ホワイトボード。
昔からビジネスの現場にある、何の変哲もないツールです。

しかし、今や、イノベーションが起ころうとしています。
どこからか? 我が国のビジネスの現場からです。
発起人は多部田憲彦氏。あの、図解改善士の多部田さんです。

商談の際、おもむろにバッグの中から、A4判くらいのホワイトボードを取り出し、マーカーでいろいろ図解して、表現する…

コクヨさんの会議室で、多部田さんとはじめてお会いしたこの時の印象は、

「新鮮ではあるが、なんとまあ、アナログだなあ… (^_^;)」

しかし、モノの数分で、その印象はふっとんでしまいます(詳細は、多部田さんのセミナーに出て実感してください)。

「アナログだが、最先端だ。MacBookを使っている私のほうがよっぽど、遅れている (@_@;)」

次から次への思いつくことと、「1分以内」に図解化し、自らの言葉の補助輪にする…という使い方。

「この人は、『空中言語固定装置』をお持ちなんだな」

目からウロコでした。

PowerPointにWord、ExcelにPDFファイル。
電子化が進んだ現在、これらのファイルを使ってのプレゼンは、誰でもできるようになりました。
一日に何百枚ものPowerPointを作成、使用することもできます。

「人は1日に何枚のPowerPointスライドを作成することができるか?」

こんな耐久レースを自らに課したことがあります(結果は609枚。今のところの私の限界)。

でも、PowerPointで作った資料やプレゼンというのは、恐ろしく、記憶に残りにくいのですよね。インパクトに欠ける…

私の動画配信頁「日本一短い経営学」の実績を申し上げれば、

PowerPointで講義した時⇒低視聴率
ホワイトボードで講義した時⇒高視聴率

は、疑いありません。
可能な限り、PowerPointは避けたいと思います。
理由は簡単。

「目立たない」
「興味がわかなない」
「わざわざ見ない」

の3拍子なのですよね(「友達」からよく言われます。「PowerPointじゃつまんないよ。ホワイトボードで続けなよ」

TBC受験研究会では、私は「ホワイトボード」を駆使して講義を行います。
とてつもない量の板書をすることもよくあります(後で、「カメラで取ってくださいね」というパターンです)。
しかし、ある時、

「毎回、カメラで取っていただくのも合理的じゃないから、レジュメにして配布しようかな」

と、PowerPointに打ち出して、教材として配ったことがあります。
板書はゼロ。必要なことは全部、紙にして配ったのです。
すると、アンケートの評価は

下がりました

「板書がなかった」
「もっと板書してほしい」
「熱意が感じられない」

(^_^;) 丁寧にPowerPoint化し、紙で配布した資料よりも、直接私が額に汗しながらホワイトボードに描いた情報のほうが愛されているわけです。
内容は同じなのに、伝え方でこんなにも反応が違うものか…と。苦笑したことがあります。
もっとも、私もプロの講師。アンケートを見るまでもなく、教室のテンションが低いことはすでにわかっていたのですが…

確かに、PowerPointのほうが、電子データですから、記録には残るし、合理的です

ところが、世の中、やはり、合理的なデジタルデータだけが

「勝ち組」

になるとは限らないわけです。
おもしろいものですね。

もちろん、私もPowerPointはよく使用しますし、否定しようというわけではありません。
PowerPointの苦手な分野をホワイトボードで

「補完」

できたらいいなあ… というのが、私の意見です。

例えば。
先日も描いた「即時性」
私自身、講義をしながら、どんどんPowerPointを作成していくタイプなので(珍しいと言われますが、私の場合、1日PowerPointで講義をすると、平均して30枚くらいの新しいPowerPointを講義中に作成します。話しながら、作っていってしまうのです)。

それでも、イメージ図を「即時に」描くのであれば、ホワイトボードのほうが速いです。
たとえば、

「日本地図一枚」

描くのでも、PowerPointでは数分掛かります(インターネットに行って地図を見つけて、それをコピーして、貼り付ける…等々)。
でも、ホワイトボードへのフリーハンドなら、1分以内に日本地図は描けてしまいます。

あとは、相田みつをさんじゃあありませんが、肉筆独特の印象の強さ。
これも、ゴシック体中心の「見慣れた」活字にはないインパクトがあります。

しかし。
それでも、ホワイトボードが会議室鎮座しているだけでは、依然として、それほどの戦略性があるとも思えません

ここは、発想の転換が必要です。
多部田さんのビジネス・スタイルはその発想の転換を果たされた点で実にすばらしいです。

「コペルニクス的転回」

というやつです。

大げさに言えば。
長い間、人類は、ホワイトボードには「足がない」「足はいらない」と思っていのです。
ここでいう「足」とは、ホワイトボードについている物理的な「脚部」のことではありません。
移動する手段という意味です。
数十キロの重量があり、メートル単位の幅のボードが、事務所や会議室から動くことはできない…という意味です。
一方、所有者である私たち人間(ビジネス・パーソン)も、ホワイトボードを持ちだそうとはしませんでした。

しかし、商談、講義、プレゼン、カウンセリング…いろいろな場で、情報発信者が自らの考えをホワイトボード化して話せば、聞き手、すなわち、情報受信者にとっては、大助かりです。

不動が当たり前だったホワイトボードに「足」をつけること…これがイノベーションのキーです。

「足」とは、正しくは「携帯性」「携帯機能」のことです。これを付加せよ…ということです。
ホワイトボードには、物理的な意味での足(脚部)ではなく、抽象的な意味での「足」(携帯性・携帯機能)が必要なのです。

1979年にSONYWalkmanを世に出すまでは、音楽は家の中で聴くものでした。だれも、「録音」ができない機器(Walkmanのコンセプトは再生専用)を、社会が欲しがるなど考えてもいませんでした。
しかし、実際は、大方の方の予想とは大きく違いました。
あっという間に、新しい文化は全世界に普及。
巨大なオーディオ機器(いゆわるステレオ)で自宅でレコードを聴く文化と、音楽を外に持ち出し、Walkmanで聴く文化は、根本的に別物となりました。
後のiPodの大成功も、その礎は、Walkmanにあることは間違いありません。

「私は市場を追随しない。私は市場を創造する」

は、SONYの盛田会長のお言葉。

まったくもって同感です。
今こそ、ビジネスの世界に、携帯型ホワイトボードによる「革命」を起こしてもよいのではないでしょうか。

携帯型ホワイトボードを普及させるためには、次の4つの条件が必要です。

① すぐれた機能・品質を低価格で市場に送り込む製品開発力・製造力
② 製品の使用法・活用法を考える想像力
③ 製品の使用法・活用法を普及する伝達力
④ 製品の使用法・活用法を経験し、継続的に意見交換できる

①はコクヨ様のようなメーカーの存在。絶対的前提条件です。
②〜④は、メーカーの存在だけでは実現が難しいです。
実際に使用する消費者の声が不可欠になります。

野口悠紀雄教授発案の「超・整理手帳」の場合、①〜④の条件がすべて揃ったのが、ヒットの原因です。

① キングジムが開発・製造を担当した
② 天下の野口教授の頭脳からアイディアがあふれでてきた
③ 書籍「超・整理法」は最初から新書で発売され、低価格だったため、ビジネスマンの間でベストセラーとなった
④ 野口先生のHPに、使用者たちが自由に情報をやりとりできる掲示板が整備されていた

さて。
携帯型ホワイトボードの場合、どうでしょうか。
FacebookにTwitterのある現在。
「超・整理手帳」発売の頃とは、これまた、一味も二味も違った方法で、製品開発と普及活動を展開することが可能だと思います。

というわけで。
先日、図解改善士の多部田憲彦氏と、コクヨ株式会社でヒット商品づくりを続けていらっしゃる開発担当の曽根原士郎氏(研究員・WLP-PJリーダー)とともに、

「日本白板党」

を立ち上げました。
FacebookページのURLはこちらです。

https://www.facebook.com/Whiteboard.Party

Facebookの会員以外の方もご覧いただけます。
是非是非、いろいろな方のご意見を伺いたいと思います。
イノベーションが進めば、これに勝る喜びはありません。