最近あまりビジネス書を読まなくなってしまったが、

『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』



『問いのデザイン: 創造的対話のファシリテーション』

の2冊は、大いに感銘を受けた良書であった。
この2冊は、それぞれ、先々月・先月の「経営・ビジネス名著を読む会」の課題図書であった。

出版されたのは、後者『問いのデザイン』が先であり、これをより平易に説明してくださったのが、前者『問いかけの作法』である。

出版されたのは後になるが、前者『問いかけの作法』のほうが手に取りやすい。非常にわかりやすい文章で、丁寧にファシリテーションのあり方について説明されている。

私は、これまでにも、ファシリテーションについて学ぶ機会は幾度かあったが、ここまでファシリテーションというスキルについて体系化された書籍は見たことがない。「目から鱗」の連続であった。

本書では、「問いかけ(質問)」がさまざまな局面で、ビジネス上の生産性に寄与することが繰り返し説かれている。この点、「問いかけ」の効果は、ファシリテーションに限定されるものではない。

私にも経験がある。
仕事で、何らかのテーマについてまとまったスライド資料を作って、それを使って話をすると、そのたびに質問を受け、結果、加筆改訂が必要になる。そのときは、面倒だなあ…と思っても、都度、この作業を繰り返していくと、そのスライド資料が、2〜3年で「別物」に変わっていく。
つまり、話す内容も数年で大きく変化し、「別物」になっていく。それだけ、聞き手からの質問(問いかけ)が、話者に対しての「刺激」になっているのである。

一方、質問をいただかないスライド資料の場合は、一見完成度が高いように感じるが、何年たっても「別物」には進化せず、気づいた頃には時代遅れの中身になってしまってしまい、恥ずかしくて使えなくなってしまうものである。

本書の中で秀逸だったのは、ファシリテーションのスキルを、「予告」「扇動」「共感」「余白」の4つに体系化している点である。これについては詳述しないので、是非、本書を読みながら、理解を深めていただきたい。

もう一つ本書ですばらしいとおもったのは、「おわりに」である。
本書の活用法について大変丁寧に書かれていた点である。「おわりに」は、単なるオマケのように書かれている本も多いのだが、本書の「おわりに」は価値がある。
個人知ではなく、組織内の集合知に高めるための方法が、「輪読法」を含め、複数示されていた点、この「おわりに」は「やっつけ仕事ではないな…」と感じた。


続いて、後者『問いのデザイン: 創造的対話のファシリテーション』についての感想。

こちらは、著者が渾身の力で書いている大著だが、内容はかなり専門的であり、初学者・初心者には難しい箇所も多いと感じた。難しい…というよりも、体感的に理解できない点が多いのではないかという印象である。
しかし、ファシリテーションについての体系的教科書としては、『問いかけの作法』以上に価値が高い。『問いかけの作法』から入って、更に興味のある方は本書に進むという流れが妥当だと思う。

ファシリテーターのコアスキルの中でも、優先的に身につけるべきスキル(訓練や経験で伸ばせるもの)についてはその学習法・教育法がより具体的に示されていればよりよかったのではないかとも思うが、そこはおそらく著者の「飯の種」であり、本格的に学びたい方は、著者主催のスクールの門戸を叩きなさい…ということなのだろう。


初心者向けの『問いのデザイン』、より専門的志向の強い『問いのデザイン』。
2冊とも、ファシリテーターにとって、「問いかけ」というものがいかに大切であるかを具体的に示してくれている良書である。
この考え方は、ファシリテーションに限定されることなく、コミュニケーション一般における原則としても通用するものではないだろうか。
内容的には、思ったほど重複は多くないので、2冊とも読んでいただいても、損はしないだろう。


 

出典:『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(安斎 勇樹 (著) ディスカヴァー・トゥエンティワン (2021/12/23))
『問いのデザイン: 創造的対話のファシリテーション』(安斎 勇樹 (著), 塩瀬 隆之 (著) 学芸出版社 (2020/6/4))





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