今朝方アップした「汝、PowerPointに支配されることなかれ」に、たくさんのご意見・ご感想を頂戴し、本当にありがとうございました。

「Facebookに登録して良かった」

と、改めて実感いたしました。

今回は、「PowerPointを使わなければならない環境」を前提として、私の方法をご紹介いたしましたが、本来、PowerPointを使わないほうが、講義・講演の説得力ははるかに増します。
受講者・聞き手に対し、白いホワイトボードだけを用いて、縦横無尽に「落書き」をしながら、話を進めていくほうが、よっぽどインパクトがあります。
コンサルタントとして、講師として、講演者として、力もつきます。

PowerPointにばかり依存していると、果てはPowerPointがないと何もできなくなってしまいます。
ホワイトボード主体の講義・講演は、PowerPoint主体の講義・講演と比べると、自らの脳に与える刺激の質・量が圧倒的に違います。北宋の文人・欧陽修は、アイディアが生まれやすい場所として、「三上(さんじょう)」をあげています。三上とは、以下の3つの「上」の総称です。

① 枕上(ちんじょう) 目が覚めるとよいアイディアが浮かぶというものです。
② 馬上(ばじょう) 馬に乗っているとよいアイディアが浮かぶというものです。
③ 厠上(しじょう) トイレですわっているとよいアイディアが浮かぶというものです。

なるほど。
ドイツの数学者カール・フリードリヒ・ガウスは、

「1935年1月23日、午前7時、起床前に発見」

というメモを残しています。これは①「枕上」に該当します。

ポアンカレ予想で有名なフランスの数学者アンリ・ポアンカレは、乗合馬車の踏段に足を触れた瞬間に素晴らしいアイディアがひらめいた、と述べていますが、これは②「馬上」(実際には、「馬車」ですし、「乗る前」ですが<笑>)に該当します。

一方、誰が作った言葉かは存じていないのですが、「三中(さんちゅう)」というのもあります。

① 無我夢中
② 散歩中
③ 入浴中

イギリスの哲学者バートランド・ラッセルは、

「タバコを買いに出かけた帰り道で考えが火花のように浮かんだ」

と述べています。これは②「散歩中」に該当します。

ギリシアの科学者アルキメデスが、風呂の中で「浮力の法則」を発見したのは、③「入浴中」に該当します。
うれしさのあまり、「Eureka(エウレカ、見つけた)!」と叫びながら、裸で王宮まで走っていったという故事は有名です。

私の場合、「三上」「三中」に該当するヒラメキの経験も確かにあるのですが、一番、いろいろなアイディアが出てくるのは、なんといっても、講義中・講演中です。

「三上」ならぬ「壇上」であり、「三中」ならぬ「講演中」なのです。
特に、ホワイトボードに何かを書いているとき。本当にいろいろなことを思いつきます。
脳が受ける刺激が強く、それにより、脳が活性化しているからだ…としか説明できません。
とにかく、次々といろいろなアイディアが湧いてきます。「壇上」で「講演中」ですから、ひらめいたアイディアをなかなか書き留めにくいのですが、それでも、ちょこちょこっと付箋紙にキーワードだけでもメモする…くらいのことはしています。

今や、一般的にも、アイディア発生装置として、ホワイトボードは広く認識されています。360度ホワイトボード…という会議室を備えた会社に伺うと、それだけでわくわくしてまいります。

ところで。

私の場合、ビジネス上、最もホワイトボードが効果を発揮してくれるのは、講義・講演中ではなく、実は、商談中なのです。
商談中の相手先企業に伺い、会議・打ち合わせに参加したり、プレゼンテーションさせていただいたりする場合に、会議室を見渡し、ホワイトボードを見つけたら、頭の中に「!(エクスクラメーション・マーク)」が出現します。

「ちょっとホワイトボード、お借りしていいですか」

マーカーを手にとり、説明を加えながら、自らの企画を1枚の体系図として描き上げていきます。

「絵描き歌」でも歌うかのように、スムーズに、スムーズに、ブリッジをしっかりと掛けながら、聞き手の理解の速度とシンクロさせ、1枚の美しい企画体系図を仕上げていきます(もちろん、即興です)。
カラーマーカーが置かれていれば、もちろん、使います。
古い事例で恐縮ですが、

「できるかな」(NHK教育)のノッポさん
「満点パパ」(NHK総合)の故・三波伸介さん

がお手本です。先方の会議室において、ホワイトボードの使用許可がおりれば、他の道具はいりません。

パソコンの蓋を「パタン」と閉じてしまうのはもちろんですが、事前に印刷してきた企画書さえ先方に渡さずに持って帰ってきてしまうこともしばしばです。ホワイトボード上に完成した美しいチャート(企画体系図)をiPhoneで撮影し、

「メールでお送りしておきますね」

と告げ、その場で先方でお送りし、会議・プレゼンはおしまい。

「私どもからの提案は以上です。ご清聴ありがとうございました」

ここまでいけば、仕込みは上々。
後は「まな板の上の鯉」
「果報は寝て待て」とも申しますので、とにかく…心静かに結果を待ちます。
数日後。

「今回の件、御社にお願いいたします

という受注のメールが届きます。
この方法で、今まで商談が不成立だったことはほとんどありません(特に新規獲得の際はほぼ100%成立しています)。

閑話休題。
私がもし、「三銃士」の時代に生まれていたり、「西部劇」の時代に生まれていたらどうなるか。ちょっと思考実験をしてみましょう。

これらの時代に生まれていれば、痩せても枯れても男の子。好むと好まざるとにかかわらず、決闘に臨まなければならない場合もあるでしょう。

決闘の場で、相手に
「おい、貴様。武器を1つだけ選べ」

といわれたら、私は迷わず、

ホワイトボードを」

とリクエストいたします(笑)。
よりも、よりも、如意棒よりも、PowerPointよりも、戦闘機よりも、はたまた、三つのしもべモビルスーツ宇宙戦艦よりも…なんといっても私には

「ホワイトボード」

が一番頼りになるのです。

「ペンは剣よりも強し」

ならぬ、

「ホワイトボードはPowerPointよりも強し」

というわけです。

さてさて。
冗談はさておき(笑)。最後にちょっとだけ真面目な話を。

ホワイトボードに描いた情報は、もともと、常にデジカメに収める習慣のあった私ですが、記録した写真の活用法もどんどん変化しています。
ホワイトボードを巡る環境変化において、近年、最もありがたかったのは、Evernoteの登場とそのたゆまぬ進化です。
Evernote導入以来の2年間。私は、描いたホワイトボードは、ほぼすべて、Evernoteに保存しています。
その間にも、Evernoteは進化を続けていて、最近ではホワイトボード上の手書き文字認識してくれるまでになりました。
活字ではなく、手書き文字の認識…ですから、恐れ入ります。
もっとも、丁寧に書かなかった文字(いわゆるミミズ文字)、略字等については、今のところ認識されません。
まだまだ、認識率は低いのです。
それでも、

「ダメもと」

で、自分が過去に描いたホワイトボードの写真について、Evernoteの中をキーワード検索してみると、案外見つかってくれるものです。

今後、手書き文字の認識率が高まれば、これまた、仕事の能率アップが期待できます。10年後。
ホワイトボードを巡る環境は、どのように変化しているのでしょうか。
想像するだけでも、またまたわくわくしてまいります。