度からの地域おこしが必要とされています。
実際に、その地域おこしに携わっているコンサルタント兼事業家(実は、公務員の側面も持っているのですが)の小林篤司氏の講演録が、環境省のHPにアップロードされています。
http://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/kuiki/data/training_2/7_1_sikoku.pdf
http://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/kuiki/data/training_2/7_2_sikoku.pdf
これなど、
「天災からの復興」
とは一見全く関係なさそうな事例ですが、
「復興を急ぐあまり、短期的な手法をとるのではなく、足を使って地域を徹底的に調査・分析してから、復興の計画は立てるべきだ。思いつきで始めてはいけない」
ということを、痛いほど教えてくれる貴重な資料です。
復興の方針に悩んでいる自治体の関係者は彼のような人物を招聘し、講演してもらったり、シンポジウムを開催したり…という方法をとってもよいと思います。
無論、このような
「右隣、左隣の事例」
は、山のように存在するはずです。
この図…
「復興ベクトル」
と名づけました。
近視眼的に自らの置かれている地域と告示したケースだけを追いかけるのではなく、隣接する象限の事例からいろいろなことを学ぶ、あるいは学びうる機会を設けていくこと…
これはとても大切なことだと痛感します。