昨日参加したシンポジウム

「低炭素社会を考える」http://www.tokyo-23city.or.jp/event/symposium/document/231015teitanso.pdf

は想像以上に有意義な時間でした。


2人の講師の方によるインスパイア・セミナーも短時間ながらとても興味深い内容であり、お話もたいへんお上手でした。
その後のディスカッションももっともっと聞いていたくなる内容でした。

子供の頃、

「人類は核戦争で滅ぶ」

という未来は至る所で語られていました。
さまざま書籍にも書かれていましたし、それを題材とした映画や小説も多数あったからです。
大ヒット漫画の1つである

「北斗の拳」

もそのひとつですよね(笑)

しかし、

「人類はさほど愚かではない」

という理由で、

「現実的には核戦争は回避されるはずである」

という考え方には子供ながらに納得していました。

「そりゃあそうだ。ボタン戦争になったら、押した方も押されたほうも滅ぶんだから、よほどおかしな独裁者でもでてこない限りは戦争になるはずがない…」

当然です。
ボタンを押せば、ボタンを押した当事者にミサイルが跳ね返ってくるから

「押さない」

というのはものの道理です。

では、

「ボタンを押した当事者の子供世代に報復のミサイルが返ってくる」

場合には人類はどう考えるでしょうか。

ちょっとピンと来ない事例でしょうか。
では、ちょっと脚色。

そうですね…

ちょっとSFチックですが、

「恒星間戦争」

で考えてみましょう。

遠い星に住んでいる知的生命体が地球侵略を計画していることを知った人類が片道15年くらいかかる敵の星にミサイルを打ち込む…

ただし、向こうも報復処置を講じるでしょうから、さらにまた15年後、つまり、30年後には敵のミサイルが地球に到達する…

いかがですか?
これならシチュエーションを思い浮かべていただけますよね。

「だったら、ミサイルは打ち込まないんじゃないかな。」
「自分の子供世代がミサイル攻撃にあうんじゃ、人類同士の核戦争と同じ結果じゃないか。」
「その知的生命体と和平の道を探るべきだ。」

…おそらくは、こんなふうに考える方が多いのではないでしょうか。

私も同感です。

では、更に話のスパンを長く設定して、

・ 孫の世代にミサイルが返ってくる場合
・ ひ孫の世代にミサイルが返ってくる場合
・ 玄孫の世代にミサイルが返ってくる場合

等には、どう考えるのでしょうか?

子供世代に返ってくる場合の同じように、

「玄孫の世代がたいへんなことになるから、ボタンは押さないな」

と言い切れるでしょうか。

いかがでしょうかね。

「とりあえずミサイルは打ち込んでおいたほうがいいよ。玄孫の時代に報復される? それはそのとき、その世代の奴らが考えればいいことだろう。今から玄孫の心配してどうするんだよ

こんなふうに考える方も出てくるかもしれません。あるいは、こんな考え方が多数派を占めるかもしれませんね。

遠い将来世代の利害と現役世代の利害の

「均衡」

を取るのはとても難しいことです。

私達自身に痛みはありませんし、将来世代はまだ存在しないので議論に参加し、自分たちの権利を主張することができないからです。

「恒星間戦争」

の事例はもちろんフィクションですが、この事例を

「地球温暖化」

に置き換えてみたらどうでしょうか。

昨日のセミナーで伺った予測によれば、現在私達(ならびに私たちの数世代前以降の先祖たち)が数億年分の化石燃料を燃やし続けてきたことにより、相当量の二酸化炭素(温室効果ガス)が発生し、結果として、海面の上昇は向こう数千年続くそうです。

地球の温暖化は、クルマや自転車のように急には止まれないのですね(「クルマは急には止まれない」という標語はこの際無視します笑)。

地球の温暖化は、船舶の運行のようにブレーキをかけてからも慣性で進んでしまう…そういう性質のものなのですね。

地球温暖化はこれまでの慣性で数千年は続いてしまうというのは、もし本当なら驚愕の事実です。
しかも、

「仮に今日から一切の二酸化炭素を使わないとしても」

…だそうですから、おそろしい話です。

無論、試算方法によっていろいろな説があると思うのですが、最悪の場合、そうなるというお話でした。

海面が数十メートル上昇すれば、とんでもないことになるのは疑いの余地がありません。
別の恒星系に住む知的生命体からのミサイル攻撃は完全なフィクションですが、地球温暖化による海面上昇はフィクションとは言い切れないようです。
その被害は核戦争によるものと同規模もしくはそれ以上になるかもしれません。

予測の精度の是非は置いておいても、

「現世代の権利と将来性代の権利の均衡」

の問題は法哲学の観点からもっと論じられるべきかもしれません(自然科学の観点ではなく)。

「物言わぬ将来世代との同居・二世帯住宅」

をどう考えるか…という発想はほとんどの方にはありまえん。

子供の頃、核戦争の時には、

「人類はそれほど愚かではない」

という説には頷くことができたのですが、こと、地球温暖化問題については、現在のところ、

「人類は思った以上に愚かである」

と考えざるを得ません。

スティーブ・ジョブスは、

「愚かであれ!」

と言い残しましたが、こと、地球温暖化の問題だけはそうはいきませんね。

難しい問題ですし、簡単に結論が出るとも思えませんが、一度、

「ビジネス雑談サロン」

で取り上げてみたいテーマも1つです。