1. 「小規模企業応援」白書としての2014年版「中小企業白書」
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(1) 2014年版の特徴
① 本年度の中小企業白書は、小規模事業者に焦点を当て、その実態や課題を明らかにしているのが特徴である(テーマは「小規模事業者への応援歌」)
② 白書では、必ずしも企業規模を拡大したり、世界に羽ばたいたりすることを望んでいる事業者ばかりではないと捉えている
③ 限られた顧客相手に安定した商いを続けることを志向する事業者や地域住民にとってなくてはならないサービスを提供することに価値を見いだす事業者が存在する現実にも目を配り、「小規模事業者の事業を通じた地域課題の解決は社会価値を創造する」と強調している(ポーターの提唱するCSVの重視)
(2) 実証に基づく課題の明確化・施策の整備
① 白書は、データや分析を用いて、特に小規模事業者の実態や課題を実証的に明らかにしつつ、新たな施策を盛り込んでいる
② 白書では、アンケート調査(小規模事業者18,000社にアンケートを実施)に基づき、初めて小規模事業者の構造を分析し、事業活動の範囲や課題を明らかにするとともに、起業・創業、事業承継・廃業、海外展開、新しい潮流のテーマを掲げて分析している
③ 小規模事業者の意義、固有の課題を正面から分析し、小規模事業者を中心に据えたよりきめ細かな政策体系を構築する必要があったためである
(3) 小規模企業の現状
① 全国385万の中小企業の9割を占める小規模事業者は、地域の経済や雇用を支える重要な存在
② 小規模企業(製造業で従業員20人以下、商業・サービス業で同5人以下)は、人口減少や少子高齢化、地域経済の疲弊等、構造的な変化による影響を強く受けている
③ 小規模企業の数は2009年の366万社から12年には334万社へと約30万社減少(中小企業全体では35万社減少)
④ 自営業者の約3割は65歳以上と高齢化が進んでいる
(4) 中小企業施策の一大転換
① 従来の中小企業基本法は、成長発展する中小企業(実質的に385万社の中小企業の上位約1~2割)を支援するというコンセプト(「成長発展」)だった
② しかし、経営者の高齢化、廃業の増加、企業数の伸び悩みにともない、直近の3年間で中小企業が35万社も減少するなか、小規模事業を底上げする施策は今後の日本の産業競争力の維持・強化のためには欠かせない
③ 2014年6月に成立した小規模企業振興基本法では、小規模事業者(全体の87%を占める)にきめ細かく支援施策を届けるため、国と地方自治体、中小企業支援機関などが互いに連携していくことが謳われている
④ これまでの中小企業政策の基本理念だった「成長発展」のみならず、技術やノウハウの向上、安定的な雇用の維持に貢献する「事業の持続的発展」も重視した
⑤ 白書では維持・充実を目指す小規模事業者の安定成長に向けた取り組み事例、支援する施策の紹介に多くの紙面を割いた
2. 小規模事業者の類型化とコネクターハブ企業の発見
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(1) 地域経済構造分析システム
① 狙い
a. 民間調査会社(ITベンチャーのメディアラグが落札)が保有する膨大な企業間取引データを活用し、地域経済における産業構造の実態を空間的かつ時系列的に把握し、国・地方自治体による地域産業政策や地域活性化政策の立案を支援する
b. これは、地域内で多くの商品や部品を仕入れ、地域外に販売してキャッシュを稼ぐ企業を発見したいという意欲の具体化である
② 調査の概要
a. 全国の中小企業約70万社の信用情報を基にする
b. 「約1,700人の調査員が実際に企業へ足を運び、仕入先と納入先の聞き取り調査
c. 取引関係のある企業同士を地図上で結んでいく
d. 取引が集中するコネクターハブ企業が浮かび上がる(「売上高500億円未満」「域外への販売額が域内からの仕入額の1.2倍以上」などの4条件で、コネクターハブ企業を抽出したところ、全国では、3,621社がその条件に該当した)
③ 分析結果の概要
a. 小規模事業者の類型化
• 地域需要志向型(地域型)…8割以上を地域内から仕入れ、地域内に販売し、地域の資金循環に貢献している企業
• 広域需要志向型(広域型)…約6割を地域内から仕入れ、地域外に販売するため、「外貨」を獲得してくる貴重な存在
b. コネクターハブ企業の発見…地域の中で取引が集中し、域外から資金を獲得してくる広域需要型企業をコネクターハブ企業と位置付けた
c. 地域活性化のポイント…広域型と地域型がバランスよく存在することが地域経済活性化につながることが判明
④ 分析結果の活用
a. どの企業を支援すれば波及効果が見込めるのか、行政の担当者が把握しやすくなる
b. 中小企業庁はクラウド型のシステムを構築し、2015年から各地の経済産業局や都道府県、市区町村の担当者に限って個別の企業名を公開する(一般には非公開とするのは、個別企業同士の取引関係を金融機関などが閲覧すると、無用な軋轢を生みかねないからである)
c. 自治体における中小企業支援策の縦割状態を打破し、地域間連携を強める契機となる
(2) 小規模事業者の類型化
① 白書は小規模事業者を「十把ひとからげ」にせず、成長志向や事業段階に応じて類型化することを試みている
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H26/h26/html/b3_1_2_3.html
② 小規模事業者は、同一市区町村内または同一都道府県内の需要をターゲットとする地域需要指向型(地域型)」(約8割)と全国または世界の需要をターゲットとする広域需要指向型(広域型)」(約2割)の2つに類型化できる
③ さらにそれぞれを、会社の規模の拡大を目指す「成長型」(約2割)と会社の規模は現状を維持したままで持続的発展を目指す「維持・充実型」(約8割)という2つの類型化も行っている
(3) 分類に基づく支援スタイル
① 「顔の見える」小規模事業者(地域-維持・充実型)には、大企業が参入できない「ニッチな需要のさらなる掘り起こし」を後押しする
② 国内外に飛躍する広域型の小規模事業者はインターネット活用による販路開拓や大企業とのマッチングを通じ国内外の需要開拓に結びつくような支援の意義を指摘
(4) コネクターハブ企業
① 地域内外の業者と取引し、双方をつなげる役割を担う企業
② 地元の企業から調達した原材料を加工し、地域外へ販売するイメージ
③ 東大・坂田一郎教授(イノベーション政策論)が提唱し、東日本大震災をきっかけに注目を集めた概念
④ 経済産業省の地域産業構造分析システムは、多くの企業間取引のデータを活用し、コネクターハブ企業を抽出できるしくみとして期待されている
(5) コネクターハブ型の企業事例
① ニッコー(千葉県浦安市)
http://www.pipe-nikko.co.jp/feature/othert.html
a. 炭素鋼鋼管やステンレス鋼管の流通大手で、伊藤忠丸紅鉄鋼の100%子会社
b. 全国80社以上の鋼管加工業者と連携した取り組みを始めている
c. ニッコーが中心となって依頼を一括して引き受け、各社が得意とする加工技術などを組み合わせて新たな受注を目指す
d. 窓口を一元化し、建設機械や工場の配管などに使われる鋼管の加工依頼に応じる
e. 参加企業の特性に合わせて仕事を振り分け、納期の管理、物流の手配まで一貫した供給体制を整えている
② ジャパンエアロネットワーク(JAN、大阪市)
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2014/pdf/honbun01_03_03.pdf
a. 中小企業約30社が2013年末、住友精密工業(兵庫県尼崎市)から、ホンダの小型旅客機「ホンダジェット」向けの約100種類の部品を受注
b. 特徴
• 部品の一貫生産
• ジャスト・イン・タイム納入
③ 共同受注組織「磨き屋シンジケート」(新潟県燕市)
http://www.migaki.com
a. 研磨業者でつくる共同受注組織
b. 現在、20業者が加盟し、高い研磨技術を駆使して製造した金属製品の情報をインターネットなどで発信
c. シンジケートに加盟する小林研業は、従業員7人の小さな工場だが、アップルやソニーなどから注文がある
3. 中小企業の課題
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(1) 需要・販路開拓(最大の課題)
① 人口減少や過疎化、高齢化などによる需要減少、ニーズの変化にどう対応していくかが課題になってくる
② 地域に古くから根ざす「顔の見える」小規模事業者(地域維持・充実型)は、ニッチな需要のさらなる掘り起こしが必要になる
③ 広域型は、ネット販売などIT技術を駆使した販路開拓や、自治体などが主催する大・中堅企業とのマッチングなどを活用し、広域な需要開拓を目指すべきである
(2) 起業家の創出(重要課題)
① 起業を巡る現状…起業・創業希望者も激減し、開業率は欧米に比較して半分以下で低迷している
a. 近年、起業家数は大きく変化していないものの、この15年で「起業希望者」は167万人(1997年)から84万人へと半減している
b. 全体に占める新規開業した企業の割合を示す開業率は、2012年が4.6%(フランスの10%台後半、英国の10%台前半等の欧米と比べて低水準にとどまっている)
c. 開業率が低い理由(起業に関心のある人に聞いた調査の結果)
• 「起業した場合に生活が不安定になることに不安を感じる」…36.9%
• 「個人保証の問題など起業に失敗した際のセーフティーネットが整備されていない」…33.8%
• 「起業に要する金銭的コストが高い」…30.8%
d. 起業を検討し始めた段階で、配偶者から応援された人は15.0%、両親からは11.4%にとどまる(家族の支えが十分ではないことが明らかになった)
e. 2012年に起業した人のうち50歳以上が約47%を占める(60歳以上の起業家が増える一方、40歳未満は先細り傾向にある)
f. 起業したい人の内訳をみると、女性の割合が33.4%と1979年以降で最も高くなった
g. 実際に起業に踏み切った人は毎年20万~30万人で一貫して変化がなく、起業を考えながらも早くあきらめている層が多い
h. 世界銀行の国際調査(2014年)によると、手続きの数やコストなど起業のしやすさで日本は120位にとどまる(米国の20位、英国の28位、韓国の34位)といった主要国と比べて、大きく遅れている)
② ベンチャーブームの再到来(明るい話題)
a. 15年ほど前のネットバブル以来のベンチャーブームが再び到来している
b. 2013年度の日本政策金融公庫の創業者(創業前および創業後1年以内の経営者)向け融資実績は1,821億円(リーマン・ショック前の7年前の水準にまで持ち直している)
③ 起業を巡る3つの課題…政府は成長戦略で国内の開業率を10%台まで引き上げる目標を掲げているが、次のような3つの課題が存在する
a. 起業意識を喚起する教育…義務教育から起業家に接したり、授業で起業の社会的価値を教えたり、職業選択における有力かつ具体的な選択肢として提示したりすることも考えるべきである
b. 起業後の生活・収入の安定化
• 起業意識を実質的に支えるものとして、セーフティーネットの構築・充実も求められる
• 失業保険の扱いを課題とし、さらに兼業・副業をより促進していくことが必要だとしている
• フランスでは失業者が起業しても当面の間は失業手当を受け続けられたり、起業後の一定期間は地方税や付加価値税、社会保障費が無料になったりするといった制度もある
c. 起業に伴うコストや手続きの低減
④ 起業家創出のための取り組みの事例
a. 九州IPO挑戦隊(福岡県福岡市中央区)
http://www.fse.or.jp/stock/ipo.php
• 中小企業基盤整備機構九州本部が組織
• 新規株式公開(IPO)を目指す36社に専門家を派遣
• 創業支援は福岡市が特に力を入れている分野
• 同市は、ベンチャー創業を後押しする雇用特区に選ばれ、取り組みを活発化している
b. うきはあきない実践塾(福岡県うきは市)
http://ukihatea.yoka-yoka.jp/tagうきはあきない実践塾
• 2013年11月から2014年3月にかけて、中小企業基盤整備機構九州本部と、うきは市・うきは市商工会と共同で実施
• 受講した15人のうち8人が6次産業化を目指す農業者だった
c. 美波町の創業者支援(徳島県美波町)
http://matome.naver.jp/odai/2139227230119426901
• 起業支援金として100万円提供する制度、老人ホームを改修した起業支援施設といった制度のみならず、さまざまな観点から地域ぐるみで起業家をフォローする体制が整っている
• 事業を立ち上げたばかりで資金繰りが苦しい起業家たちに、隣近所がおかずをお裾分けする(文字通り「食べるのに困らない」しくみ)
• 地元の飲み会に誘い、取れたての魚を焼きながら、起業家の事業の悩みなどを聞く
• 自営であることを理由に、何をするにも保証人を要求されるようなこともない
⑤ 創業教育の実践事例…白書では、学生が起業家と接する機会を増やして関心を高めるとともに、中学や高校でも企業での実務経験や金融、マーケティングなど起業に役立つ教育をする必要があると指摘
a. トーマツによる高校生向け起業家教育…慶應義塾高校での開催等
http://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/group-csr/csr20140623.html
b. 甲南大学の講座「現役経営者と学ぶ 中小企業の世代交代と事業存続」…大阪産業創造館と共同開催(関西ではこの他にもさまざまな大学が創業支援講座を開催)
http://www.sansokan.jp/release/html/120913.html
⑥ シルバー起業の先駆的事例:田中久重(東芝の創始者)
a. 明治8年 「万般の機械考案の依頼に応ず」 銀座に看板を掲げた
b. 計器や羅針盤、糸取り機などを次々に製作、東芝の源流になるこの小工場を興した(75歳での創業)
(3) 事業承継の問題
① 事業承継を巡る現状
a. 事業を引き継ぐ準備ができていないとする経営者は60歳代で6割、70歳代で5割に上る
b. 経営者の高齢化による事業継承・廃棄もクローズアップされている
c. 近年は親族以外の第三者へ継承する割合が増加しているが、その育成には「3年以上必要」と考えている経営者が多い(後継者の育成に掛かる期間では「3年以上掛かる」が中規模企業で9割超、小規模企業では8割超に達した)
② 「第三者承継」の支援策
a. 白書では「早い段階から事業承継の準備に着手してもらうよう、きめ細やかな情報提供や意識付けが必要」と指摘
b. 外部にまで後継者を求める中小企業・小規模事業者に配慮し、高い事業意欲のある人材を確保して、後継者ニーズのある企業とマッチングさせるとともに、長期的にフォローアップしていく
(後継者人材バンク http://www.nikkan.co.jp/news/nkx1520140716abbd.html
http://toyokeizai.net/articles/-/50498 )
(4) 廃業
① 廃業を巡る現状
a. 2013年の倒産件数は10,855件、休廃業・解散企業は28,943件だった(中小企業の休廃業・解散件数は2004年の約16,800件から2013年は約29,000件に増加)
b. 廃業を決断した理由
• 「経営者の高齢化や健康問題」…48.3%
• 「事業の先行きに対する不安」…12.5%
• 「主要販売先との取引終了」…7.8%
② 廃業対策
a. 基本的な情報提供や匿名性に配慮した専門家支援
b. 小規模企業共済制度の更なる普及・拡大
(5) 海外展開(グローバル展開)
① 海外展開を巡る現状
a. 中小の製造業のうち、輸出を手がける会社は、全体の約3%にとどまる
b. 中小企業製造業で直接輸出を行っているのは2011年に6,336社と2009年から399社増え、小規模企業製造業でも、1,916社と236社増えた
c. 現在輸出を行っていない企業のうち、輸出を準備・検討、関心を持っているのは中規模企業で約3割、小規模企業で約4割だった
d. 白書では、小規模企業の方が内需減少などによる将来性への危機感が強く、「海外市場への関心がより高い」と分析している
e. 「販売先の確保」と「信頼できる提携先・アドバイザーの確保」を最大の課題に挙げている
② 支援の方向性
a. 輸出を成功させるためには販売先の確保はもちろんだが、提携先・アドバイザーの確保も重要となる
b. ジェトロなど公的な海外展開支援機関を利用したことのある企業のアンケートによると、その評価は必ずしも高いとはいえない
c. 中小企業・小規模事業者を現地でサポートするため、官民の支援機関でネットワークを構築し、法務・会計・労務、資金調達、人材確保、パートナー発掘などを支援するプラットホームの強化・拡充を図ることとしている
d. 民間の海外展開支援企業との連携も進める(【例】東京・目黒のResorz(リソーズ)は、海外展開を目指す企業とそれをサポートする海外展開支援企業をマッチングするウェブプラットホーム『Digima~出島~』を運営し、成果を上げている
http://www.resorz.co.jp/work/
http://www.digima-japan.com
③ 海外展開先の変化
a. 海外展開先は中国が多数を占めるが、最近は日中関係の悪化や不透明な法制度を理由に事業リスクが懸念されている。
b. ベトナム、インドネシア、ミャンマーといった中国以外への輸出や、サービス業など非製造業の進出を支援することが課題となっている
c. 日本からの対外直接投資額(2013年実績)の推移
• ASEAN10ヵ国向けが前年比2.2倍の236億ドル(約2兆4,000億円)と急増する一方、中国向けは32.5%減の91億ドル(約9,000億円)に落ち込んだ
• 2012年は中国(134億ドル)がASEAN(106億ドル)を上回っていたが、日本企業が中国よりもASEANに進出する動きを加速させている
④ 海外進出の先行事例
a. 関西村(ベトナム)
http://www.kansai.meti.go.jp/E_Kansai/pdf/E_KANSAI201311.pdf
• 南部ドンナイ省のロンドウック工業団地内には日系大手企業の巨大工場が並ぶ
• その一角に、賃貸工場が集まる「カンサイ・サポーティング・インダストリー・コンプレックス」を設立
• 東大阪や八尾のようなニッチ技術の集積地「関西村」を作るため、中小企業や関西系など10以上の経済団体が協力し2013年に開業した
• 日系大手企業の下請業務に頼らずに、アジアで販路開拓を目指す
b. オオタテクノパーク(タイ)
http://www.pio-ota.jp/torihiki/thai.html
• 大田区が地域一丸でタイに進出
• アマタナコン工業団地にあるオオタテクノパークは現地の団地運営企業が2006年に開設した
• 増築を繰り返し、計8千㎡の賃貸工場用地を自動車向け部品製造など12社で埋め尽くす
• これまで撤退した企業はなく、今も空きがない盛況ぶり
(6) 情報化の遅れ
① 情報化を巡る現状
a. 個人向けEC市場が拡大傾向にあるなか、小規模事業者はこの機会を十分に生かせていない
b. 半数以上はホームページを持っておらず、自社サイトでの製品販売・予約受付は1割程度、ネットショップなどへの出展・出品は1割を切っているという
② 「はじめてWEBプロジェクト」
http://hajimeteweb.jp
a. KDDIとプロジェクトニッポン、KDDIウェブコミュニケーションズが支援を始める(パートナー企業として日本政策金融公庫が参画する)
b. 専門知識がなくてもホームページ(HP)を制作できるサービスを1年間無料で提供
c. さらにHP制作・運用ノウハウや経営に役立つ情報を提供するウェブサイトも設ける
d. 日本公庫は自社の顧客に同サービスを紹介するほか、KDDIなどと連携してHP活用セミナーを全国で開催する
4. 具体的な支援策の概要
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(1) 行政側の支援方法の見直し
国、都道府県、市区町村が縦割りになっており、連携が不十分なため、制度が重複したり役割分担ができてなかったりという現状を修正しなければならない。
(2) 中小企業基盤整備機構の変革
① 設立後10年で大きな転機にある
② 初の民間出身理事長として高田坦史(ひろし)(トヨタの元専務)が就任
③ 中小機構が「直接支援」を中心とする自前主義から脱却するのは効率的な支援実施が狙いだが、同時に中小企業支援のハブ的存在としての役割が期待される
④ 直接支援と間接支援の比重を見直し、トータルでの成果を高めていく方針に転換
a. 直接支援…専門家を派遣して各社の実情にきめ細かく対応する従来からあるハンズオン支援
b. 間接支援…商工会議所や商工会など各地支援機関との連携強化が新たな間接支援(より多くの企業に間接的な支援のパイプを通すことを目指す)
⑤ 「支援機関はサービス業」の高田理事長の掲げる理念を発揮
(3) 施策マップの開発
① 施策の普及率の低さ…国や自治体の支援制度は、経営者の6割超が「知らない」「関心がない」と答え、また「国、都道府県、市町村の連携の実態がよく分からない」と回答した者が9割近くを占めた
② 施策マップの開発・公開
a. 国、都道府県、市町村の施策を、「ぐるなび」のように目的や分野、必要金額などに応じて検索でき、かつ「価格ドットコム」のように比較・一覧できるシステム「施策マップ」を開発
b. 中小企業・小規模事業者応援サイト「ミラサポ」に公開
https://www.mirasapo.jp/subsidy/subsidy_list.html
c. 「施策マップ」を使えば、すべての施策が整理されることで、最適な補助金・助成金制度などが簡単に選択できるようになる
(4) 認定支援機関
① 支援のあり方としては認定支援機関(経営革新等支援機関)の役割も重要である
② 認定支援機関の約7割を占める税理士などの税・法務関係の支援機関が、他の支援機関と十分な連携がとれていない
③ 地域金融機関が税理士を巻き込んで、実効性の高い経営改善計画策定とモニタリングを実現している例も生まれてきている
(5) よろず支援拠点
① 国が小規模、零細企業にいたる全国津々浦々の385万社に施策を行き渡らせるため、この6月、47都道府県に経営相談所「よろず支援拠点」を開設
② 中小機構がバックアップする(国の施策の軸足が小規模事業者に置かれるなか、中小機構による「直接支援」にはおのずと限界がある)
③ 一般公募で採用された「コーディネーター」が運営を担い、それぞれが地域に持つ人脈を生かし、専門家や既存の支援機関と連携しながら中小企業の多様な経営課題に応えるもので、企業にとってはここを訪れれば、必要な情報が入手できる「ワンストップサービス」を目指す
④ 既存の支援機関との連携のモデルケースとなる(国の中小企業向け補助金が、自治体の裁量で使える交付金化されたため気迫になっていた、中小企業と各自治体との連携強化を目指す)
(6) 後継者人材バンク
① 後継者不足に悩む中小企業を支援するため、政府が起業家らを斡旋する「後継者人材バンク」を新設する
http://www.msn.com/ja-jp/news/national/後継者人材バンクを開設へ-中小企業の後継者確保を後押し/ar-BB74IOZ
② 事前に登録した起業家らを、後継者を求める中小企業に仲介し、円滑な事業承継や新事業への転換を進めてもらう狙い
③ 全国14ヶ所に設置した「事業引き継ぎ支援センター」で2014年度中にサービスを始め、将来的には全都道府県で展開する
④ 各都道府県の地銀や商工会議所が開く起業セミナーで、参加者などに人材バンクへの登録を呼びかける
⑤ 後継者を求める中小企業経営者の要望と、登録者の意向が一致した場合は両者を仲介し、条件などを協議してもらう
(7) NEDOの起業家支援(スタートアップイノベーター募集)
http://www.nedo.go.jp/koubo/CA1_100053.html
① 一定の技術や事業構想を持って研究開発型ベンチャーを立ち上げる起業家個人か3人までのチームが対象
② 1人なら最大手取り年間500万円の人件費を、チームなら最大1,500万円の年間活動費を、それぞれ支給する
③ 個人の場合、事実上の所得保証に当たる(モラルハザードが起こり得るので、公的機関が支援策として所得保証に踏み込むのはまれである)
④ 今回のプロジェクトでは、こうした元勤務先との特許交渉なども全面的にバックアップする予定
(8) 起業支援の資金調達
① エンジェル税制
a. この申請書類を簡素化したのは、その1例
b. 国が認定したベンチャーファンドに企業が投資した場合、8割を損金参入できる税制優遇措置も講じた
② クラウドファンディング
a. インターネット経由で個人から小口の投資資金を募る「クラウドファンディング」の普及促進も図っている
b. 金融商品取引法を2014年5月に改正し、1年以内に企業がクラウドファンディングを使って1億円未満の資金を調達できるようにした
5. 小規模企業振興基本法の成立
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(1) 小規模企業振興基本法
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=2&H_NAME=&H_NAME_YOMI=%82%B5&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=H26HO094&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1
① 概要
a. 2014年6月20日に成立
b. 同基本法の特徴は、成長余力に乏しい「維持・充実型」の小規模事業者を取り上げたこと
c. 2040年に地方が消滅、大都市のみが存在する「極点社会」が到来するというシナリオを回避するために不可欠な法律
d. 政府は定期的に小規模企業の実態を明らかにする調査を行い、公表。毎年、振興に講じた施策を国会に報告し、講じようとする施策を国会に提出する
e. 小規模企業振興基本計画に関して、情勢の変化を勘案、施策の評価を踏まえおおむね5年ごとに変更する
② 構成…3章構成
a. 総則
b. 小規模企業振興基本計画
c. 小規模企業の振興に関する基本的施策
③ 基本的施策
a. 国内外の多様な需要に応じた商品の販売または役務の提供の促進
b. 多様な需要に応じた新たな事業展開の促進
c. 創業の促進及び事業の継承または廃止の円滑化
d. 必要な人材の育成及び確保
e. 地域経済の活性化に資する小規模企業の事業活動の推進 等
(2) 改正小規模事業者支援法
① 小規模企業振興基本法と同時に成立
② 小規模企業に対し、商工会や商工会議所が事業計画づくりなどを指導する仕組みを整える
③ 小規模事業者の課題に対し、事業者に寄り添って支援する体制や能力を備えた商工会・商工会議所が事業者と経営改善支援計画を作り、これを国が認定、公表する
④ 認定を受けたら商工会・商工会議所は市区町村や地域の金融機関などと連携し計画達成を支援する
① ここ数年政府の中小企業支援体制は少しずつ民間の会計士、税理士、中小企業診断士の活用に重きを置き始めていたが、今回は改めて商工会、商工会議所を前面に立てた(民間の会計士、税理士、中小企業診断士の活用がうまく機能しなかったためである)
(3) 小規模企業振興基本計画
① 政府は、小規模企業振興基本法に基づき、小規模企業振興基本計画を策定した
② 4つの目標
a. 需要を見据えた経営の促進
b. 新陳代謝の促進
c. 地域経済に資する事業活動の推進
d. 地域ぐるみで総力を挙げた支援体制の整備
③ 10の重点施策…小規模企業の振興に関する施策の総合的、計画的な推進を担保するため、それぞれの目標達成を目指して取り組む10の重点施策を掲げた
a. 「需要を見据えた経営の促進」に関する施策
• ビジネスプランなどに基づく経営の促進
• 需要開拓に向けた支援
• 新事業展開や高付加価値化の支援
b. 「新陳代謝の促進」に関する施策
• 起業・創業支援
• 事業承継・円滑な事業廃止
• 人材の確保・育成
c. 「地域経済に資する事業活動の推進」に関する施策
• 地域経済の波及効果のある事業の推進
• 地域のコミュニティーを支える事業の推進
d. 「地域ぐるみで総力を挙げた支援体制の整備」に関する施策
• 支援体制の整備
• 手続きの簡素化・施策情報の提供