皆さん、こんばんは。
本日の日経ビジネススクールのマーケティング講座が終わりました。
http://www.nikkei-nbs.com/nbs/lecture/marketing/takenaga_makoto.html

今日もいろいろな方とお知り合いになることができました。
Facebookに参加している方も回をおうごとに増えてきています。
名刺交換後、「友だし申請しますね」という別れの挨拶が一般的になりました。

さて。
今日頂いた質問について共有化しておきたいと思います。

Q.
企業のCSRと企業のマーケティング活動は両立するか。
社会貢献活動を利用して集客をしていると思われるのは心外だし、逆効果ではないか…という考え方もあると思うが。

A.
ありがとうございます。
もちろんそういう考え方も存在します。
しかし、できれば、CSRとマーケティングの間の垣根は取っ払ってしまい、両者の融合を考えたほうがいいと思います。
最大の理由は、そのほうが「長続き」するからです。
無理して行なっているCSRは、経営者や担当者が変わると、「やめようよ」となることが多いのです。

Googleが人材のダイバーシティを考える上で、社内のマイノリティ毎にECG(従業員によるコンサルティング集団)を形成しています。ECG毎にGoogleの経営者にさまざまな提案を行なっています。Googleは、ダイバーシティを義務として考えているのではなく、積極的な武器として捉えています。CSRと人事制度が有機的に結合している事例です。

山梨県に位置するスーパーのやまとでは、顧客のためにエコポイント制度を導入、顧客が自宅で出たゴミを持ってくると、店頭でそれを引き取り、重さに応じてポイントを加算しています。回収されたゴミは契約農家に送られ、堆肥として、野菜作りに活用されます。その野菜が店頭に並ぶと、顧客はそれを喜んで買う…という参加型のマーケティングを展開しています。エコというCSRを使って、集客し、顧客を囲い込んでいる事例です。

私は自分のクライアントとパートナー、クライアント候補者とパートナー候補者を区別することなく、一同に介し、情報交換や知識交換できるしくみを「ビジネス雑談サロン」として設けています。このサロンからさまざまなビジネスが生まれていますから、雑サロ自体は私にとってマーケティング戦略の一貫ですが、一方で参加者はプライベートな友人も多く、事実上CSRの場としても機能しています。

マイケル・ポーター教授は、昨今、カスタマー・シェアード・バリュー(CSV)という概念を提唱しています。ボランティアやメセナ・フィランソロピーのような「道徳心」だけに頼ったCSRは、結局企業体力がなくなると廃止されてしまう。マーケティングにも結びつきません。
そうではなく、社会や顧客も得をし、企業も得をする…そんな関係を作ることが必要だと、彼は主張しているのです。社会貢献しながら、堂々と企業も儲けなさい! という考え方です。

この考え方は宗教改革の考え方に似ています。お金儲けは悪いこと…という旧教の考え方を否定し、一生懸命働き、一生懸命儲けることは悪いことではない…というカルヴァンの教え(新教)は、当時台頭してきた多くの商工者層に受け入れられました。もっとも、これはカルヴァンのターゲティングの妙…と捉えることもできますが笑

CSRとマーケティングの分立ではなく、融合こそが、これからの企業が選ぶべき方向の1つではないでしょうか。
「儲け主義」は資本主義の大原則ですが、その方向性は時代の社会に合わせて変わっていくべきです。理論やルールに社会が合わせていくのではなく、社会に適した理論やルールを導入していく視点が必要でしょう。