研修で知り合った若いビジネスマンの方から、ビジネス書をどう読んだらよいか、どう読むべきか、という質問をいただいた。
簡単に答えられるものではないが、
「何かを調べる」
「何かを学ぶ」
という目的も元であるならば、1つのテーマについて、数冊の異なる著者が書いた概説書を読むのがベストであると思う。
具体的方法は極めて簡単であり、
① 何らかの書評を頼りに、当該テーマについての概説書を数冊入手する
② 最も高い評価を得ている本から順番に読む
③ 2冊目からは、既読書と重複する内容は飛ばしながら読む
という方法である。
①の「何らかの書評」とは、最近では多くの場合、Amazonの書評を示すことが多いが、尊敬するコンサル仲間や識者の推薦から選ぶことも多い。
②の時点で、1冊目に読んだ本の目次をWord等に写しておけば、なおよい。
③の作業中、1冊目の書籍と異なる視点や内容、面白い比喩や事例、読みやすい図表等が出てきた場合に、そのタイトルや項目見出しを対応ページとともに、写しておいた1冊目の本の目次に書き加えていくことができるからである。
こうしていくと、当該分野についての、複数の概説書を横断する自分だけの体系図ができあがっていく。
体系の「柱」は1冊目の書籍に準拠していながら、2冊目以降の書籍の関連ページが、「枝葉」となってぶら下がった一覧表型の体系図である。
場合によっては、これを元に、自分だけのテーマ別読書ノートにまで発展させることもできる。
私はマインドマップ等の特別なアプリを使うことはなく、Wordのスタイル機能のみを用いて、20年以上一貫して、読書ノートを作っている。
過去に作った読書ノートは、全て同じ形式のWord文書なので、常に結合・分割することができる。
「ギリシャ史」のノートと「ローマ史」のノートを結合すれば、瞬時に、「ギリシャ・ローマ史ノート」ができあがる。
「近代史」のノートから「文化史」の部分を取り出し、「現代史」のノートから「文化史」の部分を取り出し、合体させれば、これまた瞬時に「近現代文化史」のノートができあがる。
表紙の文字だけは書き換えなければならないが、目次も索引も瞬時に更新される。
笑ってしまうくらい簡単にこれができるので、もはや、これ以外の方法で読書ノートを作る気にはなれなくなった。Word最高の機能であろう。
この方法には、留意点もある。
1冊目に読んだ書籍が期待外れの場合、その役割は、2冊目、3冊目が担うことになる。ずれ込めばずれ込むほど、優先順位のつけ方がまずかったことになる。
体系図として採用するに値する書籍に出会わないと、そこから次の段階に進めないのである。
どの本を最初に読むかは、慎重に選ばなければならない。
運良く、1冊目でベストなチョイスができた場合、2冊目以降を読むスピードは加速度的にアップしていく。
既に知っている内容は飛ばすことができるし、慣れもあり、同じ精読であっても所要時間はぐっと短くなるからである。
1冊目にかかった時間を1とすると、2冊目にかかる時間は1/2、3冊目にかかる時間は1/3くらいという体感速度だろうか。
だんだん読むのが楽になって行くのがわかる。
同じことを、講義や講演を利用してなそうとすると、
① 膨大な時間がかかる
② 膨大な金がかかる
③ 自分が既に知っていることまで再度学ぶ無駄が生じる
といったデメリットが生じる。
当該分野の中古本が1冊1,000円で手に入るなら、5冊で5,000円。
一般的な学費と比較した場合、これは格安である。
1冊目を読むのに10時間かかるとすれば(目次を写す時間を含む)、5冊で、
10×(1+1/2+1/3+1/4+1/5)=23.8時間
1日8時間学ぶとすれば、およそわずか3日間で、当該分野の基本情報をインプットできることになる。
講義や講演の場合、わかりやすく噛み砕いて話しをしてくれる代償として、冗長であり、単位時間あたりの情報密度はどうしても低くなる(講義や講演の良さとは、そのこと自体を学ぶ動機付けや勇気付け、興味付けにあり、そのために利用するのがベストであろう)。
また、家庭教師でも雇わない限り、受講者の都合にぴったり合う時間で、しかも、まとめて学ぶことはできないから、同じことをするのに、1ヶ月以上かかることもザラである。
上記の方法における最大の課題は、
「未知の当該テーマにおいて、良い本を選ぶこと」
に尽きる。
もっとも、インターネットの発達により、書評の精度が高くなった最近では、失敗の心配は薄れつつある。
この方法で、今年学んだテーマは、
① 行動経済学
② メタ認知
③ 英文法
の3つの分野であった。
一昨年は、
① 人工知能と機械学習
② シェアリング・エコノミー
であっただろうか。
さて、来年は何を選ぼうか。
目下、思案中である。