ひょんなことから、今週末に、海外からのMBA留学生の方々を対象に、人の企業の動機づけのノウハウについて、講演をすることになりました。
私が、モチベーションについて講演や研修を行う場合、必ずとりあげるのが、動機づけ地形図モデルです。
今日から何回かに分けて、動機づけ地形図モデルについてご紹介したいと思います。
モチベーションは1枚の地図にまとめることができます。これを「動機づけ地形図」といいます。
(1) 動機づけ地形図
動機づけ地形図とは、モチベーション・コンター・マップの訳で、従業員のモチベーションを地形図の形に示したものです。
モチベーションを7つの因子に分けています。
ただし、これらの因子は完全に独立したものではなく、各々が相互に因果か関係を持っています。その因果関係を動機づけ地形図では、矢印で表しています。
たとえば、図中の「関係性→承認」という部分は、関係性(職場における人間関係全般)がよくなれば、上司や仲間から承認(受け入れられ、ほめられること)されることを示しています。
(2) 動機づけ地形図の読み方
① 海・湖・川の概念
動機づけ地形図には、等高線がありません。等高線を使わずに、矢印を使って、図上の標高(海抜)を表しています。
標高0メートルに位置するのが、「モチベーション」という名前の海です。海には3本の矢印が刺さっています。
矢印は川を表し、「有能感」「適職感」などの楕円形が湖を表しています。水は高いほうから低いほうに流れますから、一番下流の湖(海に近い湖)が、「適職感」「価値」「人的目標」の3つになります。
適職感が得られるだけでなく、仕事の価値や仕事上の人的目標が見つかると、3つの湖から水があふれ、川(矢印)を通って、海(モチベーション)に注ぎ、海(モチベーション)の数位は高くなることを示しています。
地球温暖化問題が取りざたされる昨今、現実の海水面を高めることはご法度ですが、モチベーションの世界の架空の海水面は高くすることを目標と考えます。文字通り、「モチベーションが高まる」ことを模式化した図になっています。
湖の間にも上流と下流の関係があります。前述した、「関係性」は「承認」の上流の湖です。関係性という湖が満たされて、湖面が上昇し、あふれ出し、川(矢印)を通って、水は「承認」という湖に注ぎ込むことを示しています。
② 渦(ループ)の存在
動機づけ地形図には、実際の地形図とは異なる点もあります。
実際の地形図であれば、水は高いほうから低いほうに注ぎ込み、その逆の動きをすることはありません。
ですが、動機づけ地形図上は、水が渦のように行き来している箇所が何箇所かあります。「有能感」(自分は仕事ができると思える自信)と「承認」(上司や同僚に受け入れられ、ほめられること)の間は川が2本あり、矢印が相互に示しあっています。
「有能感→承認」の矢印は、一生懸命仕事の勉強をして、自信が高まれば(「有能感」の向上)、上司や部下にほめられる(「承認」の向上)を示しています。「承認→有能感」の矢印は、上司や部下にほめられる(「承認」の向上)と、それが励みとなって(もっと承認されたくて)、いっそう仕事の勉強をして、自信を高めるようになる(「有能感」の向上)ということを示しています。
このように矢印がぐるっと1往復している箇所を「渦(ループ)」と読んでいます。
(3) 動機づけ地形図の最高標高地点
では、動機づけ地形図の最高標高地点となる湖はどこでしょうか。
渦(ループ)が存在しますから、そこは無視してさらに上流を目指していただいてもいいでしょうし、どこからも水が流れ込んでいない湖を見つけていただいても構いません。答えは「関係性」です。
動機づけ地形図が示すとおり、人間関係とモチベーションは直接つながるものではありません。人間関係(関係性)が良好であるということは、職場の当たり前の条件(必要条件)であり、これを満たしているからといって、すぐに職場のモチベーションが高まるわけではありません。
しかし、間接的には、人間関係(関係性)は、他の多くの湖につながっていて、モチベーション高揚の間接的要因として重要な存在です。
<次回に続く>