紙の書類、伝票、取説、書籍、雑誌、名刺、手紙・はがき、紙の写真…。
概ね、ビジネス・パーソンが整理する際に、頭を悩ます紙の情報の代表例をあげれば、こんなところでしょうか。
MicrosoftOfficeの文書やデジタルカメラで撮影した写真データと違い、検索しにくく、扱いにくい情報ばかりです。
紙資料は自炊し、PDF化し、OCRをかけ、いつでも検索できる状態にして、電子データとして保存するのが一番です。
前述した情報のほとんどは、今や、自炊によるPDF化でほぼ統一することができるようになりました。
現在、名刺、手紙・はがきについてはほぼすべてPDF化して保存が習慣化、過去のものもとり込み完了。
雑誌は電子書籍としての購入に移行中。紙で買った場合には捨てています。
書籍は御存知の通り、現在、PDF化途上にあります。
とはいえ、竹永家から、すべての紙データがなくなったのか…
いやいや、そうはいきません。
書籍も書類も、諸処の事情でPDF化できないものはありますし、学生時代の膨大な写真…スキャンしてみたのですが、紙の写真のほうがどうしても映りがきれい(原本ですしね)…というわけで、なかなか捨てられません。
学生時代のノートや受験勉強時代に作成したツールも「物理的にとっておきたい」ものもあり、そう簡単には捨てられません。
こうした紙情報をどのように統一的に管理していくか。自炊によるPDFでは解決できない部分について、考えてみましょう。
ご紹介する方法は、ご存知「押し出しファイリング法」。
私のオリジナルではなく、野口悠紀雄教授の『「超」整理法』で紹介されているたいへん有名な方法です。
私は、15年以上前に、野口悠紀雄教授の『「超」整理法』に感銘を受け、書類・写真・伝票については、一切の分類をしないで、「押し出しファイリング法」を用いて、保管を開始しました。
世界中でも最も安価なファイル=オフィスにあるA4判のビジネス封筒を活用し、中に書類を入れるたびに、タイトルと日付だけを記録。
後は、書棚の一番右に入れるだけ。
書類を使った場合も、使い終わった後は、元の場所に戻さずに、一番右に戻す。
ほしい書類を探すときには、「最近使った書類」から順に、つまり、「右から順に 」探す。
「新たに作ったファイル、最近使ったファイルほど、また、使う可能性が高い」
「故に、常に、右から順に検索していけば、平均的な検索時間は最短になる」
という考え方に立脚しています。
これを繰り返していくと、あまり使わないファイルほど、左に移動し、時間が経過すれば、自然とファイルに優先順位がついていく(左:非重要、右:重要)。
したがって、書類を捨てる際には、左から順に
「廃棄候補」
とすることができる…という理論です。
いわゆる、
「断舎離」
の原点なわけです。
「無駄な書類は捨てましょう」
という本はたくさんありますが、
① その選別方法や基準について書かれている本は少ない
② たとえ書かれてあってもその選別方法や基準は汎用性に乏しい場合が多い
③ たとえ汎用性があってもまとまった時間を確保しないとその選別ができない
のです。
野口教授の「押し出しファイリング法」は、
① 選別方法や基準が 具体的に示されている
② 選別方法や基準の汎用性が高い
③ 選別にまとまった時間が必要ない
という3点で実に優れています。
もっとも、封筒を使った書類の整理法は、野口教授よりも早く、山根一眞氏も提唱しています。
ただし、山根さんのほうは、ファイル(封筒ですが)のタイトルにさらに、頭文字ひらがな3字をつけて見やすくし、五十音順での管理を提唱されています。
「 山根式袋ファイルシステム」と呼ばれている方法です。
たとえば、「マーケティングに関する文献一覧」というタイトルのファイルの場合、「まけて」、「中小企業診断士の受験方法」というタイトルのファイルの場合、「ちゆう」といった3文字の見出しも併記して(検索しやすくして)、保存するという方法です。
この両者。
よく比較されます。
山根さんご自身は、相当に野口教授に腹を立てていらっしゃるようで(「アイディアの盗用だ!」というわけです)、「換骨奪胎」と批判しています。
時系列(野口教授の「押し出しファイリング法」)か、五十音順(「山根式ファイリングシステム)か…
あ、この時点で、いわゆる「分類」という方法の選択肢は、そもそもお二人にはありません!!
紙資料の分類には限界があります。紙資料を分類する上での主要な問題点は以下の2点です。
① 分類項目そのものが不変ではないという問題が生じる。
たとえば、「SNS」という分類項目をつくっても、しばらくすると、「Twitter」と「Facebook」に分化するでしょうし、「Google+」「LinkedIn」という項目もこれからは必要になります。このように、紙資料を分類しようとすると、分類のために忙殺される…という問題に悩まされます。ちなみに、竹永家は、書籍においても分類を諦め(図書館のようにはいかなかった笑)、サイズ別に書棚に雑然と並べてあります(まだ、PDF化されていないものです)。
② こうもり問題が発生する
「SNS」という項目を作る前に、すでに、「Google」という棚があった場合、「Google+」に関する紙資料はいったいどこに保管すればよいでしょうか。野口教授は、これを、イソップ寓話に登場するこうもりになぞらえ(動物か鳥かわからない)、「こうもり問題」と読んでいます。写真の場合も同様です。「山岳」「高校時代」というアルバムがあった場合、「高校時代に友人富山に登った時の写真」はどこに保存すれば良いのか、「山岳」「天文」というアルバムがあった場合、「星空をバックに撮った富士山の写真」はどこに保存すれば良いのか…となりますよね。
したがって、紙資料を内容的に分類するのは、あきらめたほうがよいのです。
「押し出しファイリング方式」か「山根式ファイルシステム」。
両方やってみての、私の結論。
「押し出しファイリング方式」の勝ち。…でした。私の場合…ですよ、あくまでも、n=1。
理由は簡単。
山根式の場合、見出しの上には見出しの読みをカタカナ3文字で書き込んで、袋を50音順に並べます。
私の場合、中小企業診断士関連のファイルが増えていくので、「ちゆう」の項目ばかりが増えて行ってしまうのです。
また、使うときはよいのでしょうが、捨てる時に困ります。どの書類があまり使用頻度が低いのか、このシステムは何も示してはくれません。
紙資料の整理法を評価する場合、私たちは、
「いかに使いやすいか」
に目を向けがちですが、もっと重要なのは、
「いかに捨てやすいか」
という点なのです。
野口教授の「押し出しファイリング方式」はこの点がきわめて明確です。
「左にあるファイルほど、捨てても良い可能性が高い」
わけです。自動的に捨てられるわけではありませんが、大いに目安になりますよね。
もっとも、野口教授自身が指摘していますが、複数の人間でファイルを管理する場合には、なかなか「押し出しファイリング方式」とするわけにはいきません。
この方式は、「いつ頃使ったか」ということに対する「個人の記憶」を利用しているため、組織ではその記憶を共有化できないのです。
たとえば、「確か2週間前に使ったばかりだから、右から20センチくらいのところかな」という記憶を組織で共有することはできません。
組織での書類管理は、五十音順の山根式か、分類方式を採用したほうがよいかもしれません。
組織の人数が増えれば増えるほど、そうなります。
図書館が、分類方式を利用しているのは、そのためです。
というわけで、私は、この野口教授のもう15年以上続けています。
会社の書類、家電製品等の取説、プライベートな書類、伝票の類、雑誌の切り抜き、新聞の切り抜き…。
すべて、会社等で廃棄を待っているA4判封筒の頭部分をハサミでカットし、これをフォルダとし、あらゆる書類に、作成年月日とタイトルをつけ、本棚に時系列順に並べて保管してきました。
初期の頃は
「取説は別にしておこう」
などと考えていたのですが、これは失敗。
取説をどこにしまったか、しばらくすると忘れてしまうからです。
何も考えずに、
「右から順に並べていく」
「使ったら一番右に戻す」
を徹底したほうが、うまくいきます(後日、検索しやすいです)。
この手の整理法のルールは簡単なほうがいいのです。
我が家には、1間=180センチ の本棚が3つ、半間=90センチの 本棚が2つあります。
最盛期には、フォルダ(封筒)だけで、2間丸々使うはめになりました。
ずっと、「左」「右」といって参りましたが、これは概念であり、イメージです。
物理的には、無限に横長の書棚は無いので、何段にも分けて書類を保存します。
なかなか捨てられない書類が多いため、
「紙資料がこのまま増え続けるのか」
と思ったこともあったのですが、
① 年末の大掃除の際に、いらないファイルはないか、「左から順に」チェックをすると、概ね半分くらいは捨てられる
② スキャナーをつかった紙資料の自炊が一般化した
③ 社内で紙資料を渡されることがなくなった
という3つの理由から、「押し出しファイリング方式」の対象となる紙資料が、ある一時期を境に、今度は逆に減り始めました。
③について補足すると、弊社は何年も前から、個人の机というものはなく、キャビネが1つ与えられるだけです。
社内では、紙の資料を配るということはまずほとんどありませんので、やりとりがあるのは、お客様から頂いた紙資料と請求書や経費精算の伝票くらいでしょうか…
同僚や上司・部下から紙の資料をもらうというケースはグッと減りました(ほとんどありません)。
講義の手元資料が最後まで紙として残っていますが、最近はこれも、iPadで代用してしまっているので、限りなく紙は少ないのです。
以前に、カバンの中に、一片の紙も入っていないことがあって、取引先でメモが出来ず困った… と書いたことがありますが、嘘ではありません。
さてさて。
話を戻します。
我が家の自宅の話。
減り続けた「超・整理法」の押し出しファイリング方式によるファイル(封筒ですが)の数。
現在は、幅45センチほどの本棚の2段に収まっています。数年前に比べると十分の一以下になりました。
当然ながら、元々あった紙資料は廃棄されたから、PDF化されたかのいずれかです。
一時期、書類に押され気味だった本棚には、書籍がずらり。
勢力を復活させています。
しかし、これらの書籍とて、現在は「自炊(書籍のPDF化)」のターゲットであり、私の使用・参照頻度が高く、優先順位の高い書籍から
「断頭台(注:書籍の裁断機のことです)」
にご案内されるわけです(笑)から、本棚はさらにスカスカになってくるはずです。
理論的には、我が家の本棚はすべて不要となるはずなのですが、実際には本棚がなくなることはありません。
それは次のような理由によるものです。
現在の我が家の本棚は、
「パレートの原則」
によって、
「あまり、使用・参照しない書籍」
がずらりと書棚に残っている状態です。
「何も考えずにどんどんスキャンすればいいじゃないか」
とおっしゃる方もいらっしゃるでしょうが、使わない本をわざわざ時間と労力をかけてスキャンすることくらい無駄なことはありません。
自炊はすべての本をスキャンするのが目的ではなく、使用頻度の高い本だけをスキャンすればよいのです。
ですから、書棚が全部なくなるということはありえないのです。
もっとも、まったく読まない本をずっと持っているコストというのもありますから、数年たっても読まない本は、売るか、捨てるかしたほうがいいでしょうね。
あらゆる紙資料の中で、最後に残るのが、紙の写真でしょうか。
富士通のスキャナーScanSnapS1500の最高画質でスキャンしても、画質的には、まだ、ちょっと満足がいきません。
最後まで「自炊」できずに残るのは、紙の写真データでしょうね。
人生最後の課題になりそうです笑
<今日のまとめ>
1.紙資料は自炊し、PDF化し、OCRをかけ、いつでも検索できる状態にして、電子データとして保存するのが一番である。
2.しかし、例外的に自炊することが適さない紙資料も多い
3. その場合には、野口教授の提唱する「押し出しファイリング法」を併用すればよい
4.年末の大掃除の際に、「左側にある紙資料」から見ていけば、「廃棄の判断」はかなり楽になる
5.参照しない書籍は無理に自炊化せず、書棚に置いておく(または廃棄する)