ビジネスにおいてはスピードが重視される。

たとえば、自社製品の紹介活動を担当している時、無限に時間があれば、延々とその製品について研究し、最高の営業トークを開発することができるだろう。

しかし、現実には、必ず時間的な制約(準備時間の制約、説明時間の制約等)を受ける。

限られた時間で、自社製品の紹介をするにはどうしたら、いいだろうか。
今日は、「不敗のエレベーター・トーク(営業編)」ということで、考えてみよう。

僅かな時間であっても、次のようなプロセスを意識していただきたい。

1.ターゲットの仮説を立てる

商品紹介をする以上相手がいる。
おひとりの場合にはその方について、複数の場合には一番キーとなる人物やより多くの方が持っているであろう関心を仮定する。
「価格」に関心があるのであれば、価格を、「デザイン」に関心があるのであればデザインを、「機能」を重視されているのであれば、機能を中心に、話の組立を考えなければならないからである。
顧客の関心とは、言い換えれば、ニーズであり、解決してほしい問題である。

したがって、通り一遍等にカタログの1ページ目から商品説明すれば常にOKだ!とはいかないのが、営業の世界である。

2.説明する商品、説明する事項を絞り込む

これはケースによって異なるが、いずれにしても、全部の商品をまんべんなく説明するという愚を犯してはならない。
注目してほしい製品、目玉となる機能を中心に説明すべき内容を精査する必要がある。

① 製品の絞り込み

どの製品をおすすめするのかという絞り込みである。

② 事項の絞り込み

「1」に基づいて絞り込む。
たとえば、「機能」の場合であれば、さらにどの機能を中心に話すのか、言い換えれば、どの機能は話すのをやめてしまうのかを、思い切って意思決定する。相手の関心が薄いと仮定される項目はざっくりとそぎ落としてしまおう。

3.「コトの提供」について考えてみる

時間が許す限り、触知可能な製品やメイン・サービス(いわゆる「モノの提供」)だけではなく、他に提供できる「コト」がないか(「コトの提供」)に頭を巡らしてみよう。

合言葉は、

「サア夢経験、時空でライフ!」

である。

以下は単純だが、ちょっとした「コトの提供」の一例である。

① サ…サービスの提供
【例】今日会場にお越しいただいた方にだけなのですが、再来週のユーザー感謝デーにご招待させていただいているんです。よかったら、お越しくださいね。

② ア…アイディアの提供
【例】今日会場にお越しいただいた方にだけなのですが、私が作成した当該製品の裏ワザ・レジュメをお渡ししているんです。よかったら、お使いくださいね。

③ 夢…夢の提供
【例】これだけ高級感のあるテーブルがキャンプ・サイトにあったら、さぞ華やぎますよね。まるで、高級リビングみたいでしょう? 他のキャンパーの方々の注目の的になりますよ。

④ 経験…経験の提供
【例】ちょっとおかけになってみてください。はい。ハンドルも握っていただいて構いません。あ、キーがありますから、エンジンかけてみましょうか。いかがです? 静かですよね。まるで、ハイブリッド車みたいでしょう。では、このまま、ちょっとだけアクセルを踏んでみましょうか。あ、私、助手席に乗らせて頂きますね。

⑤ 時…時間の提供
【例】このショールーム自体がまるでミュージアムみたいになっています。とりあえず、「順路」という矢印に沿ってご覧になってみて下さい。なにかご質問があれば、腕章つけているスタッフにお気軽に声をおかけください。

⑥ 空…空間の提供
【例】お買い上げ頂いた商品ですが、あちらでそのまま召し上がって頂けるスペースをご用意しています。はい、靴を履いたままお進みいただいて結構ですので、そのままお進みください。左側のドリンクコーナーでお好きな飲み物をお取りいただいて構いまえん。どうか、おくつろぎください。

⑦ ライフ…ライフ・スタイルの提供
こちらの「水滴がつかない傘」は、できることなら、まずは、クルマの後部座席専用でおお使いいただきたいのです。オーナー様ではなく、ゲストの方専用の傘としてお使いいただきたいのです。雨の日、クルマに乗る瞬間に傘から落ちる雨水で、大切なゲストの方に、ご不快な思いをしていただきたくないじゃないですか。そうすることで、オーナー様の株も上がる…そんな傘なんです。あ、もし、オーナー様が普段お使いいただくのならば、是非、もう一本お買い上げくださいね笑

4.演出の方法を考えてみる

ここまで来れば、あとは楽なものである。
会場で使えるすべてのグッズを書き出し、

「使えるものは全部使う」

が基本である。

時計、紙、ペン、鉛筆、飲み物、ホワイトボード、マイク、プロジェクター、椅子、机、窓、空気・風、窓の外の風景、スタッフ、関係者、顧客同士、壁、電球、床、柱…

これらがすべて、皆さんの「武器」になる可能性があるのだ。

例えるなら、救命救急の医師である。

彼らは、要救護者の頭蓋骨に穴を明けなければならない場合、ドリルと使うこともある。気管に穴を空けなければならない場合、ボールペンを使うこともある(テレビの世界だけかもしれないが笑)

要は、そういった感覚が必要だ…という話である。

5.話の組立を考える

ここについては「不敗のエレベーター・トーク」を参考にしていただきたい。

http://eiseikanri.biz/wp/takenaga/不敗のエレベーター・トーク/

キーワードをサッと書き出し、頭のなかでストーリーを組み立てる…慣れないとしんどい作業だから、毎回、顧客の前で話す際に、組立のシミュレーションを行なってほしい。
1年もすれば、楽に組み立てられるようになる。