昨日は、親しい友人たちと、「激突! デジタル対アナログ」というテーマで、さまざまな角度から話しあってきました。昼は水道橋(弊社)で、夜は、コクヨ様のご好意で、渋谷ヒカリエの会議室MOVをお借りしての開催となりました。

http://www.shibuyamov.com/

 

ダイレクトに自分を取り巻くデジ・アナ環境の変化を語る方もいらっしゃれば、どうしてもアナログでなければならない分野を論じた方もいらっしゃいます。
スケジュール管理とタスク管理には特に注目が集まりました。新聞や雑誌のあり方、自炊と電子書籍の今後、著作権の問題や法教育にまで話が及んだこともありました。

 

私自身、デジタル化を進めるのは、別に「新しもの好きだから」というわけでは決してありません。
自らの生活をデジタル化していくと、どのような功罪が生まれてくるのか、自分自身を実験台にしているというのが実情です(その結果が、私の場合、しゃべるネタになりますので笑)。

さてさて。
FacebookやTwitterを通じて、この1年間で非常に多くの方々とやりとりをするようになりました。

私の友人の特徴は、専門家や経営者の方が多い点。前向きで、新しいことにチャレンジするのが大好きな方が大半です。
およそ、ITやクラウド、SNSというのは、不確定なものが多く、一番安全なのは、

「一切使わないこと」

であり、おそらくそういう生き方もあると思います。

「はじめて、銀行制度という考え方が世の中に出た時、多くの方は不安だったに違いない」

と発言してくれた方もいらっしゃいます。クレジットカードや保険制度も初めて世に登場した場合には相当に「怪しい」と思われたはずですね。
現在、SNSやクラウドは、ちょうどその「洗礼」を受けている時期なのでしょうね。淘汰されるか、定着するか。
経営学者のクリステンセンによれば、およそ、モノ(製品でもサービスでも)が普及する過程では、はじめに、機能競争が起こり、次に信頼性競争が起こり、次に利便性競争が起こり、最後に価格競争が発生します。
SNSやクラウドは、今や機能競争から信頼性競争に競争の性質が変わりつつある過渡期なのかもしれません。

前述したとおり、信頼性に問題がある以上、

「一切使わない」

という選択肢もあるかもしれません。

しかし、人生で与えられた時間というのは有限なものであり、年齢とともに、その「壁」が大きく感じられるようになります。

あたりまえのことながら、クラウドやSNSの素晴らしいところは、ローコストで、無駄な時間をサクッと排除してくれるです。
検索・編集・同期・調整・共有といったビジネス上の情報のやりとりにおけるさまざまな無駄な時間(つまらない作業)をとことん低減してくれる点がすばらしいわけです。
かつては、図書館にいって、文献を当たり、コピーをとったり、転記をしたりする作業そのものも、

「知的労働」

と考えられていました。
しかし、実際には、こんな作業は知的でもなんでもありません。
馬鹿馬鹿しいほどにつまらないことに時間をかけなければならなかったのです(あ、もちろん、こういった作業を通じて、仲間意識が醸成されたり、思わぬ素晴らしい情報を発見したり‥というプラス面もあると思いますが、総じて、もったいない時間の使い方だったのだろうという意味です)。

ちなみに、

「知的労働の生産性を高める方法」

をテーマに仮にディスカッションを行ったとすると、依然として、多くの方は、

「短時間でたくさんのアイディアが生まれる方法」

を追求したがります。
確かに間違ってはいませんし、私自身、そのための方法論については、いろいろな方にお話しています。

しかし、それ以上に必要なことは

「アイディアを創造するための時間をできるだけ多く確保する方法」

を見つけることです。
言い方をかえれば、

「つまらない仕事(非知的労働)に必要な時間を圧縮し、考える仕事(知的労働)に充当できる時間を増やそう」

ということです。

以前に、このブログでも、GoogleIMEのお話をしたことがあります。
一発で

「おジャ魔女どれみ」

が出てくる、私にとっては魔法のIME(Input Method Editor;PCなどの情報機器で、文字入力を補助するソフトウェア)です。Googleのユーザーが過去に検索した単語が巨大なデータベースとなり、それをもとに、一番多用される用語から優先的に変換候補として示してくれます。

「MacBook Air」
「ダルビッシュ有」
「iOS」
「ドラえもん」
「サザエさん」
「仮面ライダー龍騎」
「AKB48」

いずれもさくっと出てきます。
集合知の好例です。
単語登録など不要です。唯一不思議なのは、

「あっぷる」

と打っても

「Apple」

が出てこない点笑 なぜなのでしょう??

さてさて。
こういった入力ソフトウェア1つをとっても、工程管理をつきつめていくと、非知的労働時間を圧縮できる可能性があるわけです。

ところが、多くの方が、

「入力や変換は手間がかかるのが当たりまえ」

と考え、あきらめ、がまんして、使いにくいIMEをそのまま使っていることが多いのです。
Macを買うとついてくる標準のIME「ことえり」は、最悪のIMEです。
Macを購入した友人に、

「最初に何をすればいいか?」

と問われれば、間違いなく、

「GooglIMEを導入してくれ。そうでないと、君のMacのそこから先の調整をしてあげる気にならないから」

と答えます笑。
というわけで、日本林檎党(Macを愛する雑サロ仲間集団)の諸氏は、私に調整の依頼したり、Lectureを希望されたりする際には、まず、ご自身のMacにGoogleIMEを入れてから…にしてください笑

このGoogleIME。現在では複数の端末(PC)で使用される場合、1つの機器で登録したユーザー辞書の情報(例えば、「たけながまこと」⇒「竹永亮」という単語登録情報)は、同期され、別の端末でも以後、同じ辞書が使えるようになります。難しい読み方の友人の名前など、億劫がらずに一度登録しておけば、半永久的に、自分の辞書として使うことができるのです。

入力ソフトウェア1つとっても、これだけの技術革新(イノベーション)があります。
小さなことですが、入力作業は、日々ビジネスをしていれば、膨大な量が発生しますから、そのストレスから解放されれば、心理的にも楽になりますし、物理的にも相当な「非知的労働時間の圧縮」につながります。

「ファイル管理はフォルダを生成し、そこに入れる」

という多くの方が信じている習慣も、実は逆転の発想を持ったほうが、ファイル整理は楽になります。
以前にもご紹介したとおり、ファイルを分類せず、

「寿限無式ファイル命名法」

に従って、長いファイル名をつけておけば、今時のPCであれば、一発で絞込み、検索することができます。

「複数の人間でWordで執筆する場合には、最後に誰かが箇条番号の一大整理を行う必要がある」

というのも迷信。
Wordのアウトライン機能、スタイル機能、テンプレート機能を使って、作成する文書を、はじめから、

「完全階層構造」

にしておけば、誰とどんな分業型執筆を行なっても、最後の取りまとめ担当者の仕事はかなり楽になります。
企画書を書く際にも、紙にグランドデザインやイメージ、ドラフトを描いてから書かずとも、文字情報であれば、Wordのアウトライン機能をスタイル機能と連携させることで、かなり自由に、柔軟に、作成することができます(Wordのアウトライン・プロセッサー機能)。同時に、「清書」「箇条番号整理」「フォント・スタイルの統一」といった、私から申し上げれば「くだらない作業」からは一生涯解放されます。

「名刺はスキャンして、名刺管理アプリにインプットし、OCRの誤読を直して、データベースを作り続けるべきだ」

これも固定観念。

「名刺は、スキャンして、PDF化し、OCRをかける等の処理としたら、ただHardDiskに放り込んでおけば良い。概ね後から検索できる」

と考えたほうがよほど効率的。

「年賀状の住所が自動印刷できない」

というご指摘をされる方もいらっしゃるだろうが、すべての名刺についての完全なデータベースを日々の忙しい中で作る作業よりも、12月になってから、送るべき相手の住所録リストを作るほうがずっと楽です(総作業量は少ない)。そもそも、年賀状という習慣がいつまで続くのかわかりませんし笑

 

バーニーという経営学者が、

「企業には、内部の人間(経営者や従業員)には認識できない『見えざる資産(Invisible Asset) 』がある」

と唱えています。
全くの同感です。
逆に、

「私たちのビジネスには、自分では認識できない『見えざる非知的労働(Invisible Non-intellectual Labor)』がある」

ということができるのです。

知的労働の時間自体を圧縮し、生産性を高める前に、見えざる非知的労働の時間を圧縮し、知的労働に充当できる時間を確保すること…知的生産性を高めるためには、この決意と努力が必要なのです。
最近の、ビジネス雑談サロンは、この決意と努力の場となりつつあります笑