今朝の日経新聞に情報における「等価交換の原則」についての記事があった。
アルジェリアでのテロ事件に対し、日本政府が英米仏から重要な情報を引き出せなかった理由として、日本がこれらの国々に重要な情報を供給できていない点があるのではないかという指摘だった。

http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20130124&ng=DGKDASDC23007_T20C13A1EA1000

ビジネスの世界においても、まったくもって同様。
情報は「Give and Take」が大原則である。

若いビジネスパーソンの方々と話をすると、

「先輩や上司から仕事を教えてもらえない」
「先輩や上司が情報をくれない」

とぼやく方が多い。

だが、私にいわせれば、

「まだまだだな」

である(笑)。
そういう状態にあるということは、上司や先輩が自分に情報供給したくなるインフラを自ら整備できていないということの裏返しであるからである。
ここでいう上司や先輩とは、直属の上司・直属の先輩ではない。
社内や関連会社を含めた「広義の上司・先輩」である。

会社に対して恨み言を言う前に、自らのインフラ構築力(環境整備力)について考えてほしい。
上司や先輩が情報をくれないなら、くれるように仕向ける努力をしてみよう。

上司や先輩が任意の若手社員に情報を供給したくなる、もしくは、せざるをえなくなる状態とはどのような状態だろうか。

答えは簡単。
その若手社員が、普段から、有益な情報を、社のため、部署のため、上司のため、先輩のために発信している状態である。
そういう情報を発信している後輩が困っている時に、はじめて、上司や後輩は、

「珍しく困っているようだな。よし、教えてやるか」
「いつも世話になっているから、特別にこいつを情報提供してやろう」

という気持ちになるのだ。

相手が情報を教えてくれないのは、意地悪ではなく、その若手に情報を供給する意義や理由を発見できないでいるからなのだ。
「こいつにはいろいろ教えてやりたい」と上司・先輩に思わせる工夫が必要なのだ。

「だって、まだ、キャリアが浅いですから、上司や先輩に情報発信なんかできませんよ」

と反論する方もいらっしゃるだろうが、方法はある。

それが、イアハート効果である。
http://ja.wikipedia.org/wiki/アメリア・イアハート

つまり、社の中(あるいは部署の中)で、

「私だけが得意な分野」
「私が一番詳しい分野」

を持っていれば、その分野に関する情報においては、社内のあらゆる上司・先輩に頼りにされるようになる。
その分野の情報だけは、どんな上司や先輩も、その若手に聞くのが一番の早道だという分野があればよいということである。
この場合、深堀りすることが大切だから、範囲は狭くてよい。
キャリアの浅い方ほど、狭い範囲から始めてみよう。広くすると、勉強にえらい時間がかかるからだ。狭ければ、かける手間暇も少なくて澄む。
ここだけは「広く浅く」では、何の価値もないのだ。

化粧品メーカーに勤務していた二十代。
テーマを決めて、幾度も私は、社内における

「小さな放送局」

であらんと努力した。20代後半の頃のこと。まだ、中小企業診断士の資格も持っていなかった。とにかく情報が武器だった。

ギフト、携帯用エステ、小集団活動…

部署が変わるたびにテーマが変わった。
いずれも、テーマとしては小さく、社内ではマイナーな分野だったかもしれない。
が、理論を構築し、事例を取材し、その情報を社内に向けて発信し、理論を改訂し、再び事例を収集し、その情報を社内に向けて発信し…
を繰り返してきた。
ビデオカメラと三脚を持って、社内の優れた事例があれば、すぐに取材にいった。その日のうちに原稿を書き、ビデオを編集し、セットで上司に提出した。
命令などされていない仕事だったが、とにかく、繰り返した。

これらの情報は結果としていずれも社内で高く評価された。

「いつもおもしろい情報を発信している竹永が困っているのだから、今回は面倒を見てやるか」

そう思って下さる上司・先輩がいろいろな部署にできていった。
いつの間にか、私はたくさんの

「社内家庭教師」

のような先輩を持つことができた。
欲しい情報や知りたい情報は、他部署の上司や先輩たちが率先して教えてくれるようになった。
飲みながらの場合もあれば、会議室での個人レクチャーの場合もあった。
もっとよく知っている他部署の大先輩を紹介してくれることもあった。

手前味噌ではあるが、以上は、情報における等価交換の原則に基づく、セルフ・マネジメントの実例である。

「教えてくれない」
「情報が降りてこない」
「うちの会社は教育のシステムがない」

と、嘆いている若手諸氏に問いたい。

「あなたは、社内・組織内・部署内でどんな分野についてのナンバーワンなのですか?」