3.渋沢流「趣味」とフロー理論
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さてさて。
『論語と算盤』の中では、「趣味」の重要性が強調されています。
私も多趣味な人間なので、「お! 渋沢先生も趣味が多かったのだな」などと思ってしまったのですが、これは早合点!
渋沢のいう趣味とは、「仕事を楽しむ」ということです。楽しむというよりは「没頭する」「熱中する」といったほうがいいと思います。
「どんな仕事でも、熱中・没頭すれば楽しいだろう」
というのが彼の主張。
私としては苦笑いです。
孔子も「理解することは、愛好することの深さに及ばない。愛好することは、楽しむ境地の深さに及ばない」といっていますが、これを仕事にも取り入れていこうということです。
では、どうすれば、つまらない小さな仕事でも楽しめるようになるか?
渋沢の意見はこうです。
「どんな仕事であっても、それが国家(社会)に貢献するものであれば、めちゃめちゃ楽しくなるだろう」
モチベーション理論の根本を「世の中のいろいろな人達(国家・社会)が喜んでくれるなら…」という一点に置いているのです。
ですから。
私利私欲に走ってはならない…わけですよね。
これでは仕事を「趣味」(渋沢のいう趣味です)にすることはできないでしょう…ということです。
社会に役立つ仕事をすることこそが趣味の極致であり、また、唯一のモチベーションの源泉だという考え方です。
現代の行動科学者…ミハイ・チクセントミハイの理論に「フロー理論」というのがあります。彼は、熱中や没頭のことを「フロー」と名付けました。
彼の理論の骨子は次のとおりです。
① 頻繁にフローを感じる従業員は、適職感が高まる
② 適職感が高まる従業員は、離職率が低下する
③ それゆえ、経営者・管理者は従業員に頻繁にフローを感じるようなマネジメントをすることが大切である
「熱中や没頭を繰り返し経験する奴は会社をやめないよ」ということです。
渋沢の哲学とミハイの理論。
私にはとても良く似た考え方に思えます。