庵野秀明の「シン」シリーズを、アンゾフの製品・市場マトリックス(成長ベクトル)を使って、比較し、次回作『シン仮面ライダー』の方向性について予想してみたいと思います。

まず、マトリックスの縦軸と横軸ですが

● 縦軸:「市場」
標的となる市場です。アンゾフは「既存市場」と「新市場」で比較することを推奨しましたが、ここでは、「類似市場」と「非類似市場」で比較を試みます。
原作(庵野の「シンシリーズ」にはかならず原作が存在します)の標的顧客(お客さん)とシン・シリーズ上の標的顧客とを比較し、原作の顧客をそのまんま狙っている場合には「類似市場」に、どちらかというと原作のお客さんの存在を考えず、新しいお客さんを獲得にいっている場合には「非類似市場」として、分類します。

● 横軸:「作品」
アンゾフが「製品」とした軸ですが、ここではダイレクトに「作品」を軸として設定します(「原作に近い」か「原作からかけ離れているか」で考えます)。シン・シリーズの作品が、原作に比較的近い場合には「類似作品」、かけ離れている場合には「非類似作品」と分類します。

このように、市場の「類似・非類似」、作品の「類似・非類似」を組み合わせることで、作品を4つの象限に分類することができます。

では、各々の作品を分類し、プロットしてみましょう。

 


1.『シン・エヴァンゲリオン』
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『シン・エヴァンゲリオン』は、御存知の通り、TV版で未完似終わった作品を20年以上の時間をかけ、庵野さん自らが新解釈で描きなおした作品です。シンジくんはシンジくんの顔をしていますし、ミサトさんもミサトさんのままです(いろいろ設定は変わっていますが、声優さんたちもいっしょですし、顔もそのまんまです)。後述する「シン・ゴジラ」や「シン・ウルトラマン」と比べると、原作によく「類似」した作品であると考えることができると思います(類似作品)。

市場については、要するに、原作(TV版)がいつまでたっても完結しないので、気をもみ続けた、異常なまでに気長な昔からのなじみ客(笑)へのメッセージとしての意味がやはり強いでしょう。もちろん、原作自体から20年以上経過し、新しいファンもたくさんいるとは思いますが、ここは、他作品との相対的な比較でいえば、類似市場を狙ったものだとみなすことができましょう。

よって、『シン・エヴァンゲリオン』は、「類似市場・類似作品」(左上)に分類できます。


2.『シン・ゴジラ』
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さて、『シン・ゴジラ』はどうでしょうか? 本作の場合、第一作から始まる『ゴジラ』シリーズの基本路線は踏襲しているものの、造形や能力、描かれ方は、旧来のゴジラとは大きく異る形で描かれたと思います。形態を変えていく…などという発想は『モスラ』にはありましたが、『ゴジラ』シリーズにはなかった発想です。何より、人間側の描き方が大きく異なります。官僚や政治家をあんなかたちで描いた作品は他にはありません。間違いなく、非類似作品でしょう。

市場についても、子供の頃からの東宝ゴジラ・ファンがこぞって劇場に足を運んだという話はあまりききません。老若男女、「ちょっと話題だから行ってみるか」と訪れた方が多かったのではないでしょうか。同時期に公開された『君の名は』との比較も話題になりましたよね。というわけで、非類似市場を狙った作品であることは疑いありません。

よって、『シン・ゴジラ』は、「非類似市場・非類似作品」(右下)に分類できます。


3.『シン・ウルトラマン』=類似市場・非類似作品(右上)
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では、現在公開中の『シン・ウルトラマン』はどこにポジショニングできるでしょうか。本作には、たしかにウルトラマンは登場します。カラータイマーはついていませんが、見るからにウルトラマンです。
しかし、その性格はTV版(原作版)のウルトラマンとは随分違います。人間(地球人)が理解できず悩み、自分の故郷「光の星」(TV版では「M78星雲・光の国(ウルトラの星)」)の同胞たちとの軋轢に苦しむ…おもしろい描かれ方がされています。
「禍威獣」(TV版では「怪獣」)や「外星人」(TV版では「宇宙人」)の位置付けも全然違います。何よりも描かれている人間たちは、防衛チーム(TV版では「科特隊「)ではなく、防災庁(架空の省庁)のお役人(「禍特対」)であり、ちょっと、『シン・ゴジラ』を彷彿とさせるようなシーンも目立ちます。そういうわけで、非類似作品といってよいと思います。

市場については、若い、TV版を知らない方々も大勢映画館には行かれていると思いますが、TV版へのたくさんのオマージュが込められており、やはり昭和のTV版を愛した庵野さんと同世代の方々を狙った作品であることは間違いないと思います。というわけで、原作の類似市場を狙った作品と考えて良いでしょう。

よって、『シン・ウルトラマン』は、「類似市場・非類似作品」(右上)に分類できます。



このように、上記3作品は、当マトリックスの左上・右下・右上に各々分類できます。

と、なりますと、来年公開される『シン・仮面ライダー』は、まだ登場していない左下のポジション、つまり、「非類似市場・類似作品」を狙ってきたら、実におもしろいのではないでしょうか。バランスもよいですよね笑!!

というわけで、以下、本作『シン・仮面ライダー』に対する私の予想です。



4.『シン・仮面ライダー』
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現在、公開されている情報によれば、本作に登場する仮面ライダーのビジュアルは、TV版(ここではこれを原作とします。石ノ森章太郎さんの漫画版ではなく、TV版のほう)にかなり近いですね。
ショッカーがどう描かれるのかわかりませんが、作品としては、あの暗くて地味な昭和のTV版の感じを令和風に再現するのではないでしょうか。
必殺技はおそらく、「ライダーキック!」「ライダーパンチ!」のみ。まあ、このへんは、『シン・ウルトラマン』も似たようなものでした(スペシウム光線と八つ裂き光輪のみ)。
本郷猛と緑川ルリ子のみならず(この二人はすでにキャストが発表されています)、親父さん(立花藤兵衛さん)にあたる人間も登場するのではないか…とまで予想します。2号ライダー・一文字隼人も登場しますしね、というわけで、類似作品になるのではないでしょうか。

しかし… 庵野さんが何らかの味付けを加えることで、意外と、昭和ファンではなく、新しいファンを取りに来るのではないか??…とも思います。東映のことだから抜かりはないのではないでしょうか。
若い俳優さんたちが起用されるようですしねえ。
『エヴァ』のように、「類似作品・類似市場」に分類される作品ではおもしろくないと思うわけですよ。
思いっきり、昭和な感じの作品(類似作品)なのに、喝采するのは、昭和のおっちゃんたちではなく、現代の若者、平成ライダーで育った10代・20代…だったらおもしろいなあ…と感じております。


あ、というわけで、『シン・仮面ライダー』は、「非類似市場・類似作品」(左下)に来るのではないか??と予想させていただきます。

どうやってそれをやるのか??

そんなことは庵野さんに聞いてください!!
凡人の私にわかるわけないじゃあないですか! m(_ _)m

あくまでも、私の主観ですから、反論はご自由にお願いいたしますm(_ _)m
皆さんはどんなふうに予想されるでしょうか?(*^^*)