朝起きる。
骨伝導マイクのついたスピーカーを耳に装着する。
そのまま一日を過ごす。

仕事を終えて、自宅に戻ったら、今日自分がしゃべった内容が全て文字化されたデータをクラウド上でざっと眺める。

「昔は文字を書いていた時代があったらしいよ」

そんな話を息子にしながら、骨伝導マイクをはずす。

「おやすみ、パパ」
「おやすみ」

今日クラウドに保存されなかった音声データは親子で交わしたこの最後の挨拶だけだ。

人間が一生の間にしゃべる内容は全て文字化される時代なのだ。