意を決して購入したフルサイズ撮像素子を持つSONYのα7。
この商品は実におもしろいです。
従来の常識をくつがえすほどの小型ボディに巨大な撮像素子。ある種、ようやく登場した理想のカメラです。
しかし。
一つだけ大きな欠点があります。
それも、このカメラボディ自体の問題ではないだけになんとも奇妙な欠点なのですが。
それは、当のSONYから魅力的なレンズが発売されていないということです。
SONYは自社で思うようにレンズが作れない場合、盟友であるカールツァイスの力を借ります。
今回もその手法は踏襲しているのですが、どうも、
「ちょっと残念」
なレンズが多いのです。
単焦点レンズは、一言で言えば、
「暗い」
そして、ズームレンズは、
「甘い」
のです。
カメラボディは相当に素晴らしい出来なのに、見合う純正レンズがないというジレンマを抱えているのです。
これは、『ドカベン』に登場する豪速球投手土門が、自分の球を受けられる保守がいないという
「自分ではどうすることもできない欠点」
を持っていたのと同様の状態です。
というわけで、このカメラ。
必然的に、
「オールドレンズ」
を楽しむカメラにならざるを得ないわけです。
オールドレンズとは、オートフォーカス機能などがついていない今から30年以上前に活躍したレンズのことです。
サードパーティ・メーカーが製造販売している各種アダプターを使えば、大昔のレンズを格安で購入し、このカメラに装着、撮影を楽しむことが可能です。
フォーカスなどはマニュアル(手動)になりますが、絞り優先で使えますから、露出のコントロールはかなり楽です。事実上オートに近いです(絞り優先AE、シャッタースピード優先AE、どちらもオッケー)。
ニコンやキヤノンはもちろん、オリンパスやミノルタ、ペンタックス、それに、ライカやカールツァイス(カールツァイスはこの当時、ヤシカや京セラから「コンタックス」というブランドで発売されていた)のレンズも使うことができるのです。
「オールドレンズなら、これまでも、キヤノンの一眼レフなどに装着できたでしょう。アダプターを介すれば」
はい。おっしゃるとおりです。
でも、でもですよ。うまく写せなかったのですよ。
なぜなら、キヤノンなどから発売されている従来型の一眼レフデジタルカメラについているファインダーは、
「光学式ファインダー」
であり、これだと、
「ピントの山」
がわからないわけです。
特に、暗いレンズを使うと、ほんっっっとうに、どこにピントが会っているのか、判断ができません。
「うまく撮れた!」
と思って、パソコンで拡大して見てみると、
「ピンぼけ」
となっていることがほとんどだったのです。
しかし。
今流行の
「ミラーレス一眼デジカメ」
ならば、この心配はありません。
これらのカメラには、「光学式ファインダー」は原則として搭載されておらず。
「電子式ファインダー」
が付いているのです。ビデオカメラのファインダーと同じようなファインダーです。
昔からのカメラファンの中には、
「電子ファインダーでは正確な色がわからない」
「電子ファインダーはタイムラグがあり、シャッターチャンスを取り逃してしまう」
等々、不満をいう方が多い。
ところが、私にとっては、これらはどうでもいいことなんです。
まず、色は後からでも確認できますし、補正もできるわけです。でも、ピントは後から補正できません。優先順位は
「ピントが一番、色合い二番」
なんですよ。
タイムラグがあるなら、予め少し前から連射ボタン押せば済む話です。それくらいの予測はできますからね。
それでもダメなら、反対の目を明けておけばいいわけです。
それよりも、
「電子ファインダーはピントの山がつかみやすい」
という点において、光学式ファインダーをはるかに凌駕する実力を持っています。
ピントを合わせたい部分を5〜15倍くらい(機種による。α7は10倍だったかな)に拡大できる、ピントがあっている箇所が色が変わる(ピーキング機能といいます。SONYのピーキング機能は「神」です)、そして、何より、暗いレンズを使ったり、絞ったりしても、ファインダーの明るさが変わらない!!
ああ、これも、従来型一眼レフカメラのファインダーを覗いたことのない方にはわかりにくいと思うのですが、レンズの口径を絞っていくと、カメラに入ってくる光の量が減って、ファインダーがどんどん暗くなってしまうのです。こうなると、ピントなんで全然わかりません。
星の写真を撮る時。
キヤノンの一眼レフの光学式ファインダーでピントを合わせるのは、至難の業だったわけです。
どんなに写りの良いカメラでも(現に、キヤノンの5Dシリーズは空前の超高画質カメラでした)、私が用いる特殊な環境では、その能力をなかなか発揮できなかったのです。
皆既日食の時には役に立ちました。日食中とはいえ、太陽は明るいですから、ピントはかなり楽に合わせることができました。が、これは例外中の例外ですよね。
数年前にSONYのNEX7が出てきた時に、あまりにもピントが合わせやすいのに感動して、購入。
オールドレンズをつけて、以来、数カ月前まで愛用してきました。
「酩酊中でもオリオン座、ジャスピンで撮れる」
すごいカメラでした。
ただ、このNEX7は、残念ながら、撮像素子がAPS-Cという規格で、ちょっと小さい。
焦点距離は自動的に1.5倍になってしまうし(望遠撮るときには有利なんですが、広角が出しにくい)、ボケの量も、フルサイズの撮像素子を持ったカメラに比べると、ちょっと少なかったのですよね。
あ、ここでいうボケというのは写真の主題以外のモノ(背景)をかっこよくぼかすという演出手法のことです。ですから、主題にはピントはちゃんと合っていなければなりません。
女性のポートレートを撮るのに、彼女だけにピントを合わせ、背景をぼかすと、立体的になりますし、主題である女性が引き立つわけです。
まあ、観光地などで、建物をバックに撮るときは、ぼかしてはいけませんが笑(どこに旅行に行ったのかわからなくなりますからね)
ボケの量が多いほど、主題を引き立たせるような、変わった演出ができるわけです。
ボケの量は、撮像素子の大きさと関係していて、大きな素子(例:フルサイズ)であれば、大きなボケが期待できるのです。
「NEX7と同じしくみのカメラで、フルサイズの撮像素子を持ったカメラが登場しないかなあ」
と待ち望んでいたファンは私だけではなかったはず。
それが、昨年秋。
ようやく発売されたわけです。
デザインがワタシ好みでなかったこと、シャッター音が大きかったこと、シャッターによるショックが大きかったこと…等、
決して完璧なカメラではないのですが、それでも、
「オールドレンズが自由に装着でき、マニュアルフォーカスであってもピントが合わせやすく、しかも、フルサイズ特有の広角やボケ味を楽しめるカメラ」
がやっと登場したという嬉しさは格別でした。
年明け早々に購入!
まだまだ、テスト運転中ですが、現在、
① CONTAX Carl Zeiss Planar 50㎜ F1.4
② CONTAX Carl Zeiss Planar 85㎜ F1.4
③ CONTAX Carl Zeiss Sonnar 180㎜ F2.8
④ CONTAX Carl Zeiss TeleTessar 300㎜ F4.0
⑤ CONTAX Carl Zeiss Mutter 2倍 (テレコンバーターです。③④についけると、各々焦点距離が2倍になります)
の5本のレンズを装着して、楽しんでいます。
もうちょっと広角を買えよ! と言われそうですが、それは今後の課題笑
まあ、SONYのRX1という、同じくフルサイズの撮像素子を持つ35㎜の固定焦点レンズ付きカメラを持っていますので、35㎜は後回しでもいいかと。
28㎜や25㎜、21㎜あたりを狙いたいところです。
若松町にある
「極楽堂」
というCONTAXファンのためのお店に行けば、このへんはいくらでも入手可能なのです。無論、元手は入りますがね_| ̄|○
写真はオートフォーカスというのが当たり前の時代ですが、私のように天体望遠鏡にカメラをくっつけて月や星、カワセミの写真を撮る人間にとって、
「ピントは自分で合わせるもの(マニュアルフォーカスはデフォルトじゃい!)」
なのですよ。
そうなると、レンズごとにオートフォーカスのためのモーターを搭載し、その結果、重くて、煩くて、高価になってしまう
「オートフォーカスレンズ」
はどうしても納得の行かない製品なんですよ。
あ、しかも、最近は、手ぶれ補正のジャイロ(本当にジャイロかどうかは置いておいて、手ぶれ補正のシステムという意味で比喩的にジャイロと表現します)まで入っていますから、さらに、重くて、高価になってしまうわけです。
たとえば、レンズを1本買うと、
「レンズ代 価格 50,000円 重量 500g」
で済むはずのところ、
「レンズ代 価格 50,000円 重量 500g
オートフォーカスのモーター 価格 10,000円 重量 100g
手ぶれ補正のジャイロ 価格 20,000円 重量 200g
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
合計 価格 80,000円 重量 800g」
となっちゃうわけですよ(数字はイメージ)。
1本だけなら、
「価格差30,000円、重量300g」
の差なんですが、これが、レンズを5本購入することになると、
「価格差150,000円 重量1,500g」
になりますからね。
「財布は軽くなるが、バッグの中身は重くなる。心臓に悪いし、腰にも悪い」
ということになっちゃうわけです。
まあ、こういう方のカメラバッグの中は、言い方を変えれば、
「モーターとジャイロを何台も持ち歩いている」
ことになるわけです。
今回の主題からはちょっと外れますが、私は、手ぶれ補正のためのジャイロは、カメラボディ側に入っているべきだと思います。
そうすれば、レンズは何本購入しても、
「ジャイロは1個」
で済みますからね。
さらに、オートフォーカスのためのモーターと手ぶれ補正のためのジャイロが入っているレンズには、もう一つ巨大な欠点があります。
それは、
「製品としての寿命が短い」
ということです。
モーターであれ、ジャイロであれ、駆動部分があるということは、それだけで壊れやすくなります。
壊れれば修理代がかかりますし、廃品になって数年し、補修用部品がなくなれば、修理が不可能になります。
「高くて、重くて、短命で」
では、やはり、購入は躊躇してしまいます。
一方、オールドレンズ、そのほとんどは、モーターもジャイロも入っていない
「安くて、軽くて、長命な」
レンズなのですが、単に安いだけではなくて、中古しかないので、
「さらに安い」
のです。
発売当時200,000円くらいしたレンズが30,000円以下で手に入れることができるわけです。
とてつもない安さです。
それでも、駆動系部品(モーターやジャイロ)が入っていないから、壊れにくく、うまく使えば一生モンです。
中古ですが、ちゃんとした専門店で買えば、安心して、長く使えるわけですよ(オークションはおすすめしません。怖い)。
古いレンズゆえ、いろいろな収差があったりするわけですが、そのへんはパソコンのアプリでいくらでも補正できます。
最善の選択ではないようですが、MacのApertureはその一例。
操作が簡単で、撮ってきた写真をさっと補正して、保存することが出来ます。
高価なアプリを使えば、もっといろいろなことができるそうですね。
実際の撮影の際には、私はとにかく、
「ピント命」
です。
構図とか気にする時間はありません。
一番ピントを合わせたい箇所を例の電子式ファインダーで強拡大して、がっつり合わせ、絞りまたはシャッタースピードだけを確認して(絞り優先AE、シャッタースピード優先AEどちらもオッケー)、パシャ!
「構図はどうするの?」
とか、言われそうですが、
「トリミングしちゃいましょう」
で、行くしかありません笑
「構図バッチリ、ピントボケボケ」
ではどうしようもありませんので。
というわけで、一部のマニアを除き、多くの方が敬遠される
「フルサイズミラーレス一眼デジカメ + (アダプター) + マニュアルフォーカスのオールドレンズ」
という
「ゲテモノ」
な組み合わせは、けっこう趣味としてはおもしろいのですよ。
オートマチックの運転に飽きた方が、古いマニュアルフォーカスのオープンカーで峠を攻めるようなものですな。