現在再読している『学習する組織』(ピーター・センゲ著)の中で、

「退場コスト」

の問題が触れられています。

インターネット上でのコミュニケーションは、どんなに活発になっても、気に入らなければすぐに

「退場」

することができてしまうので、これは古典的なコミュニケーションとは異なる概念だというようなことが述べられています。
古典的なコミュニケーションは、簡単には退場できないことを前提にいろいろな工夫をしていく概念であり、別物だというのです。

これって、私にとって、はっとする内容でした。

弊社はよくコンソーシアムによる仕事(プロジェクト)のお誘いを受けることがあるのですが、その場合、原則としては、

① 参加企業が3社以内に抑える
② 自社が主幹企業になるか、そうでなければ、信頼できる主幹企業が存在するか
③ できるだけ大手法人企業と組む

という3つの原則を遵守するようにしています。

① 参加企業が多すぎると好き勝手いう企業が必ず出てくる。少ないほどその発生確率は小さい。
② 主幹企業が存在すれば、①の問題をうまくさばいてくれるが、それができないと調整コストはさらに大きくなる
③ 大手法人は感情で仕事をすることをしない。組織全体が1つの人格を持っている。

今までちゃんと分析したわけではなかったのですが、これらの理由は、まさに、

「退場コスト」

のリスクを小さくしたいという理由にまとめることができるのですよね。

プロジェクトが始まったときは、

「皆頑張りましょうね」

でいい感じだったコンソーシアムが、わずかな状況の変化で、突然、

「すみません。弊社は抜けさせていただきます」

と言われ、背筋が凍りそうになったことが何度もあります。

抜けるのは自由でいいですが、残る方はその後始末にとてつもない手間とコストが発生するのです。

せめて、

「弊社は今回事情で途中リタイヤさせていただきますが、弊社の信頼する同業の●●社をご紹介させていただきます」

くらいの配慮はほしいと思います。
私だって止むに止まれぬ事情で抜ける場合は出てくるかもしれませんが、その場合、上記のような対応をとるのが常識だと思います。

もうだいぶん前になりますが、社外のコンサルタントおよそ100人で行うプロジェクトを統括したことがありましたが、

「人生いろいろ、コンサルいろいろ」

でした。正直、

「幼稚園か、ここは?」

という些細な理由や、感情的な理由から、

「途中で抜けさせていただきます」

が次から次への出てきて、閉口したことがあります。

長期に渡るプロジェクトにおいて、状況の変化や条件の変化があるのは当たり前であり、交渉したり、議論したりを希望してくれるならよいのですが、突然の最後通告。

「私、抜けさせていただきます」

大手法人さんがさすがだなと思うのは、そういうことが一切ないことです。
会社組織のいいところはそういう無責任を許さない「保証」がありますよね。

うちも中小企業ですが、プロジェクトを途中で投げ出すようなことは厳に慎みたいと思います。
本当のプロだったら、
どんなにしんどくなっても、歯を食いしばって乗り切りますよね。
何か方法はないか、考えますよね。
投げ出したりしたら、会社の信用に傷がつきますよね。
そんなの当たり前じゃあないですか… と思うのですが、世の中

「お子ちゃま」

がけっこう多いのです。

「いつまでもあると思うなコンソーシアム」

ビジネスをする上で、見えないコスト、読めないコストというのは、たくさんありますが、その1つが

「退場コスト」

なのです。
これから、いろいろな会社と組んでビジネスを広げていきたい、社外のいろいろな方といっしょに仕事をしてきたいとお考えの方は、常にそのことを考えながら、パートナー選びをしてみてはいかがでしょうか。