ところで、カウンセリングは、その活用の方向性によって大きく2つに分類されます。
それが、治療的カウンセリングと開発的カウンセリングです。
コンサルティングやマネジメントの世界で必要となるのは、主に後者です。
コンサルタントやマネジャーは開発的カウンセリングの視点を持って、さまざまなカウンセリング理論やカウンセリング手法に触れるべきなのでしょうね。
(1) 治療的カウンセリング 通常、クライアントは、相談助言を求めてくる場合に、職場の人間関係の相談(上司との関係、部下との接し方など)や自分の能力・適性の把握などの目的であれば、情報や考えるヒントを得られれば、おそらくは納得して帰っていきます。
しかし問題行動を抱えてどうにもならなくなっていたり、深い不安や葛藤にさいなまれている場合には、懸命の助言や説得をしたとしても、問題は解決しません。
このような場合には、情緒的レベルでの受容や共感をベースにした専門的な援助関係が継続的にもたれる必要があります。
どんな話題も禁止や制限をされず、温かい誠実さのあふれた態度で、受容してもらえる関係、そこでは「安心」して自分のありのままを見つめ、語ることができ、その体験を通して洞察を得、変容することができるわけです。
このように普通の人間関係とは全く違った治療的関係を構築することによって、相手の変容に役立とうとする関わり方を治療的カウンセリングといいます。
治療的カウンセリングには、高度な専門的知識が必要ですから、当然ながら、カウンセリングの専門家の領域です。
(2) 開発的カウンセリング 人間の発達過程において生活段階を中心に構成し、その各々について、社会的役割、発達課題、対処行動に分けて考えていこうという関わり方を開発的カウンセリングといいます。
開発的カウンセリングの始祖であるブラッカーは、カウンセリングは、ただ単に病理学的治療だけを目的とするものではなく、もっと大きな力を注いで、人間の発達を促進させることを目的とすべきであると主張しました。
ブラッカーの考え方は、生活段階次元、生活空間次元、生活様式次元を適切に診断しながら、それに即応して適切な介入を行なおうとするものでした。
ですから、学校カウンセリングや職場カウンセリングについて有効であるとされています。
ただ、日本では、その理論的、実践的研究がほとんどみられないようです。
私見ですが、このブラッカーの理論に代わって、わが国でこの役割を果たしたのが、ロジャーズの来談者中心療法(クライエント・センタード・アプローチ)ではないかと思います。