久しぶりに、『日本の競争戦略』(M.E.ポーター、竹内 弘高著 ダイヤモンド社)を読みました。
10年以上前の本だから古いかな…とも思いましたが、よく考えるとしょっちゅう引用させていただいているポーター理論の多くは70〜80年代に提唱されたものであり、「古さ」を理由に、本書の価値が下がるものではありませんね。

以下、書評というか読書感想文(懐かしい笑)

『日本の競争戦略』(M.E.ポーター、竹内 弘高著 ダイヤモンド社)は2000年に出版された、ポーターの代表作の1つで、およそ10年にわたる克明な調査を基に、競争戦略論の権威である著者が、通説を覆す日本と日本企業のための競争戦略論を提示したものである。

ハーバード大学ビジネス・スクール教授M.E.ポーターの著作としては、日本では、名著『競争の戦略』『競争優位の戦略』のほうが有名であるが、『日本の競争戦略』は日本人にとって非常に興味深い考え方を示している点で、ポーターの戦略論を最も身近に感じることができる一冊である。

出版されてからすでに10年以上が経過しているが、ポーターの提言のうちの一部は、日本政府・日本企業により受け入れられ、すで改善されている。しかし、提言の大半は、依然としてそのままになっている。

日本経済の「弱点」を再認識する上で、本書は最良のテキストである。

本書の提言は、日本経済の持つ「優位性」を根本から否定するところからスタートしている。
成功産業については、成功要因ではなく「なぜ伸び悩んでいるのか」に焦点を当て、実証研究する。
従来の研究がスポットを当てなかった「失敗産業の事例」が数多く紹介されている点も特徴的である。

ポーターは、「強大な輸出国とあがめられてきた日本において、新たな輸出産業がほとんど育っていない」状況を危険な兆候として指摘している。

日本企業への提言以上に、日本政府への提言は手厳しい。貿易の自由化促進、大学制度の再構築、非生産的な内需型産業の淘汰など厳しい改革を訴えている。

本書はまた、「競争」「イノベーション」「差別化」「生産性」について、企業経営者はどう考えるべきかをさまざまな視点から説いている。日本には、経営戦略についての体系的な優良なテキストが少ないが、本書はこの点をカバーしてくれる。

現在においても、今後の日本がどのような経済政策を採用し、ミクロ経済や企業経営がどのような方向を目指すべきか、考える上で、貴重な文献である。