私が企業コンサルティングやマネジャー向け研修を行う際に、常に冒頭でお話しする概念の1つに「断続のマネジメント」があります。

日本人の経営者・マネジャーが好きな言葉は、普通は「継続」です。「断続」ではありません。

「継続は力なり」

は、多くの経営者・マネジャーに支持されている方針であり、理念です。
しかし、現実にはあることをずっと継続するのはとてもたいへんなことです。
マンネリとの戦いを避けて通ることができないからです。

いろいろな企業の階層別研修を何年か続けると、おもしろいことに気づきます。

新入社員・2年目社員向けの研修では、その研修が1日ものであれ、2日間の合宿研修であれ、ディスカッションや発表、ワークシートの中に、「マンネリ」という言葉を使う(話したり、書いたりする)方は1人もいません。業種・業界、企業の規模に関係なく、発現率は0%です。

ところが、5年目社員、10年目社員、中堅社員向けの研修を担当すると、90%以上の確率で、ディスカッションの議題や発表の内容、提出されたワークシートの記述の中に、「マンネリ」という言葉が登場します。これもまた、業種・業界、企業の規模に関係なく、共通しています。

後日、人事部のご担当や研修受講者の上司の方にこの事実をお話しすると、

「どうすれば、彼らの抱えるマンネリ問題を解決することができるでしょうか」

という質問をいただきます。

「社員全員の職歴開発計画(CDP;Career Development Program)を第一に考え、当該計画に基づくジョブ・ローテーションを定期的に実施するよう徹底すれば、解決しますよ。」

と、真顔で私がお答えすると

「それは無理です。うちではできません」

と皆さん、困惑されます。

もちろん、私の回答は冗談です(そのことはすぐにお伝えします)。
企業の戦略や全社的な動向を無視し、個人の職歴開発計画の遵守を目的とする経営など考えられないからです。手段と目的が置換するようなことがあってはいけません。

「マンネリを解決しようと考えるよりも、マンネリがあることを前提にマネジメントを考えるべきです」

というのが、本当の回答です。
風邪の予防は大切ですが、どんなに予防しても、誰でもいつかは風邪にはかかります。
風邪にかかったら、どうするか・・・を考えたほうが現実的だということです。

「マンネリに陥った社員には、どんなマネジメントが有効ですか」

と問われれば、これまた、真顔で、

「しばらく放っておくのが一番です。気持ちが乗らないなら、そのまま見守ってあげてください」

とお答えします。この回答は冗談ではありません。

何でもかんでも、「継続は力なり」とはいかないものです。
しばらく放置し、好き勝手やらせてみる。
別な部署の仕事に目移りするかもしれません。
仕事とは全然関係ないことばかりに興味を持つかもしれません。
それでもそのままにしておきましょう。
何日間とか、何週間とか、具体的に口でいうことはできませんが、たいていの「大人」の場合、いずれ、どこかで、気づくものです。

「やっぱり、この仕事をまじめにやるしかないんだな」

目の色が変わったら、タイミングを逃さず、マネジャーとして指示を出します。
目標を設定し、仮説を検証させてみる。矢継ぎ早にさまざまなことをやらせてみる。同時並行に複数の仕事を担当させてみる。ある程度、負荷をかけてもいいでしょう。

いったん止まってもまた走り出せるようなしくみを作ることが「断続のマネジメント」の本質です。
継続できなくても、復帰できる状態が作り出せれば、大きな問題にはなりません。
私はめったにパソコンの電源を切りません。ほとんどの場合、スタンバイかハイバネーション(休止状態)にして使っています。いったん画面は暗くなっても、すぐに元の状態に復帰できれば、問題なく仕事に戻ることができるからです。

断続のマネジメントは、社員の能力開発モチベーション維持の両面で効果があります。次回は、断続のマネジメントを用いた従業員の能力開発の具体的な方法について、考えてみましょう。