7.護送船団行政への反対者
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日本という国が世界と向き合っていくために、彼は、儒教的な考え方と武士道の精神が必要であると考えました。
武士道を実業道として進化させること、これが彼の大きなテーマだったのでしょうね。
一橋大学、東京経済大学といった経済学・経営学系に強みを持つ大学の設立に深く関与したのも、このためだったと思います。
労使協調など社会主義的な考え方をすでに持っていた渋沢ですが、一方で、本流の資本主義については、
「国内産業の奨励はもちろん努力しなければならないが、そこで不自然かつ不相応な奨励をしてしまえば、結局は無理が出てしまう(親切なやり方がかえって不親切な結果をもたらし、保護したつもりが干渉や束縛になる)」
という立場を貫いています。
護送船団行政反対!
彼は、御上による民間への介入をよしとはしませんでした。
前述したとおり、行き過ぎた悪い競争はダメだが、そうでないなら、官は民に介入するな…という意見の持ち主だったようですね。
さてさて。
長々と述べてまいりましたが、本書を読みながら、私が感じた渋沢の一面を列挙するとこんな感じです…
1.フロー理論の先駆者
2.富国強兵の推奨者
3.自己実現欲求の提唱者
4.実践主義者
5.中庸主義者
6.商業道徳の教育者
7.労使協調主義者(修正主義者)
8.「良い競争」の推奨者
9.ソーシャル・マーケティングの先駆者
10.護送船団行政の反対者
ともすると、500以上の会社の設立に関与した「日本資本主義の父」としての印象だけが伝えられる渋沢ですが、渋沢のすばらしさは、その実績のみだけで語られるべきではないように思えます。
彼の儒教観・武士道観は、今見ても目を見張る斬新さがあります(ここでは述べませんでしたが、ダイバーシティ・マネジメントについても見識を持っていた方です)。
機会があれば、渋沢研究…また、続けてみたいと思います。