数多くの手帳の指南書において肯定されているノウハウの1つに「書き込む情報は色分けせよ」というものがあります。
「ビジネスの予定とプライベートの予定は色分けせよ」
「重要な案件は目立つ色で記入せよ」
「予定はシャープペンで、確定したスケジュールはペンで記入せよ」
私が、社会人1年生であれば、「なるほど」と思うかもしれません。しかし、実際に、色分けをしようとすると、たいへんなことになります。
「ビジネスの予定とプライベートの予定は色分けせよ」
「重要な案件は目立つ色で記入せよ」
という2つのルールを守ろうとすれば、
ビジネス:青
プライベート:黒
ビジネスにおける重要案件:赤
プライベートにおける重要案件:…
すでにこの時点で、三色ボールペンでは足りなくなります。
ペンケースを持ち、4色以上のペンを使えばいいではないか…とおっしゃる方もいらっしゃると思いますが、そうなると、常に、手帳とペンケースを併せて持ち歩かなければならないということになります。
几帳面な方はそれも可能でしょうが、あらゆる側面でさっと記入できるのが紙の手帳の良さだ(電子手帳に対する大きなプライオリティだ)と主張される方が多い昨今、常に、ペンケースを持たなければならない状況を前提とした使い方は、スタンダードな手法とはいえません。
「紙の手帳は、電子手帳に比べて、機動性が高い。筆記用具は選ばず、常に、自分の一番近いところにある筆記用具を用いてとにかく文字化し、記録に残すべきである。ただし、余裕のある時、重要な予定などについては、目立つ色でマーキングするなどし、意識付けすべきである」
本来は、上記のような指南がされるべきです。
電子カレンダーにおいては、そもそも、ビジネスに関するカレンダーとプライベートに関するカレンダーは別々な色で表示されます。筆者は、スケジュール管理については、Googleカレンダーを使っています。ビジネス・アカウントでビジネス用のカレンダーを記録し、プレイベート・アカウントでプライベートな予定を書き込んでいます。ビジネスの予定は赤で、プライベートな予定は青で、常に表示されますから、一目瞭然。とても便利です。何の苦労もしていません。
しかし、もし、私が紙の手帳でスケジュール管理をするのではあれば、ペンの色は原則一色…しかし、場合によっては、手元に赤ペンしかなければ、赤で、青ペンしかなければ、青で、予定は記入します。備忘録に何か書く場合も、ペンの色などきにはしていられません。忘れる前に、とにかく何色でもかまわないから書き込むことを優先します。
現在、丁寧に色分けして手帳に記入されている方もいらっしゃるでしょうし、その方法を否定するわけではないのですが、紙の手帳の機動性を考えると、「色分けせよ」は、スタンダードな方法ではありません。
色分け以外の方法で、情報を分類したり、ランク分けしたりする方法を提案している著者もいらっしゃいます。
① 記号化
② アンダーラインや囲い込み
色分けは確かに見やすいという効果はありますが、複数のペンを常時持ち歩かなければならなくなり、紙の手帳の本来の存在意義である機動性が損なわれるという問題点がありました。
この点、①②は、紙の手帳の機動性は損なうことなく、誰でも簡単に、情報の分類やランク分けを行うことができます。
①の「記号化」は、「重要」な案件だったら「S」、「まあまあ重要」な案件だったら「A」、「当面重要でない案件だったら「B」と、丸付文字で記入しておくという方法です。
②の「アンダーラインや囲い込み」は、重要な案件の下に二重線を引いたり、筆圧を高めにして、案件名を囲い込んだり…というこれまた誰もができる方法です。色分けができなくても、自らへの注意喚起を促すことは十分可能な方法です。ただし、地味で当たり前のノウハウなので、手帳の指南書や、ビジネス雑誌の手帳特集記事(特に、カラーページ)では採用されないのではないでしょうか。