「昨日は、『名著を読む会(読む会)』に出席。
課題図書『組織行動のマネジメント』(ロビンス)について、メンバーと意見交換しました。

一番興味深かったのは、職務満足度と生産性の関係。
職務満足度が高ければ生産性が高くなる…という仮説を私たちは信じたいのですが、ロビンス曰く

「むしろ、生産性が高い場合に、職務満足度は高くなる」

とのこと。両者に相関関係はあるものの、因果関係は逆なんですね。残念。

「職務満足度を高めても生産性には寄与しないのか。これはちょっと落胆するなあ」

メンバーの中にも同じような感想を持った方が多かったです。

私は理論政策更新研修や企業におけるマネジャー研修において

「動機づけ地形図モデル」

についてよくお話ししていますが、適職感(職務満足度と近い概念)は、非常に重要な動機づけの要素だと申し上げてます。

適職感が高ければ、離職率が低くなります。そうすると、経験曲線効果(習熟)が顕著に現れ、コストは低下。結果として生産性は高まります。

ただ、研修の際申し上げているのは、適職感が高くなると、

「これだけ成果が上がるというのは、この仕事は俺に向いているんだろうな。だったら、土日も仕事の勉強してみるか」

と思うようになり(学習への自己動機づけ効果)、従来以上に熱心に勉強するようになります。

結果として、個人の能力が上がり、個人の自信(動機づけ地形図モデルでは、「有能感」といいます)が、高まります。
個人の能力が高まっているわけですから、結果として、組織としての生産性は高まります。

一方、本人が勉強し、結果として、有能感が高まると、上司は部下に仕事を任せてくれるようになりますから、

「あ、最近、部長は俺に仕事を任せてえくれるようになったな」

となります。

これを「自己決定感が満たされている」といいます。
自己決定感が満たされ続けると、やがて

「部長にこれだけ仕事をたくさん任せてもらえるんだから、この仕事は、俺に向いているんだろうな」

と思えるようになります。

 

もうお気づきですよね。
そうなのです。
ぐるっと一巡して、

「適職感」

にもどってきたわけです。

適職感⇒有能感⇒自己決定感⇒適職感

ここに1つの動機づけの「渦(ループ)」があるのです。

有能感と生産性に因果関係があると仮定すれば、

適職感⇒生産性⇒自己決定感⇒適職感

と読み替えることができます。

自己決定感を省略して考えると、

適職感⇒生産性⇒適職感

適職感を職務満足度に置き換えると

職務満足度⇒生産性⇒職務満足度

おそらくは、両者は相互に影響を及ぼす因子ではないでしょうか。
ちょっと安心しました。
できることなら、しっかりと実験してみたいところですね笑

ところで。
動機づけ地形図モデルは、よく、ダニエル・ピンクの『モチベーション3.0』と比較されますが、開発にあたって、ダニエル・ピンクの考え方は一切用いていません。『モチベーション3.0』が世に出たとき、私もびっくりしました。

動機づけ地形図モデルが参考にしたのは、①チクセントミハイ、②デシ、③ヴルーム、④ポーターとローラー等です。

ちなみに欲求段階説論者(マズロー、ハーズバーグ、アルダファ、マクレランド、マグレガー、アージリスら)の理論もほとんど参考にしていません。

ただ、ロビンスの著書の中には、前述のいろいろな理論意外にも、あまたの理論が登場します。
これらを「動機づけ地形図モデル」の考え方と比較するのはとてもおもしろい。
同書の中には、他にも興味深い研究がありますので、都度ご紹介したいと思います。