先の震災からまもなく半年。
被災者の皆様には改めてお見舞い申し上げます。
3月11日。私は四日市の湯の山温泉にいました。遊んでいたわけではありません。とある企業でDREAの講演の真っ最中でした。
講演中、クラっとなったので(と、思ったので)
「すみません。目眩をしてしまいました。ちょっと休憩をとりましょう」
と錯覚したくらいです(四日市ですら「震度3」でした。船酔いのような妙な横揺れが長々と続きました)。
当然、その日の研修は途中で中止。
当日はまったく身動きがとれず、翌日になって名古屋に移動、ごった返す新幹線に飛び乗り、東京に帰ってきました。
ただし、研修は、中止とはならず、結局5月に仕切り直しとなりました。
この週末。再び、四日市でDREAの研修を担当します。
今回取り上げる企業は、「テルモ」。一橋大学が作成したケーススタディを使用し、DREAで戦略分析や戦略策定を試みます。
http://www.iir.hit-u.ac.jp/iir-w3/cgi-bin/search.cgi?&keyword=&=&mode=cs&lpage=30&sort=choshas&FF=31
『テルモ 高機能カテーテル事業の躍進』
1990年代後半以降、テルモの成長を牽引したのが、心臓疾患などの診断や治療に用いられる血管用高機能カテーテル関連の事業であり、同社の売上の20%近くを占めている。1985年に後発メーカーとして高機能カテーテルに参入したテルモは、画期的なガイドワイヤーを中心にして、飛躍的な成長を遂げていく。国内では最大手の総合医療機器メーカーであり、ガイドワイヤーやイントロデューサーでは世界シェア「トップの」テルモではあるが、先端の治療領域では米国大手企業に対して売上面、技術面で後れをとっている。急速な技術進歩と競争が進む世界のカテーテル市場の動向を紹介しつつ、独自に画期的な新製品を生み出していった技術開発の経路をたどりながら、テルモのカテーテル事業の技術戦略・事業戦略の課題を考える。
テルモといえば、キリンビールやぐるなびとともに、昨年、ポーター賞を受賞した企業です。今回の研究対象はずばり、ポーター賞を受賞した「心臓血管カンパニー カテーテルグループ」です。
ポーター賞とは、独自性がある優れた戦略を実行し、その結果として高い収益性を達成・維持している企業を表彰するために、一橋大学が設立した賞です。
競争戦略論で有名なマイケル・E・ポーター(ハーバード大学教授)の名前を冠しています。
ポーター賞は、日本企業の競争力を向上させることを目的として創設されました。日本企業は70年代と 80年代における全社的品質管理(TQC)や継続的改善(カイゼン)運動を始めとして、世界における業務の効率化競争において、長年にわたりコストと品質面における優位を享受してきました。
しかし、近年、この競争モデルには限界があることが、明らかになりつつあります。竹内・ポーターの『日本の競争戦略』がそれを物語っています。
日本企業は、品質による競争に留まるのでなく、戦略とイノベーションによる競争に移行する時期に来ています。
1951年に日本科学技術連盟(JUSE)がデミング賞を創設しました。これにより、日本企業は、ローコスト・オペレーションによる品質競争に突入します。
しかし、竹内・ポーターはこれを「戦略」とは呼んでいません。
デミング賞が日本で品質に対する全国的な運動を始めたように、今や、他社との圧倒的な価値を想像することを意味する、真の意味での「戦略」に焦点をあてた賞が必要とされています。
「名著を読む会」でいつもお世話になっている千種伸彰氏(中小企業診断士、元・『ニュースジャパン』『ニュースステーション』ディレクター)は、ポーター賞の取材を担当されたことがあるそうで、実際にポーターの直筆サインもお持ちです。ご自宅にて拝見したことがあります。
今回取り上げる一橋大学のケーススタディ『テルモ 高機能カテーテル事業の躍進』はたいへんよい素材です。
これ1つで、SWOT、VRIO、5Forces、競争地位別戦略、戦略の源泉、ドメイン、価値連鎖、成長ベクトルを全部学ぶことができます。DREAに持って来いの教材です。
レジュメもようやく完成し、あとは、研修を待つのみ。
ドラッカー頭からポーター頭へ。マネジメントから戦略へ。
今日一日で気持ちを切り替えました。
皆さんとのディスカッションが楽しみです。